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12月11日 からかい
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結局、学校まで一緒に行くことになってしまった。嬉しさと気恥ずかしさと、からかわれることへのある種恐怖がない混ぜになって私の中でぐるぐると回る。周りの視線が気になる。恋人じゃないけれど、男女で2人で歩いていたらそう見えるのだろうか。少しは、お似合いな2人だね、とか思われているのだろうか。
自分で考えていて虚しくなって来たので、平静を装っていつも通り話をした。駅から様子がおかしかった羅樹は、話をしていくといつも通りなのにふとした瞬間に変な様子になる。少し心配だけれど、風邪がうつったわけではなさそうなので、そのまま何も聞かないようにした。
「お~は~よ~…?見ましたよ~…?」
教室に着くと、にやにや顔の紗奈が近付いて来た。何を見たのか、大体察しはつく。
「榊原くんと一緒に登校して来たよね~?朝から仲良しですなぁ!!」
「声が大きいよ、紗奈」
顔に熱が集中するのが分かったが、少しでも平静を装わなければからかいはヒートアップする。容易に想像出来るそれが嫌で、表情筋に力を入れることにした。
「えぇ~?いや、大きくもなりますって!だって、やっと、やぁ~~っと進展したんでしょう?」
曇りなき期待の眼差しに、心がズキっと痛む。進展なんてしてない。私と羅樹は幼馴染のまま。友達の、まま。私が紗奈から一瞬視線を外すと、「ぐえっ」とカエルを踏んだような声が聞こえた。驚いて顔を上げると、紗奈が頭頂部を押さえて蹲っている。隣には呆れ顔の由芽がいた。
「おはよう夕音、体調はもう平気なの?」
「う、うん。大丈夫。元気になったよ」
「良かった。病み上がりでまだ本調子じゃないのに、紗奈のテンションは余計にキツかったでしょ。ごめんねー、夕音が風邪ひいたって聞いてすごい心配してたから。それに、いなくて寂しかったみたいね」
恨みがましそうに由芽を見ていた紗奈が、その言葉に顔を真っ赤に染める。
「さ、ささ、寂しくなんてなかったし!それに、心配なんてしてないし!?こんな時期に風邪ひくなんてばかだなぁって思ってただけだし!」
早口で捲し立てる紗奈に、由芽がバレないように私にウインクをする。何となく、次の行動を察した。
「そっかぁ~~~、紗奈は友達が風邪で寝込んでも心配じゃないんだねぇ~?そっかぁ、紗奈は冷たいなぁ…風邪って拗らせると死に至ることもある怖ーい病気なのに…」
ふぅ、とため息を吐いた由芽に、顔を青く染める紗奈。赤くなったり青くなったり忙しい紗奈に、追い討ちをかけるように私も便乗する。
「…そうだね、私、紗奈に心配して貰えるほど親しくなかったんだ。友達だと思ってたのは私だけだったんだね…」
大袈裟に悲しそうに言って、泣くふりをしてみる。由芽は私の背中をさすり、慰めるふりをする。紗奈はプルプルと震えて、半ばやけになって認めた。
「あぁもう分かったよ!心配してたし寂しかった!!もう、風邪にやられるなんてらしくないよ!気を付けてよね!?」
そう言った後に私達が笑ったので、紗奈は拗ねてそっぽを向いてしまった。紗奈の機嫌を戻すのに苦労していると、ホームルーム開始のチャイムが鳴った。
自分で考えていて虚しくなって来たので、平静を装っていつも通り話をした。駅から様子がおかしかった羅樹は、話をしていくといつも通りなのにふとした瞬間に変な様子になる。少し心配だけれど、風邪がうつったわけではなさそうなので、そのまま何も聞かないようにした。
「お~は~よ~…?見ましたよ~…?」
教室に着くと、にやにや顔の紗奈が近付いて来た。何を見たのか、大体察しはつく。
「榊原くんと一緒に登校して来たよね~?朝から仲良しですなぁ!!」
「声が大きいよ、紗奈」
顔に熱が集中するのが分かったが、少しでも平静を装わなければからかいはヒートアップする。容易に想像出来るそれが嫌で、表情筋に力を入れることにした。
「えぇ~?いや、大きくもなりますって!だって、やっと、やぁ~~っと進展したんでしょう?」
曇りなき期待の眼差しに、心がズキっと痛む。進展なんてしてない。私と羅樹は幼馴染のまま。友達の、まま。私が紗奈から一瞬視線を外すと、「ぐえっ」とカエルを踏んだような声が聞こえた。驚いて顔を上げると、紗奈が頭頂部を押さえて蹲っている。隣には呆れ顔の由芽がいた。
「おはよう夕音、体調はもう平気なの?」
「う、うん。大丈夫。元気になったよ」
「良かった。病み上がりでまだ本調子じゃないのに、紗奈のテンションは余計にキツかったでしょ。ごめんねー、夕音が風邪ひいたって聞いてすごい心配してたから。それに、いなくて寂しかったみたいね」
恨みがましそうに由芽を見ていた紗奈が、その言葉に顔を真っ赤に染める。
「さ、ささ、寂しくなんてなかったし!それに、心配なんてしてないし!?こんな時期に風邪ひくなんてばかだなぁって思ってただけだし!」
早口で捲し立てる紗奈に、由芽がバレないように私にウインクをする。何となく、次の行動を察した。
「そっかぁ~~~、紗奈は友達が風邪で寝込んでも心配じゃないんだねぇ~?そっかぁ、紗奈は冷たいなぁ…風邪って拗らせると死に至ることもある怖ーい病気なのに…」
ふぅ、とため息を吐いた由芽に、顔を青く染める紗奈。赤くなったり青くなったり忙しい紗奈に、追い討ちをかけるように私も便乗する。
「…そうだね、私、紗奈に心配して貰えるほど親しくなかったんだ。友達だと思ってたのは私だけだったんだね…」
大袈裟に悲しそうに言って、泣くふりをしてみる。由芽は私の背中をさすり、慰めるふりをする。紗奈はプルプルと震えて、半ばやけになって認めた。
「あぁもう分かったよ!心配してたし寂しかった!!もう、風邪にやられるなんてらしくないよ!気を付けてよね!?」
そう言った後に私達が笑ったので、紗奈は拗ねてそっぽを向いてしまった。紗奈の機嫌を戻すのに苦労していると、ホームルーム開始のチャイムが鳴った。
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