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やるべきこと
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リーロと私を中心に、安堵のため息をつく。稲荷様はドッと疲れが押し寄せてきたようで、フラついた体をカサマに支えて貰っていた。
でも、まだだ。私がやるべきことはまだ残っている。
後ろ側で膝から崩れ落ちた虹に、私は目線を向けた。やがて彼女はその瞳から大粒の涙を流れるままに流し、ただ呆然とこちらを、リーロを見つめているだけだった。
安堵、驚き、喜び。様々な感情が混ざり合ってどうすれば良いのか分からない、そんな気配が伝わってきた。だから私はその安心の隙を突いて、油断を突いて、彼女の懐に潜り込む。
私はゆっくりと虹に近付いた。リーロを解呪した時と同じように額を合わせ、静かに目を閉じる。恋使としての能力を全開にして、感覚を共有していく。
似た者同士だから、きっと、解る。
足の先から爪の先まで感覚を共有していくような不思議な気配。そうして虹をじわじわと知っていく。見せてくれなかった、誰にも見せなかった心の奥まで知っていく。私が過去夢で見ることが叶わなかった、虹の動機を知ろうと探る。
虹がどうしてそこまで"恋使"にこだわっているのか。
恋に取り憑かれたのか。
その全てを知るために、私の持つ全ての力で全ての始まりを知ることにする。
『繋げ 紡げ お前の 最奥の 記憶』
私の唇から溢れたその言の葉に反応して、魔法陣が描かれる。先ほどと似たオレンジ色だが、所々に私の瞳と同じ赤、髪色と同じ金色、そして淡い桃色が混ざっていた。
「…なっ…!?」
独自の魔法陣を自分の色で展開する。それはもうニンゲンを超えた所業。
…人外扱いされるのは慣れている。昔から聞こえた心の音のせいで、感情が分かったせいで、ずっと自分が嫌いだった。でも、だからこそ。そんな私だからこそ救える。私だから出来ることが、目の前にある。ならばやるしかない。
私の決意と共に、暗闇が辺りを覆った。段々と目が慣れてくれば、そこは暗闇ではなくセピア色の記憶だと気付く。私が見た過去夢と同じ、虹の記憶の中だろう。
夢を見ているような奇妙な感覚を弄びながら、私は立ち上がる。同様に座り込んでいた虹の手を引っぱり、立ち上がらせる。
『ここは、どこだ…?』
前は話すことが出来なかったが、今回は2人で、正確には1人と1柱で来ている為か、話すことが出来た。ただ普段話しているようでは無く、喉の奥から声が出ているわけではなさそうだった。私と虹にだけ聞こえる音として、ただそこに存在する。そんな感じだった。
『恐らくは、貴方の心のずっと奥に眠る、古い古い記憶ですかね』
私がそう返すと、虹は怪訝そうに首を傾げた。でもそれ以上に説明出来ない。私もこれから何が起こるのか、何が見られるのか分からない。
私と虹は目の前に流れる映像を見ることしか出来ないのだから。
でも、まだだ。私がやるべきことはまだ残っている。
後ろ側で膝から崩れ落ちた虹に、私は目線を向けた。やがて彼女はその瞳から大粒の涙を流れるままに流し、ただ呆然とこちらを、リーロを見つめているだけだった。
安堵、驚き、喜び。様々な感情が混ざり合ってどうすれば良いのか分からない、そんな気配が伝わってきた。だから私はその安心の隙を突いて、油断を突いて、彼女の懐に潜り込む。
私はゆっくりと虹に近付いた。リーロを解呪した時と同じように額を合わせ、静かに目を閉じる。恋使としての能力を全開にして、感覚を共有していく。
似た者同士だから、きっと、解る。
足の先から爪の先まで感覚を共有していくような不思議な気配。そうして虹をじわじわと知っていく。見せてくれなかった、誰にも見せなかった心の奥まで知っていく。私が過去夢で見ることが叶わなかった、虹の動機を知ろうと探る。
虹がどうしてそこまで"恋使"にこだわっているのか。
恋に取り憑かれたのか。
その全てを知るために、私の持つ全ての力で全ての始まりを知ることにする。
『繋げ 紡げ お前の 最奥の 記憶』
私の唇から溢れたその言の葉に反応して、魔法陣が描かれる。先ほどと似たオレンジ色だが、所々に私の瞳と同じ赤、髪色と同じ金色、そして淡い桃色が混ざっていた。
「…なっ…!?」
独自の魔法陣を自分の色で展開する。それはもうニンゲンを超えた所業。
…人外扱いされるのは慣れている。昔から聞こえた心の音のせいで、感情が分かったせいで、ずっと自分が嫌いだった。でも、だからこそ。そんな私だからこそ救える。私だから出来ることが、目の前にある。ならばやるしかない。
私の決意と共に、暗闇が辺りを覆った。段々と目が慣れてくれば、そこは暗闇ではなくセピア色の記憶だと気付く。私が見た過去夢と同じ、虹の記憶の中だろう。
夢を見ているような奇妙な感覚を弄びながら、私は立ち上がる。同様に座り込んでいた虹の手を引っぱり、立ち上がらせる。
『ここは、どこだ…?』
前は話すことが出来なかったが、今回は2人で、正確には1人と1柱で来ている為か、話すことが出来た。ただ普段話しているようでは無く、喉の奥から声が出ているわけではなさそうだった。私と虹にだけ聞こえる音として、ただそこに存在する。そんな感じだった。
『恐らくは、貴方の心のずっと奥に眠る、古い古い記憶ですかね』
私がそう返すと、虹は怪訝そうに首を傾げた。でもそれ以上に説明出来ない。私もこれから何が起こるのか、何が見られるのか分からない。
私と虹は目の前に流れる映像を見ることしか出来ないのだから。
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