神様自学

天ノ谷 霙

文字の大きさ
上 下
323 / 812

修学旅行3 着席

しおりを挟む
私が工房に入ると、テーブルの上に色とりどりのガラスが置かれているのが目に入った。他にも貝殻やサンゴのかけらがお皿の上に並んでいた。それを眺めて楽しんでいると、青海川先生のやる気のない声が聞こえてきた。
「よぉーっす。3組は人数的に4組と同じになるやつがいるんだけど、お前ら同じで良いかー?」
「あ、はい。大丈夫です」
「よし。それじゃ、あそこの机だ」
そう言って青海川先生が指した席には、羅樹がいて。どくんっと心臓が鳴るのが分かった。
「あ、夕音~!夕音もフォトフレームなの?一緒だね!」
私を見つけてにこにこと笑う羅樹に、私はすぐに声が出ない。もしかしたらこの修学旅行で初めて会ったかもしれない。いや最初に一緒に来たのを抜けばほぼ間違いなくそうなんだけど、久しぶりに会っただけでこんなにもいつも通りになれないものか、と内心自分を嘲笑う。心の準備をしておくべきだった。まぁでも、クラスが違うのに同じテーブルだとは思わないし、準備をしておけという方が無理な話だった。ぎゅっと手に力を込めて、緊張を誤魔化す。
「うん、同じテーブルになったよ」
「本当!?わーい」
子供みたいに嬉しそうにするのが眩しくて、思わず目を細めて笑う。私と羅樹のやり取りの間に、さりげなく羅樹の隣が私になっていた。慌てて周りを見ると隣に座る由芽にウインクされたので、多分確信犯だ。恥ずかしさと共に、心の中でお礼を言う。それが伝わったのかは分からないが、由芽はにこっと笑った。私の向かい側には紗奈が座り、その隣には竜夜くんが座った。霙は由芽の隣に座っているので、問題児コンビは斜め向かいに座ることになった。
「うわぁ…もうちょっと離れて座りなさいよ。問題児共」
「誰のこと!?」
「竜夜と霙以外いなくない?」
「「おい!」」
紗奈の言葉に、息ぴったりのツッコミを入れる2人。由芽も紗奈もどこか楽しそうで、このテーブルは騒がしくなりそうだ。
「榊原くんがいなかったら、竜夜が完全にハーレム状態だよね」
「いや、脅迫女と暴力女は女だと認めてなぃいったぁ!?」
ガッと鈍い音がして、机の下で何が起こったかは察した。由芽が霙を褒めているあたり、霙の蹴りが竜夜くんの足にヒットしたのだろう。元気だなぁ。
「…俺は彼女一筋だし…」
ボソッと呟いた竜夜くんの声は、私には届かなかった。その時、竜夜くんの隣に人影が見えた。
「ここ一つ空いてる?入っていい?」
「おー、いいぞ」
「こんなカオスな空間に入って大丈夫…って藤上なら大丈夫か」
「どういうこと!?」
竜夜くんの隣に藤上くんが座って、テーブルの席が全て埋まる。そして数分して、説明とフォトフレーム製作が始まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

鍵の海で踊る兎

裏耕記
青春
君の演奏を聴いたから、僕の人生は変わった。でもそれは嬉しい変化だった。 普通の高校生活。 始まりは予定通りだった。 ちょっとしたキッカケ。ちょっとした勇気。 ほんの些細なキッカケは僕の人生を変えていく。 どこにでもある出来事に偶然出会えた物語。 高一になってからピアノなんて。 自分の中から否定する声が聞こえる。 それを上回るくらいに挑戦したい気持ちが溢れている。 彼女の演奏を聴いてしまったから。 この衝動を無視することなんて出来るはずもなかった。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

この命が消えたとしても、きみの笑顔は忘れない

水瀬さら
青春
母を亡くし親戚の家で暮らす高校生の奈央は、友達も作らず孤独に過ごしていた。そんな奈央に「写真を撮らせてほしい」としつこく迫ってくる、クラスメイトの春輝。春輝を嫌っていた奈央だが、お互いを知っていくうちに惹かれはじめ、付き合うことになる。しかし突然、ふたりを引き裂く出来事が起きてしまい……。奈央は海にある祠の神様に祈り、奇跡を起こすが、それは悲しい別れのはじまりだった。 孤独な高校生たちの、夏休みが終わるまでの物語です。

ダイヤモンドの向日葵

水研歩澄
青春
 『女子高校野球は番狂わせが起こらない』  そう言われるようになってから、もう久しい。  女子プロ野球リーグは女子野球専用ボールの開発や新救助開設などに代表される大規模改革によって人気を博すようになっていた。  女子野球の人気拡大に伴って高校女子硬式野球部も年を追うごとに数を増やしていった。  かつては全国大会のみ開催されていた選手権大会も、出場校の増加に従い都道府県予選を設ける規模にまで成長した。  しかし、ある時その予選大会に決勝リーグ制が組み込まれたことで女子高校野球界のバランスが大きく傾くこととなった。  全4試合制のリーグ戦を勝ち抜くために名のある強豪校は投手によって自在に打線を組み換え、細かな投手継投を用いて相手の打線を煙に巻く。  ほとんどの強豪校が同じような戦略を採用するようになった結果、厳しいリーグ戦を勝ち上がるのはいつだって分厚い戦力と名のある指揮官を要する強豪校ばかりとなってしまった。  毎年のように変わらぬ面子が顔を揃える様を揶揄して、人々は女子高校野球全国予選大会をこう呼ぶようになった。  ────『キセキの死んだ大会』と。

幼なじみと同棲生活、始めました。

もちぃ
青春
ちょっぴり甘い、たっぷりコメディーの同棲生活 一人暮らし大学生の佐井寺陽斗の元に訪れたのは幼少時代の幼なじみ、梨本樹里だった。スーツケースを手に居候をお願いしてくる彼女に、陽斗は笑顔でこう言うのだった。 「こめん、無理!」 この作品は小説家になろう様、カクヨム様でも投稿しております。

フェイタリズム

倉木元貴
青春
主人公中田大智は、重度のコミュ障なのだが、ある出来事がきっかけで偶然にも学年一の美少女山河内碧と出会ってしまう。そんなことに運命を感じながらも彼女と接していくうちに、‘自分の彼女には似合わない’そう思うようになってしまっていた。そんなある時、同じクラスの如月歌恋からその恋愛を手伝うと言われ、半信半疑ではあるものの如月歌恋と同盟を結んでしまう。その如月歌恋にあの手この手で振り回されながらも中田大智は進展できずにいた。 そんな奥手でコミュ障な中田大智の恋愛模様を描いた作品です。

処理中です...