神様自学

修学旅行2 シュノーケリング

ある程度のやり方と注意を聞き、いよいよ海に入る。今日は11月29日。普通なら海なんて入ったら凍えてしまうはずだった。しかし沖縄は私達が普段住んでいるところよりも暖かく、むしろ暑いくらいだった。そうっと足先を海に入れる。冷んやりして気持ち良い水の感触が、私の足を覆った。霙もある程度落ち着きながら、水の中に入る。
「気持ち良い…」
霙は至福の表情を浮かべ、海にたゆたう。私も全身を水につけ、気持ち良さを全身で味わう。寄せては返す波が、少し体への刺激となる。それもまた心地良くて、ずっとここにいられそうだ。
「夕音～、あたし達も混ぜて～」
「亜美！良いよー」
亜美と爽が海の中へ入る。冷たさに驚いていたようだが、やがて心地良さそうな幸せそうな表情に変わる亜美。爽は厳しい表情をしている。
「爽？どうしたの？」
「…っ…なんでもない…」
爽は見るからに動揺している。さっきのバスの中といい、私が何かしてしまったのだろうか。不安に駆られていると、それをぶち壊す呑気な声が聞こえた。
「…っふはぁっ！すっごい綺麗だよ！ほらほら見た？潜った？早く見なきゃ損だよ～！！」
マスクを外しながら、波に上下に揺れる霙。明るい声と態度に思わず笑ってしまった。
「そうだね、シュノーケリングしに来たんだもんね。よーし、私も潜るぞー！」
私はそう宣言して、マスクを装着した。手間取っていると霙がそっと手伝ってくれて、潜る準備が完了する。亜美たちも準備をしていたが「先潜って良いよ」と言われたので、遠慮せずに潜ることにする。
水中に顔を付けて潜る。ある程度の深さまで潜ったところで、目の前に広がる光景に圧倒された。色とりどりの魚が優美に泳ぐ姿。海底で揺れる海藻。上を見れば差し込む光が海全体を照らして、きらきらと輝いていた。水中なので喋る事も出来ず、でも感動を伝えたい。でもまだ水面に上がるには早い。私はそっと側にいる霙の手を掴んで、少しばたばたと動いてみた。それで霙には伝わったのか、にこっと笑ってくれた。私は再度海全体に目を向ける。どこまでも広がっていて終わりの見えない海の世界。光が優しく照らし出して、太陽の恵みを受けているようだ。
少し遅れて亜美と爽が潜ったようだ。白い泡と二人の姿が視界に入る。目を開けた二人は、その景色に目を見開いた。多分、海に潜ってすぐは皆同じ感想を持つのではないだろうか。顔を見合わせて、ばたばたと手を動かして抑えきれない衝動を伝えようとする。それは楽しい一時。
私は少し水中で泳ぐことにした。