386 / 812
12月17日 不調の原因
しおりを挟む
急激な体調変化と共に、熱も上がっていたらしい。眞里阿に連れて行ってもらった保健室で、即刻早退の命令が下った。私も息苦しくて辛かったし、このまま授業を受けられそうにもなかったので特に反論もせずそのまま受け入れる。ただ、脳内に残響しているあの声が気になるだけだ。焦り混じりの稲荷様の声。それが私の脳内にいきなり響いたことが気になっていた。あの様子なら、すぐに行った方が良いだろう。親に迎えに来てもらうかどうかの問いにNOと答えて、私はふらふらした体を何とか立たせる。帰り支度はいつの間にか眞里阿が済ませて、私の側にはいつもの登校鞄が最少限度の荷物と共に置いてあった。
「気を付けなさいね」
「はい、ありがとうございました」
軽くお辞儀をして、そのまま校門を出る。駅に向かう途中にある神社に、呼び寄せられるように無意識に入って行った。いつもの案内役の狐に連れられ、恋使の姿に変える。その際、少しだけ疲れが楽になったように感じた。稲荷様の待つ場所に着くと、稲荷様は驚いたように私を見た。
「ゆ、夕音!?お主、体調が…あぁもうこちらへ来い!○×*、早く休ませろ!」
恐らく狐の名前であろうその箇所は、私のヒトの耳では聞こえないものだった。ノイズがかかったように聞こえ、その箇所だけ耳が上手く機能しなかった。狐達がせっせと準備した布団に、私は寝転がらされる。
「何故無茶をする…確かに神社に来いとは言ったが、そのような状態で来ることは無かったのに…」
心配そうに私の顔を覗く稲荷様。私はふっと微笑んで言葉を返す。
「あまりに焦りの混じった声だったので…」
「馬鹿者…わたしのことなど、後回しで良いのだ…」
「ふふ、ごめんなさい」
あまりに心配そうな顔をするものだから、嬉しくなってしまう。そのような顔をさせるくらい、私の存在が大きいのだと言ってくれているように感じられる。それは何か問題点があったはずだけど、もやがかかったような半停止状態の思考回路では思い出せなかった。
「あまり遅くなると主の親に心配をかけよう、手短に話す」
「はい」
急に真剣になった稲荷様の目に、私はごくりと唾を飲み込む。
「…主の命が、姉神様に盗られようとしている」
前後の無いその言葉が、私は最初理解出来なかった。けれど実感として、心の奥の方ではストン、と何かが腑に落ちた。私が聞き返すよりも先に、困ったような表情で言葉を続ける稲荷様。
「主の最近の体の不調は、恐らく姉神様の仕業であろう。ただ…」
「ただ?」
私が不思議そうに視線を送ると、稲荷様は首を振って、何でもない、と答えた。
「少しその不調を肩代わりする。目を瞑って少しだけ、わたしに委ねてくれ」
目を瞑った私の額に、稲荷様の手が触れる。吸い取られるような感覚と共に、楽になった気がした。
「気を付けなさいね」
「はい、ありがとうございました」
軽くお辞儀をして、そのまま校門を出る。駅に向かう途中にある神社に、呼び寄せられるように無意識に入って行った。いつもの案内役の狐に連れられ、恋使の姿に変える。その際、少しだけ疲れが楽になったように感じた。稲荷様の待つ場所に着くと、稲荷様は驚いたように私を見た。
「ゆ、夕音!?お主、体調が…あぁもうこちらへ来い!○×*、早く休ませろ!」
恐らく狐の名前であろうその箇所は、私のヒトの耳では聞こえないものだった。ノイズがかかったように聞こえ、その箇所だけ耳が上手く機能しなかった。狐達がせっせと準備した布団に、私は寝転がらされる。
「何故無茶をする…確かに神社に来いとは言ったが、そのような状態で来ることは無かったのに…」
心配そうに私の顔を覗く稲荷様。私はふっと微笑んで言葉を返す。
「あまりに焦りの混じった声だったので…」
「馬鹿者…わたしのことなど、後回しで良いのだ…」
「ふふ、ごめんなさい」
あまりに心配そうな顔をするものだから、嬉しくなってしまう。そのような顔をさせるくらい、私の存在が大きいのだと言ってくれているように感じられる。それは何か問題点があったはずだけど、もやがかかったような半停止状態の思考回路では思い出せなかった。
「あまり遅くなると主の親に心配をかけよう、手短に話す」
「はい」
急に真剣になった稲荷様の目に、私はごくりと唾を飲み込む。
「…主の命が、姉神様に盗られようとしている」
前後の無いその言葉が、私は最初理解出来なかった。けれど実感として、心の奥の方ではストン、と何かが腑に落ちた。私が聞き返すよりも先に、困ったような表情で言葉を続ける稲荷様。
「主の最近の体の不調は、恐らく姉神様の仕業であろう。ただ…」
「ただ?」
私が不思議そうに視線を送ると、稲荷様は首を振って、何でもない、と答えた。
「少しその不調を肩代わりする。目を瞑って少しだけ、わたしに委ねてくれ」
目を瞑った私の額に、稲荷様の手が触れる。吸い取られるような感覚と共に、楽になった気がした。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・
マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」
義姉にそう言われてしまい、困っている。
「義父と寝るだなんて、そんなことは
俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
俺達は愛し合ってるんだよ!再婚夫が娘とベッドで抱き合っていたので離婚してやると・・・
白崎アイド
大衆娯楽
20歳の娘を連れて、10歳年下の男性と再婚した。
その娘が、再婚相手とベッドの上で抱き合っている姿を目撃。
そこで、娘に再婚相手を託し、私は離婚してやることにした。
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる