神様自学

天ノ谷 霙

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12月7日 相談事

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昼休みになってすぐに、ドアの付近で見たことのある影が揺れた。一つ下の学年の色をした上履きが覗く。私から見て左側に小さくシニヨンを作り、横髪を一房ずつ前で結んでいる女の子。毎回どうしてそんな髪型をしているんだろう、と不思議になる髪型をしているのは、古宮 菜古ちゃんだった。自分より十数センチ大きい先輩たちに怯えたような仕草を見せながら、教室の中を見渡して誰かを探しているような様子だった。
亜美かな?
私は気付いてしまったことも手伝って、放っておくことが出来ず立ち上がる。一緒に食べていた利羽が私の袖を引っ張って、じぃっと心配そうな顔を浮かべる。私は思わぬ可愛さについ笑ってしまった。
「大丈夫だよ。ドアのところに知ってる子がいるだけだから」
私がドアの付近を示すと、利羽は覗いている女の子を見つけて渋々手を引っ込めた。優しい良い子の利羽。ここまで心配してくれるとくすぐったい気持ちになる。私はドアの方を向いて歩き出す。菜古ちゃんは私の姿を見つけたようで、ぱぁっと顔を輝かせた。
「こんにちは。誰か呼ぶ?亜美?」
「こ、こんにちは…!あ、あの…稲森先輩に用事があって…!来ました…!」
「え、私?」
意外な名前が出てきて、私は目を丸くする。菜古ちゃんはぶんぶんと勢いよく首を縦に振る。
「あ、あの…えっと…」
チラチラと周りを気にしているようだったので、どうやらこの場では話せない内容のようだ。私は了承して、人気のないところへ一緒に行くよう誘う。何だかこの一文だけ見ると誤解を招きそうだが、多分何かしらの相談だろう。私が聞ける内容かは分からないが、わざわざ学年を超えて頼りに来てくれたということは、私に信頼ある相談内容なのだろう。私はむぅっと頬を膨らませる利羽達に身振り手振りだけで他のところに行くことを伝え、菜古ちゃんを前に連れて行った鍵の壊れた空き教室近くに向かった。

相変わらず人気の無い空き教室だ。何かしら有効活用すれば良いのに、と関係の無い思考を巡らせた後で、菜古ちゃんに向き合う。
「で、どうしたの?」
先程から何度も吃ってしまって、全然言いたいことが伝わってこない。勇気を出して来たは良いものの、緊張が勝ってしまう…といったところだろうか。どうしたものかと、あたりを見回す。窓の外で枯れ葉が上下に揺れるのが見えた。
「あ、あの…!」
「ん?」
私が再び菜古ちゃんと目線を合わせると、菜古ちゃんは意を決したように真剣な目をして、口を開いた。
「わ、私…!好きな人が出来たかもしれないんです…!」
予想外の言葉に、私は3回程まばたきをした。
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