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1月1日 煌びやかに着飾って
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稲穂色の髪を緩く巻き、ハーフアップ状に結い上げる。グラデーションの掛かったオレンジ色のAラインドレスはくるぶしの上まで広がっている。ドレス自体はノースリーブだが、袖の部分には細かな刺繍が入ったレースが腕を覆い、その上から赤に近い濃いオレンジのショールを羽織っている。留め具にレース製の白薔薇の飾りがアクセントとなっているのが印象的だ。金に近いベージュのパンプスを履いて鏡を見れば、私とは思えない。薄らと色付いた頬に、艶めく唇。赤色の瞳は黒く長い睫毛に縁取られ、ルビーのようにキラキラと輝いている。化粧や衣装の力ではあるが、そこには私ではない誰かが立っているようだった。何処かのお嬢様に見えなくもない。
「…す、…っごい…」
「素材が良いと着飾り甲斐がありますわ。さぁ、もう3時を過ぎました。お嬢様をお迎えに参りましょう。きっとくたびれていらっしゃいますわ」
「えっ…は、はい…?」
メイドに案内されて、扇様を出迎える。着飾った私を見て目をぱちくりと瞬かせていた。その目線が居た堪れなかったが、扇様はふにゃっと笑って私の手を取った。
「とっても綺麗…!もしかして会食も一緒に参加してくれるのかしら?」
「はい。そう聞いております」
「それならいつもは気が進まないパーティも、やる気が出るってものね」
「お嬢様」
扇様の後ろに控えていた花火が、静かに口を開く。
「お嬢様もそろそろご準備致しませんと。挨拶回りとは変わりますので」
「わかったわ。行きましょう」
扇様は自室に戻り、私はその隣の部屋で待つことになった。もう一度ザッと湯浴みをするそうで、その湯気に当てられて私のメイクやら着飾りが崩れるのを防ぐためだそう。扇様は残念がっていたが、私はこの後の会食にも参加する意味が分からなくて戸惑っていた。毎日着飾って貰っている気がする。
私を粧し込んでくれたメイドに軽く食事をする際の注意点を教えてもらう。淑女の礼の仕方も付け焼き刃ではあるが覚えた。使う機会が来なければ良いと心から思う。そんなマナー教室のさわりだけを行なっていれば、あっという間に扇様の準備は終わり、会食開始30分前となった。呼ばれた通り部屋を出て待っていると、隣の部屋から扇様が現れた。扇情的な深紅のドレスに身を包んでいる。ストレートビスチェのせいで、白い肌や鎖骨が覗いているのがとても美しかった。胸元を大きく開けた白のシフォンショールが、肌の露出を抑えているはずなのに逆に艶めかしい雰囲気を纏う。迎春の挨拶では結い上げていた髪を下ろし、絹のように靡かせるその姿に息を呑んだ。
「さぁ、行きましょうか」
「はい」
コツコツとヒールの鳴る音が廊下に響き渡る。私はこの後の会食を思って、小さく震えた。
「…す、…っごい…」
「素材が良いと着飾り甲斐がありますわ。さぁ、もう3時を過ぎました。お嬢様をお迎えに参りましょう。きっとくたびれていらっしゃいますわ」
「えっ…は、はい…?」
メイドに案内されて、扇様を出迎える。着飾った私を見て目をぱちくりと瞬かせていた。その目線が居た堪れなかったが、扇様はふにゃっと笑って私の手を取った。
「とっても綺麗…!もしかして会食も一緒に参加してくれるのかしら?」
「はい。そう聞いております」
「それならいつもは気が進まないパーティも、やる気が出るってものね」
「お嬢様」
扇様の後ろに控えていた花火が、静かに口を開く。
「お嬢様もそろそろご準備致しませんと。挨拶回りとは変わりますので」
「わかったわ。行きましょう」
扇様は自室に戻り、私はその隣の部屋で待つことになった。もう一度ザッと湯浴みをするそうで、その湯気に当てられて私のメイクやら着飾りが崩れるのを防ぐためだそう。扇様は残念がっていたが、私はこの後の会食にも参加する意味が分からなくて戸惑っていた。毎日着飾って貰っている気がする。
私を粧し込んでくれたメイドに軽く食事をする際の注意点を教えてもらう。淑女の礼の仕方も付け焼き刃ではあるが覚えた。使う機会が来なければ良いと心から思う。そんなマナー教室のさわりだけを行なっていれば、あっという間に扇様の準備は終わり、会食開始30分前となった。呼ばれた通り部屋を出て待っていると、隣の部屋から扇様が現れた。扇情的な深紅のドレスに身を包んでいる。ストレートビスチェのせいで、白い肌や鎖骨が覗いているのがとても美しかった。胸元を大きく開けた白のシフォンショールが、肌の露出を抑えているはずなのに逆に艶めかしい雰囲気を纏う。迎春の挨拶では結い上げていた髪を下ろし、絹のように靡かせるその姿に息を呑んだ。
「さぁ、行きましょうか」
「はい」
コツコツとヒールの鳴る音が廊下に響き渡る。私はこの後の会食を思って、小さく震えた。
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