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12月22日 感謝
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行きと同じ速さで霜月神社まで帰って来る。空の色に変化は無く、不思議に感じて携帯画面を見てみれば表示された時刻は行く前からほとんど変わっていなかった。
「…時間が、止まっていた…?」
ボソッと呟いたのが聞こえたらしい。いつの間にかいつもの部屋まで辿り着いており、振り返った稲荷様は肯定の声を上げた。
「あちらの世の、時を管理する者がな。リーロに頼まれて姉神様の周りだけ遅くしておいたらしい。妖力を持たぬ者には感じられないがな」
「なる、ほど…?」
納得出来るような、出来ないような。あちらの世を含めた神々のことを理解するのは、元が人である私には無理だろうと結論付けて、頭を切り替える。2日ぶりの学校を終え、更に姉神様、つまり虹との確執を解決したのだ。流石に疲労感に苛まれる。細かい話は後にして、今日は帰って寝ようと自分の荷物を取ると、向かいに立っていた稲荷様が深く頭を下げた。あちらの世に帰る前の姉神様と同じように、私に向けて。
「稲森 夕音 様。貴方に感謝を申し上げる」
稲穂色の髪が、本物の稲穂のように畳に向かって垂れる。その光景が美しいと感じてしまい、咄嗟に反応を返すことが出来なかった。
「貴方の協力が無ければ、貴方が解決してくださらねば我々はなす術無くリーロを失い、虹を止めることも叶わず、こちらの世に災いを招くところでした。言葉では伝え切れないほどの感謝、御恩を忘れません」
伏せられたままの顔を上げさせる前に、何か言葉を返す前に、体は勝手に動いていた。膝からしゃがみ、稲荷様の首に腕を回す。抱き締めるような形になったことを驚いた稲荷様が、私に合わせしゃがんでくれたところでやっと言葉が出てきた。
「稲荷様、私は貴方のおかげで成長出来ました。今回のことは、貴方の使となり、自身の暗い部分と向かい合うことで乗り越えられた壁だったのです。感謝をするのはこちらの方です。私の命を救ってくださり、救う機会をくださり、ありがとうございました」
私はやっと感じた安堵に涙を流す。目頭にこもった熱は、生きている証拠だ。
私は稲荷様から手を離し、目の前に正座する。稲荷様も全く同じタイミングで正座をしたので、どちらからともなく笑みが溢れた。
「私はまだ、自身の恋に決着を付けておりません。ですから、あと少しの間、お付き合いいただけると嬉しいです」
「こちらこそ、夕音ほどに頼りがいのある娘もおるまい。貴方の恋が実ることを、陰ながら応援していよう」
会話を終え、カサマに案内されながらいつも通り神社を出て行く。もうすっかり暗くなった空を見上げ、月に想い人の影を重ねる。
さぁ、勇気の一歩を、踏み出さねば。
鳥居から踏み出した足が、とても軽い気がした。
「…時間が、止まっていた…?」
ボソッと呟いたのが聞こえたらしい。いつの間にかいつもの部屋まで辿り着いており、振り返った稲荷様は肯定の声を上げた。
「あちらの世の、時を管理する者がな。リーロに頼まれて姉神様の周りだけ遅くしておいたらしい。妖力を持たぬ者には感じられないがな」
「なる、ほど…?」
納得出来るような、出来ないような。あちらの世を含めた神々のことを理解するのは、元が人である私には無理だろうと結論付けて、頭を切り替える。2日ぶりの学校を終え、更に姉神様、つまり虹との確執を解決したのだ。流石に疲労感に苛まれる。細かい話は後にして、今日は帰って寝ようと自分の荷物を取ると、向かいに立っていた稲荷様が深く頭を下げた。あちらの世に帰る前の姉神様と同じように、私に向けて。
「稲森 夕音 様。貴方に感謝を申し上げる」
稲穂色の髪が、本物の稲穂のように畳に向かって垂れる。その光景が美しいと感じてしまい、咄嗟に反応を返すことが出来なかった。
「貴方の協力が無ければ、貴方が解決してくださらねば我々はなす術無くリーロを失い、虹を止めることも叶わず、こちらの世に災いを招くところでした。言葉では伝え切れないほどの感謝、御恩を忘れません」
伏せられたままの顔を上げさせる前に、何か言葉を返す前に、体は勝手に動いていた。膝からしゃがみ、稲荷様の首に腕を回す。抱き締めるような形になったことを驚いた稲荷様が、私に合わせしゃがんでくれたところでやっと言葉が出てきた。
「稲荷様、私は貴方のおかげで成長出来ました。今回のことは、貴方の使となり、自身の暗い部分と向かい合うことで乗り越えられた壁だったのです。感謝をするのはこちらの方です。私の命を救ってくださり、救う機会をくださり、ありがとうございました」
私はやっと感じた安堵に涙を流す。目頭にこもった熱は、生きている証拠だ。
私は稲荷様から手を離し、目の前に正座する。稲荷様も全く同じタイミングで正座をしたので、どちらからともなく笑みが溢れた。
「私はまだ、自身の恋に決着を付けておりません。ですから、あと少しの間、お付き合いいただけると嬉しいです」
「こちらこそ、夕音ほどに頼りがいのある娘もおるまい。貴方の恋が実ることを、陰ながら応援していよう」
会話を終え、カサマに案内されながらいつも通り神社を出て行く。もうすっかり暗くなった空を見上げ、月に想い人の影を重ねる。
さぁ、勇気の一歩を、踏み出さねば。
鳥居から踏み出した足が、とても軽い気がした。
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