神様自学

天ノ谷 霙

文字の大きさ
上 下
404 / 812

やるべきこと

しおりを挟む
リーロと私を中心に、安堵のため息をつく。稲荷様はドッと疲れが押し寄せてきたようで、フラついた体をカサマに支えて貰っていた。
でも、まだだ。私がやるべきことはまだ残っている。
後ろ側で膝から崩れ落ちた虹に、私は目線を向けた。やがて彼女はその瞳から大粒の涙を流れるままに流し、ただ呆然とこちらを、リーロを見つめているだけだった。
安堵、驚き、喜び。様々な感情が混ざり合ってどうすれば良いのか分からない、そんな気配が伝わってきた。だから私はその安心の隙を突いて、油断を突いて、彼女の懐に潜り込む。
私はゆっくりと虹に近付いた。リーロを解呪した時と同じように額を合わせ、静かに目を閉じる。恋使としての能力を全開にして、感覚を共有していく。
似た者同士だから、きっと、解る。
足の先から爪の先まで感覚を共有していくような不思議な気配。そうして虹をじわじわと知っていく。見せてくれなかった、誰にも見せなかった心の奥まで知っていく。私が過去夢で見ることが叶わなかった、虹の動機を知ろうと探る。
虹がどうしてそこまで"恋使"にこだわっているのか。
恋に取り憑かれたのか。
その全てを知るために、私の持つ全ての力で全ての始まりを知ることにする。
『繋げ 紡げ お前の 最奥の 記憶』
私の唇から溢れたその言の葉に反応して、魔法陣が描かれる。先ほどと似たオレンジ色だが、所々に私の瞳と同じ赤、髪色と同じ金色こんじき、そして淡い桃色が混ざっていた。
「…なっ…!?」
独自の魔法陣を自分の色で展開する。それはもうニンゲンを超えた所業。
…人外扱いされるのは慣れている。昔から聞こえた心の音のせいで、感情が分かったせいで、ずっと自分が嫌いだった。でも、だからこそ。そんな私だからこそ救える。私だから出来ることが、目の前にある。ならばやるしかない。
私の決意と共に、暗闇が辺りを覆った。段々と目が慣れてくれば、そこは暗闇ではなくセピア色の記憶だと気付く。私が見た過去夢と同じ、虹の記憶の中だろう。
夢を見ているような奇妙な感覚を弄びながら、私は立ち上がる。同様に座り込んでいた虹の手を引っぱり、立ち上がらせる。
『ここは、どこだ…?』
前は話すことが出来なかったが、今回は2人で、正確には1人と1柱で来ている為か、話すことが出来た。ただ普段話しているようでは無く、喉の奥から声が出ているわけではなさそうだった。私と虹にだけ聞こえる音として、ただそこに存在する。そんな感じだった。
『恐らくは、貴方の心のずっと奥に眠る、古い古い記憶ですかね』
私がそう返すと、虹は怪訝そうに首を傾げた。でもそれ以上に説明出来ない。私もこれから何が起こるのか、何が見られるのか分からない。
私と虹は目の前に流れる映像を見ることしか出来ないのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

家政婦さんは同級生のメイド女子高生

coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。

お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」 義姉にそう言われてしまい、困っている。 「義父と寝るだなんて、そんなことは

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・

白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。 その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。 そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

処理中です...