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修学旅行4 帰宅
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今、北原くんは、何て──。
好き、という単語が聞こえた気がした。雑踏に紛れて聞き間違いした可能性もあるのに、何故か私の中で確信を帯びていく北原くんの言葉。周りを歩く人のペースが、やけに遅く感じた。うるさいはずの群衆の声も、何も耳に入ってこない。私の五感は、北原くんに掴まれた腕の触覚と、"好き"と言われた聴覚に支配されていた。普段表情の機微が分かりにくい北原くんの耳がうっすらと赤く染まっている。
「修学旅行中に、言おうと思ったんだ。それじゃ、気を付けて帰れよ」
北原くんは私から手を離した。優しく微笑んで、何も言えない私をそのままに、人混みの中に消えてしまった。
座り込んでしまいたい衝動を抑えながら、気付いたら帰りの電車に一人で乗っていた。
ガタンゴトンと一人揺られ、1時間半。ぼーっとしてしまって何も考えられない。お腹が空いているはずなのに、食欲がない。考え事で頭がいっぱいになって、あっという間に時間は過ぎていった。
家に帰ってすぐに自室に篭った。ベッドに疲れた体を預け、枕に顔を埋める。
北原くんが、私を好き。
どうして?いつから?どこが?
たくさんの疑問が溢れてくる。それでも、自分の納得のいく解答は浮かばなかった。
返事をしなくてはいけない。そんなことは分かっているのだが、どうしても考えがまとまらない。好かれていた嬉しさよりも、驚きや戸惑いが大きい。
「振り替え休日で良かったなぁ…」
ぽつりと呟いた。どんな顔で北原くんに会えばいいか分からない。返事もどうすればいいか分からない。その考える時間がある、と安堵のため息をついた。
耳と頭の中を反響する、北原くんの言葉。表情。熱を帯びた手。私も北原くんに好意を持っているけれど、それは恋愛感情じゃないと思う。優しい人だな、とは思っていたけれど、友達以上として見たことはなかった。異性間で友情は成り立たないというけれど、私にとって羅樹以外の男子は友達にしか思えない。羅樹が、私は好きなんだ。ずっと、そう思っていたのだけど。今もそう思っているのだけれど、本当に?本当に私は羅樹が好きなのだろうか。
好きって、一体何なのだろうか。
考えがまとまらない。それどころか自分の気持ちすら疑って、何が何だか分からなくなっていく。ぐるぐると頭の中を回る言葉が、感情が、私を疲弊させていく。気付いたら私は、溶けるように、飲み込まれるように、重くなったまぶたに身を任せ、睡眠に落ちた。
好き、という単語が聞こえた気がした。雑踏に紛れて聞き間違いした可能性もあるのに、何故か私の中で確信を帯びていく北原くんの言葉。周りを歩く人のペースが、やけに遅く感じた。うるさいはずの群衆の声も、何も耳に入ってこない。私の五感は、北原くんに掴まれた腕の触覚と、"好き"と言われた聴覚に支配されていた。普段表情の機微が分かりにくい北原くんの耳がうっすらと赤く染まっている。
「修学旅行中に、言おうと思ったんだ。それじゃ、気を付けて帰れよ」
北原くんは私から手を離した。優しく微笑んで、何も言えない私をそのままに、人混みの中に消えてしまった。
座り込んでしまいたい衝動を抑えながら、気付いたら帰りの電車に一人で乗っていた。
ガタンゴトンと一人揺られ、1時間半。ぼーっとしてしまって何も考えられない。お腹が空いているはずなのに、食欲がない。考え事で頭がいっぱいになって、あっという間に時間は過ぎていった。
家に帰ってすぐに自室に篭った。ベッドに疲れた体を預け、枕に顔を埋める。
北原くんが、私を好き。
どうして?いつから?どこが?
たくさんの疑問が溢れてくる。それでも、自分の納得のいく解答は浮かばなかった。
返事をしなくてはいけない。そんなことは分かっているのだが、どうしても考えがまとまらない。好かれていた嬉しさよりも、驚きや戸惑いが大きい。
「振り替え休日で良かったなぁ…」
ぽつりと呟いた。どんな顔で北原くんに会えばいいか分からない。返事もどうすればいいか分からない。その考える時間がある、と安堵のため息をついた。
耳と頭の中を反響する、北原くんの言葉。表情。熱を帯びた手。私も北原くんに好意を持っているけれど、それは恋愛感情じゃないと思う。優しい人だな、とは思っていたけれど、友達以上として見たことはなかった。異性間で友情は成り立たないというけれど、私にとって羅樹以外の男子は友達にしか思えない。羅樹が、私は好きなんだ。ずっと、そう思っていたのだけど。今もそう思っているのだけれど、本当に?本当に私は羅樹が好きなのだろうか。
好きって、一体何なのだろうか。
考えがまとまらない。それどころか自分の気持ちすら疑って、何が何だか分からなくなっていく。ぐるぐると頭の中を回る言葉が、感情が、私を疲弊させていく。気付いたら私は、溶けるように、飲み込まれるように、重くなったまぶたに身を任せ、睡眠に落ちた。
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