神様自学

天ノ谷 霙

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12月11日 間

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久しぶりの学校はあっという間だった。朝、紗奈の機嫌が斜めになった後、竜夜くんが来て八つ当たりされていた。竜夜くんは驚いていたが、戸惑いながらも慣れた対応で紗奈を落ち着かせていた。私と由芽に対するただの照れ隠しだと知ると、ちょっとだけ羨ましそうな目をしたが、気付かないふりをしておいた。
さて、それで私は部活にも所属していないし、特に用事もない。帰ろうと思えば帰れる筈だが、利羽に捕まってまだ教室に残っていた。何か用事があるらしいが、その要件は分からない。利羽が何かを言おうとして、口を閉じるのを繰り返しているのをただ見ているだけだった。私と利羽の間に流れる不思議な雰囲気が少し気まずい。いたたまれなくなって、つい口を開いてしまった。
「あの、利羽?」
「っえ、な、何!?」
「えっと…どうしたの?」
話すように促すと、利羽は目を泳がせて俯いてしまう。私が休む前の休日にデートだと言っていたが、蒼くんと何かあったのだろうか。心配していると、利羽がやっと口を開いた。
「あ、あのね。ちょっと、えっと、一緒に買い物行かない!?」
「へ?」
「え?」
利羽が固まること数秒。何も考えずに発言したらしく、自分の言葉を反芻して慌ててだした。
「私、なんて…っ違、違うの!いや違くはなくもない…?んだけど、その…あの…」
「いいよ」
「えっ」
「買い物、行きたいんでしょ?」
あまりに慌てるから、つい、助け舟を出してしまった。利羽は私の問いかけに首をぶんぶんと縦に振り、頷く。私が微笑むと安心したのか、利羽は上気した頬を手で扇いだ。
「今日、帰りの車はいいの?」
「あ、うん。久しぶりに電車に乗りたいわ!」
利羽は身体の関係上、送り迎えをして貰って学校に来ている。最近は調子が良いようで、少しずつ普通の生活に慣れてきているらしい。電車に乗る機会が少なかったせいか、珍しい乗り物という印象が強く、憧れがあるようだ。旅行の際も乗ったが、その時がほとんど初めてのようでわくわくしていたことを思い出した。
「それじゃあ近くのショッピングモール行こうか。美味しいアイスがあるんだ。買い食い、しない?」
私の誘いにぱあっと瞳を輝かせる利羽。小さい子供のような可愛らしい反応に、ついついいろんなことを経験させたくなる。
私はカバンを肩にかけて、利羽の手を引いた。
「それじゃあまずは電車に乗るため、いざ出発だよ!」
「おー!」
先程までの気まずさは何処へやら。今私の隣には、わくわくと目を輝かせている少女しかいなかった。
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