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Love girl 光
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俺は中学から仲の良い来とよく一緒にいる。来は良いヤツで、どっちかっていうと可愛い男だと思う。女装したら似合うと思う。本人は嫌がると思うが。
そんなことを考えていた俺は、高校に入って恋をした。もともと女の子が好きだったが、高校に入って今までの比じゃないくらい可愛い女の子が増えた。
女の子は、本当にイイ。
なんて言うと俺は変態扱いを受けるが、その辺も自覚しているつもりだ。だって可愛いものを可愛いと言って何が悪い。好きなものを愛でて何が悪い。そう、俺は思う。
俺が恋をしたのは、「桐竜 亜美」。可愛くて優しい。入学当初に隣の席になった。
「よろしくね。えっと、北原くん」
「う、ん。よろしく、桐竜、さん」
笑った顔は花のように美しくて。俺は一目で恋に落ちた。
それから暫くして、来が桐竜…さんと話しているのを見た。用事があっただけみたいだったが、すごく仲が良さそうに見えて。俺の心の奥で、じゅわりと何かが焦げていくようだった。そんな日がたまにあった。桐竜さん、はよくドアの近くにいるので伝言をよく頼まれる。たまに俺にも伝言してくれる。話せるのがたまらなく嬉しい。でも他の男と話しているのを見ると、喉の奥に何かがたまって、吐き出したらもう戻れない気がする。そんな黒いものが俺の中でぐるぐるしていた。
そんな中、俺は見てしまった。
黒い、どす黒いものが、俺の奥を焦がして飲み込んでいく。
なんだ、これ。
なぁに、これ。
俺の目が写したのは、強くも弱くもない雨が降る日のこと。女の子に傘を差し出す優しい男。微笑んで、女の子が濡れないよう傾けながら、自分の方が濡れるのも構わず二人で一つの傘を使う。そんな二人。
その二人は、来と桐竜…ううん、亜美だった。俺はその姿を見て、脈が脳を打つ感覚になった。体の奥底から汗が溢れ、目を離せない。痛くて仕方ない。何が、とは具体的にはわからないけれど、痛みがズキズキと走った。
しばらく経って、二人の姿が見えなくなって初めて目を伏せた。痛みは引かないけれど、目を離し階段を上がった。ドアを開け、人が減った教室の内に入る。
「あれ?帰らないの北原くん」
残っていた内の一人、稲森が俺に話しかけた。
「あぁ、ちょっと雨が強くなってきたから」
ぼそっと呟くように答える。稲森が不思議そうに首を傾げる。
「雨………じゃな…。こ……嵐の………」
「なんか言った?」
断片的に聞こえた「嵐」という言葉に反応する。すると稲森は顔だけこちらに向けて
「なんでもないよ」
と笑った。その目が、俺の澱みまで見通すようでドキッ…とした。
「…雨、強いね」
遠くで「またね」や「さようなら」と言っているのが聞こえなかった。稲森のその声だけが耳に響き渡った。朱色に輝く瞳が、まばたきするだけで心が掴まれるようだった。
「北原くん」
「っ…あ、何…?」
いつの間にか俺と稲森の二人っきりになっていた。そんな事にも気付けないくらい目の前に集中していた俺の真ん中を稲森は指差す。
「その心の嵐は、いつか去る。それまでに絶対に行動を起こさないで」
ふわっと白く儚く咲く花が現れた。ほぼ線対称のように重なる花弁が美しい花だった。
「その花はアネモネ。花言葉は、恋の苦しみ、真実…そして期待」
「…恋、の…」
「苦しくてもそれが真実。目を閉じて逸らしても意味は無い。だから最後まで信じて、期待して」
俺の心の奥がトクンと鳴った。そして、その言葉がストンっと落ちた。
俺は亜美が好きだった、と。
そんなことを考えていた俺は、高校に入って恋をした。もともと女の子が好きだったが、高校に入って今までの比じゃないくらい可愛い女の子が増えた。
女の子は、本当にイイ。
なんて言うと俺は変態扱いを受けるが、その辺も自覚しているつもりだ。だって可愛いものを可愛いと言って何が悪い。好きなものを愛でて何が悪い。そう、俺は思う。
俺が恋をしたのは、「桐竜 亜美」。可愛くて優しい。入学当初に隣の席になった。
「よろしくね。えっと、北原くん」
「う、ん。よろしく、桐竜、さん」
笑った顔は花のように美しくて。俺は一目で恋に落ちた。
それから暫くして、来が桐竜…さんと話しているのを見た。用事があっただけみたいだったが、すごく仲が良さそうに見えて。俺の心の奥で、じゅわりと何かが焦げていくようだった。そんな日がたまにあった。桐竜さん、はよくドアの近くにいるので伝言をよく頼まれる。たまに俺にも伝言してくれる。話せるのがたまらなく嬉しい。でも他の男と話しているのを見ると、喉の奥に何かがたまって、吐き出したらもう戻れない気がする。そんな黒いものが俺の中でぐるぐるしていた。
そんな中、俺は見てしまった。
黒い、どす黒いものが、俺の奥を焦がして飲み込んでいく。
なんだ、これ。
なぁに、これ。
俺の目が写したのは、強くも弱くもない雨が降る日のこと。女の子に傘を差し出す優しい男。微笑んで、女の子が濡れないよう傾けながら、自分の方が濡れるのも構わず二人で一つの傘を使う。そんな二人。
その二人は、来と桐竜…ううん、亜美だった。俺はその姿を見て、脈が脳を打つ感覚になった。体の奥底から汗が溢れ、目を離せない。痛くて仕方ない。何が、とは具体的にはわからないけれど、痛みがズキズキと走った。
しばらく経って、二人の姿が見えなくなって初めて目を伏せた。痛みは引かないけれど、目を離し階段を上がった。ドアを開け、人が減った教室の内に入る。
「あれ?帰らないの北原くん」
残っていた内の一人、稲森が俺に話しかけた。
「あぁ、ちょっと雨が強くなってきたから」
ぼそっと呟くように答える。稲森が不思議そうに首を傾げる。
「雨………じゃな…。こ……嵐の………」
「なんか言った?」
断片的に聞こえた「嵐」という言葉に反応する。すると稲森は顔だけこちらに向けて
「なんでもないよ」
と笑った。その目が、俺の澱みまで見通すようでドキッ…とした。
「…雨、強いね」
遠くで「またね」や「さようなら」と言っているのが聞こえなかった。稲森のその声だけが耳に響き渡った。朱色に輝く瞳が、まばたきするだけで心が掴まれるようだった。
「北原くん」
「っ…あ、何…?」
いつの間にか俺と稲森の二人っきりになっていた。そんな事にも気付けないくらい目の前に集中していた俺の真ん中を稲森は指差す。
「その心の嵐は、いつか去る。それまでに絶対に行動を起こさないで」
ふわっと白く儚く咲く花が現れた。ほぼ線対称のように重なる花弁が美しい花だった。
「その花はアネモネ。花言葉は、恋の苦しみ、真実…そして期待」
「…恋、の…」
「苦しくてもそれが真実。目を閉じて逸らしても意味は無い。だから最後まで信じて、期待して」
俺の心の奥がトクンと鳴った。そして、その言葉がストンっと落ちた。
俺は亜美が好きだった、と。
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