神様自学

天ノ谷 霙

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修学旅行3 寂しい

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ホテルに着いてご飯を食べ、部屋に戻ると疲れきった様子でベッドに飛び込む霙が見えた。由芽もベッドに腰掛け、携帯を触りながらまぶたが落ちそうなのを我慢しているようだった。
「2人とも先にお風呂に入っちゃえば?私は後で大丈夫だから」
「あー…じゃあごめん、私また班長会議あるから先入るね」
「おー、いってらっしゃーい」
寝転がったまま、首だけを由芽に向けて送り出す霙。その後ごろんと仰向けになり、天井を仰いだ。
「ねー、夕音?」
「んー、何?」
荷物整理をしながら生返事をすると、霙は小さく震えた声で続けた。
「明日で、帰るんだよね。修学旅行は終わり、なんだよね」
「うん…そうだね」
その声色がいつもと違うのに気付いて、私は霙の方を見る。霙は相変わらず仰向けの姿勢で、でも顔は枕で隠して見せてくれなかった。
「…寂しいね」
私は霙の側に近寄り、呟く。霙は目だけを枕から出し、私を見た。その目は少し潤んでいて、眠いのか寂しいのか判断がつきにくかった。
声の調子から、多分後者だろうけど。
いつも元気で明るい霙が寂しそうだと、変な感じがする。修学旅行中に酸欠症状に苦しんでいる様子は見なかったが、上手く隠されていただけなのかもしれない。
「…寂しい」
「どうせあっちに戻ったら、また遊べるわよ」
霙が呟いた後に声が聞こえて、私と霙は驚く。そこには壁に寄りかかっている由芽がいた。髪先から垂れた雫が、肩にかけたタオルに落ちていく。
「修学旅行はもう終わるけど、大人になったらまた旅行にでも行けば良いんじゃない?卒業旅行とかでも良いけど。だからそんなに落ち込まないの」
「…由芽ぇ…」
由芽が霙が寝転がるベッドに腰掛けて、霙の頭を撫でる。由芽は慈しむような表情をしていた。
「…それじゃ、先にお風呂入るね」
私はそう呟いてその場を離れる。よく一緒に帰るくらいに仲が良い2人の間に、入れる気がしなかった。少しの疎外感と、由芽の珍しい表情に気付けた優越感。逆の感情が混ざり合って複雑な気持ちになる。
「…まぁ、別に、良いんだけど」
小さい頃からそうだったから、変わらない。「特別仲の良い友達」というのが存在しなかった私の人生で、今更悩んだって仕方ない。仕方ないんだ。多くの人と友達になれる性格で、羅樹がいたせいか男子と喋ることに抵抗のなかった私は、いつも同じ人といることが少なかった。2人組を作るときに困ることもあったけど、その場で誰かと組んだり、入れてもらうことが出来たからそんなに深刻な悩みとは考えていなかった。
"…貴方も、1人なの?"
「…え?」
耳ではないどこかから聞こえてくる声が、あたりに響いた。
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