神様自学

天ノ谷 霙

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来's house(短編)

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時は遡って、9月下旬のことだった。
「来くん、ちょっと良い?」
僕を呼ぶ声が聞こえて、食器を拭く手を止める。視線を動かすと、そこにいたのは姉の未紅みくだった。
「売り物の茶葉を取って来てって言われたんだけど…そろそろお昼時だから手が離せなくって」
「分かりました。取って来ます」
「助かるわ、ありがとう」
未紅姉さんはおっとりと笑って、ホールの方へ戻った。僕の家は茶店であり、家族を中心に働いている。休日は稼ぎ時だと大忙しだ。それとは別に、家の持つ茶畑で育った茶葉を売ることもしている。その在庫を取りに行って姉に渡すと、再度お礼を言って受け取ってくれた。僕も仕事に戻り、皿を拭き終えて食材の追加を持って来ようとしたところで、太腿にドンと何かがぶつかって来た。
「兄さま、兄さま。仕季しきは何をすれば良いですか?」
ぎゅっと僕の服の裾を握るのは、7歳下の妹だった。何故だか昔からさま付けで呼んでくる。僕も昔は姉さまや母さまと呼んでいたので、そのせいかもしれない。
「えっと、じゃあ父さんのところで野菜洗うのを手伝ってくれるかな?」
「わかりました!」
僕の指示に従って、父さんのところに向かって走り出す。可愛らしい背中に成長を感じて、僕は微笑む。段ボールに詰まった野菜を父さんに届けて、姉さんと共にホールへ出る。昼時は僕もホールに出ないと手が足りないのだ。代わりに母さんが裏の細かい仕事とレジを担当してくれる。
「お待たせ致しました、餡蜜パフェと緑茶のセットでございます」
「かしこまりました。少々お待ちください」
僕と姉さんは忙しなく店内を歩き回る。家族経営のあまり大きくない茶店だが、地元の人には人気が高く常連も多い。昼飯時には満席になるのだ。父さんが作り終えた料理を次々とテーブルに運び、食べ終えた食器を片し、綺麗にしてから次の客を通す。それを何度も何度も繰り返し、客が減るのを待つ。それまでは休憩にも入れないしお昼ご飯も食べられない。慣れてはいるが、結構大変な仕事だ。
「お待たせ致しました。抹茶ティラミスと甘酒のパンナコッタ、きな粉ミルクのアイスに、白玉餡蜜と緑茶セットになります」
「おぉ、本当に働いてる!」
「…え?」
聞き覚えのある声がした。確認のために顔を上げると梶栗くんが僕に笑顔を向けていた。他の人の顔もちゃんと見ると、光くんに小野くん、それに鹿宮くんもいた。客をさばくのに夢中になっていて、友人が来ていたことに全く気付かなかったのだ。
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