神様自学

天ノ谷 霙

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12月24日 買い物

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ガラッと勢いよく4組の扉を開けると、そこには羅樹だけがいた。肩で息をしている私を見て、ふにゃっとした笑顔を浮かべる。
「もう用事は済んだの?」
「う、うん…ごめん、待たせて」
「大丈夫だよ。ほら、帰ろう?」
羅樹の笑顔にきゅうっと胸が痛む。脈が早くなって、息が上手く吸えない。私は小さく深呼吸をして、差し出された鞄を受け取った。階段を降りながら、母親からの頼まれごとを思い出す。
「そうだ、帰りにスーパー寄らせて」
「ん、いいよ。今日の夜ご飯?」
「そう。材料、頼まれてたんだった」
「僕も手伝うよ。楽しみだなぁ」
羅樹が嬉しそうに笑うので、私も釣られて笑う。毎年、絶対一緒に居られるこの日が好きだった。羅樹がいつもより嬉しそうだから、私も嬉しかった。

いつもの電車を途中下車し、大きなスーパーに向かう。ここからはそんなに距離もないし、大きなものを買っても大丈夫だ。
「えーっと、卵と牛乳と…」
「夕音夕音、ネギあったよ!」
「ナイス。鶏肉は家にあるから、あとは…」
私が食材の名前を読み上げ、羅樹が見つける。食材が籠にどんどん積み重なっていくのを見て、取り忘れがないか確認する。無事、メモした食材は全て揃っていた。
「うん、じゃあレジ行こうか。財布出すから持ってて」
「はーい」
私が鞄の中に手を突っ込んでいると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。視線を彷徨わせると、微笑ましげにこちらを見る2人の主婦を見つけた。
「何だか夫婦みたいね」
「えぇ、カップルさんかしら?」
カップルという言葉を聞いて、私の頬がカッと熱を帯びる。幼馴染だからこの距離感に慣れているだけであって、これが当たり前で、だから急に恋人みたいだとかそれを超えて夫婦だとか言われると意識してしまう。羅樹は気付いていないのか、食材を見ながら夜ご飯の予想を呟いていた。羅樹の鈍さが、羨ましい。
私はそそくさとレジを終え、荷物を袋に詰め込む。私が詰めた袋を持とうとした瞬間、ひょいっと羅樹に奪われてしまった。
「重いものは僕に任せて。夕音はこっち」
比較的軽いものばかりが詰められたレジ袋を渡された。気遣いへの嬉しさと女の子扱いの気恥ずかしさで板挟みになる。
「あ、あり…がと…」
「どういたしまして?」
私のお礼に羅樹が目を丸くする。先程の主婦がまた笑っているような気がして、逃げるようにスーパーを出た。その後の帰り道はあまり覚えていない。顔をあまり上げられなくて、ただ羅樹が話すことを上の空で相槌を返していたような気がする。
私達はそのまま私の家に荷物を置き、各自着替え終えてから再度我が家のキッチンに集合した。クリスマスパーティの準備が始まる。
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