362 / 812
12月9日 朝
しおりを挟む
どうやら、あのまま眠ってしまっていたようだ。外は薄暗くなっている。携帯で時刻を確認すると、5時半過ぎを差していた。学校まではまだそこそこ時間がある。いつの間にか電気が消え、毛布が掛けられているので母親がやったのだろう。起き上がって近くにある全身鏡にふと目をやると、髪に結い跡のようなものが付いている。私の赤色の目が朱色がかったものに変化している気がする。ただの気のせいかもしれないが。
「…ゆ、め…」
何だか苦しい夢を見ていた気がする。最後に背中を押された感覚と言葉だけはぼんやりと覚えている。あれは誰の声だったのだろう。聞き覚えがあった気がする。それに、淡いオレンジ色の光。誰の色なんだろう。私は、何の夢を見ていたのだろう。
全てが曖昧に消えていく夢の出来事。私は覚醒に向かっていくごとに消えていく記憶を何故か大事にしたくて、適当な紙にメモを取る。
メモの内容に目を通すと何だか恥ずかしくなって、くしゃくしゃにして捨てた。
もう一度眠ろうと思ったが、意識が完全に覚醒してしまっていてベッドに戻っても目を閉じる気が起きない。
今日の授業は、何だっけ。
そんなことを考えながら携帯を見る。暇つぶしくらいにはなるだろう。いろんなサイトを巡って、膨大な情報を流し読みする。確か前に花火がやっていた行動だと聞いた。あれは夜寝付けなくてやる、ストレス過多の症状だった筈だ。私はただの暇つぶしなのでストレス過多の症状ではない、と思う。何かしらに無意識にストレスを感じているなら、あまり良くないな、とは思うが。
ぼんやりとネットの海を漂っていると、結構な時間が経っていたらしい。もうそろそろ1時間が経ちそうだった。
「…ちょっと早いけど、準備、するか…」
今日は水曜日。1週間の折り返し地点。体がだるいのはそのせいだろうと思って、何も考えずに一階に降りた。
「あら早いわね。珍しい。今日は槍?」
「失礼だよ…ちょっと目が覚めちゃったの」
確かに朝には弱いが、天気を変えるほどの珍しい出来事では無い。そう信じたい。お母さんは忙しなく働いて、朝の準備と家事を並行して進めている。
「そういえば夕音、昨日電気付けっ放しで寝てたでしょ。お母さんが起きたから良かったものの、電気代とか馬鹿にならないんだから気を付けなさいよ。疲れてるの?」
「反省してます。…そうなのかなぁ、何か自覚ないままに疲れてるのかな」
「今日は早く帰って来て休みなさい」
「はーい」
いつの間にか机の上に並べられた朝ご飯を食べる。私にしては珍しく食欲が湧かなくて、どうしても食べ切れなくて申し訳ないが少し残してしまった。
「…ゆ、め…」
何だか苦しい夢を見ていた気がする。最後に背中を押された感覚と言葉だけはぼんやりと覚えている。あれは誰の声だったのだろう。聞き覚えがあった気がする。それに、淡いオレンジ色の光。誰の色なんだろう。私は、何の夢を見ていたのだろう。
全てが曖昧に消えていく夢の出来事。私は覚醒に向かっていくごとに消えていく記憶を何故か大事にしたくて、適当な紙にメモを取る。
メモの内容に目を通すと何だか恥ずかしくなって、くしゃくしゃにして捨てた。
もう一度眠ろうと思ったが、意識が完全に覚醒してしまっていてベッドに戻っても目を閉じる気が起きない。
今日の授業は、何だっけ。
そんなことを考えながら携帯を見る。暇つぶしくらいにはなるだろう。いろんなサイトを巡って、膨大な情報を流し読みする。確か前に花火がやっていた行動だと聞いた。あれは夜寝付けなくてやる、ストレス過多の症状だった筈だ。私はただの暇つぶしなのでストレス過多の症状ではない、と思う。何かしらに無意識にストレスを感じているなら、あまり良くないな、とは思うが。
ぼんやりとネットの海を漂っていると、結構な時間が経っていたらしい。もうそろそろ1時間が経ちそうだった。
「…ちょっと早いけど、準備、するか…」
今日は水曜日。1週間の折り返し地点。体がだるいのはそのせいだろうと思って、何も考えずに一階に降りた。
「あら早いわね。珍しい。今日は槍?」
「失礼だよ…ちょっと目が覚めちゃったの」
確かに朝には弱いが、天気を変えるほどの珍しい出来事では無い。そう信じたい。お母さんは忙しなく働いて、朝の準備と家事を並行して進めている。
「そういえば夕音、昨日電気付けっ放しで寝てたでしょ。お母さんが起きたから良かったものの、電気代とか馬鹿にならないんだから気を付けなさいよ。疲れてるの?」
「反省してます。…そうなのかなぁ、何か自覚ないままに疲れてるのかな」
「今日は早く帰って来て休みなさい」
「はーい」
いつの間にか机の上に並べられた朝ご飯を食べる。私にしては珍しく食欲が湧かなくて、どうしても食べ切れなくて申し訳ないが少し残してしまった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
こじらせ男子は好きですか?
星名柚花
青春
「好きです」「すみません。二次元に彼女がいるので」
衝撃的な文句で女子の告白を断った逸話を持つ男子、天坂千影。
良家の子女が集う五桜学園の特待生・園田菜乃花は彼のことが気になっていた。
ある日、菜乃花は千影に土下座される。
毎週水曜日限定販売のカレーパンを買うために階段を駆け下りてきた彼と接触し、転落して利き手を捻挫したからだ。
利き腕が使えないと日常生活も不便だろうと、千影は怪我が治るまでメイド付きの特別豪華な学生寮、0号館で暮らさないかと提案してきて――?
春と夜とお風呂の帝国
吉野茉莉
青春
女の子が夜に散歩して出会った女の子と他愛もない話をする話です。(文庫本換算60Pほど)
ふんわりしつつやや不穏な感じの会話劇です。
全9話、完結まで毎日更新されます。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
それでも俺はあなたが好きです
水ノ瀬 あおい
青春
幼なじみの力也(リキ)から頼み込まれて啓南男子バスケ部のマネージャーになった吉井流星(ヨッシー)。
目に入ったのは睨むようにコートを見つめる女バスのマネージャー。
その姿はどこか自分と似ていると思った。
気になって目で追う日々。
だけど、そのマネージャーは男バスキャプテンのセイに片想いをしていた。
意外と不器用なヨッシーのバスケと恋愛。
C-LOVERS
佑佳
青春
前半は群像的ラブコメ調子のドタバタ劇。
後半に行くほど赤面不可避の恋愛ストーリーになっていきますので、その濃淡をご期待くださいますと嬉しいです。
(各話2700字平均)
♧あらすじ♧
キザでクールでスタイリッシュな道化師パフォーマー、YOSSY the CLOWN。
世界を笑顔で満たすという野望を果たすため、今日も世界の片隅でパフォーマンスを始める。
そんなYOSSY the CLOWNに憧れを抱くは、服部若菜という女性。
生まれてこのかた上手く笑えたことのない彼女は、たった一度だけ、YOSSY the CLOWNの芸でナチュラルに笑えたという。
「YOSSY the CLOWNに憧れてます、弟子にしてください!」
そうして頭を下げるも煙に巻かれ、なぜか古びた探偵事務所を紹介された服部若菜。
そこで出逢ったのは、胡散臭いタバコ臭いヒョロガリ探偵・柳田良二。
YOSSY the CLOWNに弟子入りする術を知っているとかなんだとか。
柳田探偵の傍で、服部若菜が得られるものは何か──?
一方YOSSY the CLOWNも、各所で運命的な出逢いをする。
彼らのキラリと光る才に惹かれ、そのうちに孤高を気取っていたYOSSY the CLOWNの心が柔和されていき──。
コンプレックスにまみれた六人の男女のヒューマンドラマ。
マイナスとマイナスを足してプラスに変えるは、YOSSY the CLOWNの魔法?!
いやいや、YOSSY the CLOWNのみならずかも?
恋愛も家族愛もクスッと笑いも絆や涙までてんこ盛り。
佑佳最愛の代表的物語、Returned U NOW!
翼も持たず生まれたから
千年砂漠
青春
中学三年生になったばかりの久保田奈緒は、塾帰りのある夜、古びた歩道橋の上で登校拒否児童で十一歳の白木星志に出会う。歩道橋の上から星空を眺めるのが好きだという実年齢より少し大人びた彼に惹かれた奈緒は、毎晩彼に会うために塾の帰りに歩道橋に立ち寄るようになった。
奈緒は誰にも言えなかった悩みを星志に打ち明け、更に彼と過す時間を大事にするようになったが、星志には奈緒にも打ち明けられない秘密があった。
お互いの孤独はお互いでしか埋められない二人。
大人には分かってもらえない、二人の心が辿り着ける場所は果たしてあるのか。
誰もが通る思春期の屈折の道に迷いながら進む彼らの透き通った魂をご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる