550 / 812
2月13日 準備開始
しおりを挟む
午前10時。私の家のインターホンが鳴った。直前にメッセージが来ていたので、相手は確実に明である。ドアを開けて答え合わせをすると、やはり明が立っていた。外は寒いようで、ファーのついたコートを羽織り、鼻の頭を赤くしている。
「いらっしゃい。入って荷物を置いたら、材料買いに行こうか」
「お邪魔、します」
明を部屋に上げ、自宅から持ってきたという型やら何やらを置くと、すぐに家を出た。材料はまだスーパーにあるだろうか。
道中、どういうものを作りたいかなどを話しながら2人で歩く。時折明の表情が柔らかく緩むのを見て、ふと鹿宮くんのことを思い出した。きっとこの2人が"晴れ"たのなら、明はもっと愛らしい表情を見せてくれるのだろう。それが嬉しくて、ちょっとだけ悔しかった。
「お、着いた着いた。えぇと、材料は…」
「板チョコと、生クリームと、あと…」
事前に決めておいたレシピに従って、材料を集める。何だかクエストみたいで、1つ材料を見つけるごとに達成感があった。意外と前日にも残っているもので、ありがたい。材料を揃えると、後で精算するということで私が払うことにした。荷物を半々に分けて2人で持つ。同じように帰路を歩むと、あっという間にお昼になった。帰ったら材料をしまい、先にお昼ご飯を食べようと話し掛ける。明は食べ物に目がないので、一瞬瞳を輝かせて喜んだ。子供のような無邪気な煌めき。それが嬉しくて、私も笑った。
「ただいまー」
「お邪魔します」
2度目の出入り。お母さんは珍しく用事があるとのことで、留守である。だからこそ私が明を呼べたのだが、その辺をわざわざ話す必要はないだろう。冷蔵庫に買って来たばかりの材料を入れ、代わりに何を食べようかと思案する。
「あ、ご飯残ってる」
炊飯器の中には、朝ご飯の残りがそのまま置かれていた。冷蔵庫には卵とネギがある。
「炒飯でも作ろうか」
「うん」
とりあえず材料を一通り出して、キッチンに並べる。分担してベーコンやネギを刻み、それらを炒めている間に卵を溶き、ご飯を入れ、味付けをし、と工程を進めていく。炒めるのや味付けを明に任せると、流石食べることが大好きなだけあって完璧であった。この調子ならお菓子作りも上手くいきそうである。微笑んでいると、スプーンに乗せた一口分を差し出された。
「味見、して?」
「んっ…ん!おいひいっ!」
口を覆いながら、舌先に乗って来た程良い塩味の付いたご飯に喜びの声を上げる。完成したことに気付き、皿を2人分出す。盛り付けると飲み物を用意し、2人でリビングに座った。
「「いただきます」」
2人で作り、2人で食べるご飯はとても美味しかった。
「いらっしゃい。入って荷物を置いたら、材料買いに行こうか」
「お邪魔、します」
明を部屋に上げ、自宅から持ってきたという型やら何やらを置くと、すぐに家を出た。材料はまだスーパーにあるだろうか。
道中、どういうものを作りたいかなどを話しながら2人で歩く。時折明の表情が柔らかく緩むのを見て、ふと鹿宮くんのことを思い出した。きっとこの2人が"晴れ"たのなら、明はもっと愛らしい表情を見せてくれるのだろう。それが嬉しくて、ちょっとだけ悔しかった。
「お、着いた着いた。えぇと、材料は…」
「板チョコと、生クリームと、あと…」
事前に決めておいたレシピに従って、材料を集める。何だかクエストみたいで、1つ材料を見つけるごとに達成感があった。意外と前日にも残っているもので、ありがたい。材料を揃えると、後で精算するということで私が払うことにした。荷物を半々に分けて2人で持つ。同じように帰路を歩むと、あっという間にお昼になった。帰ったら材料をしまい、先にお昼ご飯を食べようと話し掛ける。明は食べ物に目がないので、一瞬瞳を輝かせて喜んだ。子供のような無邪気な煌めき。それが嬉しくて、私も笑った。
「ただいまー」
「お邪魔します」
2度目の出入り。お母さんは珍しく用事があるとのことで、留守である。だからこそ私が明を呼べたのだが、その辺をわざわざ話す必要はないだろう。冷蔵庫に買って来たばかりの材料を入れ、代わりに何を食べようかと思案する。
「あ、ご飯残ってる」
炊飯器の中には、朝ご飯の残りがそのまま置かれていた。冷蔵庫には卵とネギがある。
「炒飯でも作ろうか」
「うん」
とりあえず材料を一通り出して、キッチンに並べる。分担してベーコンやネギを刻み、それらを炒めている間に卵を溶き、ご飯を入れ、味付けをし、と工程を進めていく。炒めるのや味付けを明に任せると、流石食べることが大好きなだけあって完璧であった。この調子ならお菓子作りも上手くいきそうである。微笑んでいると、スプーンに乗せた一口分を差し出された。
「味見、して?」
「んっ…ん!おいひいっ!」
口を覆いながら、舌先に乗って来た程良い塩味の付いたご飯に喜びの声を上げる。完成したことに気付き、皿を2人分出す。盛り付けると飲み物を用意し、2人でリビングに座った。
「「いただきます」」
2人で作り、2人で食べるご飯はとても美味しかった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【完結】待ってください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。
毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。
だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。
一枚の離婚届を机の上に置いて。
ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
裏切り掲示板
華愁
青春
カテゴリーは〈童話〉ですが〈その他〉です。
それを見つけた時、あなたはどうしますか?
あなたは誰かに
裏切られたことがありますか?
その相手を憎いと思いませんか?
カテゴリーは〈童話〉ですが〈その他〉です。
ここには何を書いても
構いませんよ。
だって、この掲示板は
裏切られた人しか
見られないのですから……
by管理人
Go for it !
mimoza
青春
『走るのは好き、でも陸上競技は嫌い』
そんな矛盾する想いを秘めた高校2年生、吉田実穏。
彼女が本気を出したのは3度だけ。
3度目は先輩方からのお願いから始まる。
4継で東北大会に出場する、
それが新たな原動力になった。
【注意】
ルールは一昔前のを採用しています。
現在のルールとは異なるのでご了承下さい。
3年2組の山田くん
ことのは
青春
変わることのない友情をずっと信じていた。
だけどたった1人。その1人を失っただけで、友情はあっけなく崩れ去った。
それでも信じている。変わらない友情はあると――。
になる予定です。お手柔らかにお願いします…。
絶望人狼ゲーム
福竜キノコ
青春
とある高校の3年8組の生徒32人のもとに謎のメールが届いた。しかし、その内容は意味不明かつ奇怪なものばかり、しかしある日学校に到着したら、生徒たちは閉じ込められてしまっていた。そして、そこから絶望的なゲームが始まる。
*注意*この作品の登場人物は別作品のものをそのまま転用していますが、設定が一部変更されています。よろしければ、ぜひ本編(天才学級)もお楽しみください。
【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン
カムナ リオ
青春
八神斗哉は、友人との悪ふざけで罰ゲームを実行することになる。内容を決めるカードを二枚引くと、そこには『クラスの女子に告白する』、『キスをする』と書かれており、地味で冴えないクラスメイト・如月心乃香に嘘告白を仕掛けることが決まる。
自分より格下だから彼女には何をしても許されると八神は思っていたが、徐々に距離が縮まり……重なる事のなかった二人の運命と不思議が交差する。不器用で残酷な青春タイムリープラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる