神様自学

天ノ谷 霙

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1月20日 予想外

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思わず口をついて出た言葉だったのに、私はこれ以上ないくらい落ち着いていた。どくんどくんっと早鐘を打つ心臓も、周りの木々を揺らす風の音も、はっきりと聞こえてくる。手足の先が冷たくなっていく。震えて来た。返事を聞くのが怖い。でも、羅樹が安心出来る関係ではもう、いられないのだ。
羅樹は目を丸くして、ポカンとした表情を浮かべている。
「…夕音、僕のこと好きなの?」
「…」
改めて問い掛けられて、緊張が走る。これに頷けばもう戻れない。冗談だよ、なんて誤魔化せない。それでも私は、先に進みたいと思った。小さく頷くと、羅樹は体の力が抜けていくように、その場にしゃがみ込んだ。
「良かったぁ…!僕、てっきり夕音に嫌われてるんだと思ってた!」
「…へ?」
ふにゃっと柔らかな笑みでこちらを見上げてくる羅樹にドキッとしながらも、私は戸惑いを返す。
「夕音は優しいから、嫌いな僕とでも一緒に居てくれるんだと思ってた。そっかぁ、良かった…」
「ちょっと待って。私が、羅樹を、嫌い…?」
「うん。だって夕音、僕にちゃん付けで呼ばれるのも嫌がってたし、その後あんまり話してくれなくなっちゃったし。今は一緒に帰ってくれるけど、いつも気乗りしない様子だし」
思い当たる節がありすぎて、ぐうの音も出ない。周りに揶揄われるのが嫌だったことや、羅樹への思いを自覚してなかったが故の行動であった。今登下校を共にするのに気乗りしていないのは、恥ずかしくて仕方ないせいである。何が悲しくて何とも想われていない片想いの相手と四六時中、一緒に居なければならないのだ。たまには離れさせてくれ。想いを整理させてくれ。そんな願いも許されないのか。
「それは、悪かったけど…でもちゃんと理由があって…」
「理由?」
立ち上がった羅樹に真っ直ぐ見つめられて、心臓がうるさい。
「…普通は幼馴染と登下校なんてしないの!」
「そうなの?でも雪くんは霜月さんと一緒に下校してることがあるよ?」
「あの2人は幼馴染といえば幼馴染だけど…そもそも付き合ってるでしょ!?そういう関係でしか普通は一緒に帰らないの!」
私が照れ隠しを誤魔化すように叫ぶと、羅樹は目をぱちくりと瞬いた。
「そうなの?」
「そうだよ!私達はそういう関係じゃないでしょ!?」
「じゃあそういう関係なら、夕音は一緒に帰るのに抵抗なくなる?」
「へ!?えっと、まぁ、多少は…?」
「そっか」
羅樹は満面の笑みで、私の手を取った。
「じゃあ夕音、僕と付き合おう!」
「………………は?」
羅樹の言葉の意味を、今度は私が理解できなかった。
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