神様自学

天ノ谷 霙

文字の大きさ
上 下
289 / 812

11月23日 重い空気

しおりを挟む
花火のけじめが付き、嫌がらせも減ったという話を聞いた。扇様が「好きな人の好きな人に嫌がらせしたら、好きな人にバレるし嫌われるわよ」と言ったらしい。その中でも、どうせもう手に入らないなら悪印象でも良いから覚えていて欲しい、という歪んだ愛で花火に嫌がらせをする人もいるらしい。ただ、前より酷いものは無いので余裕で耐えられる、と花火は笑っていた。無理している笑顔ではなく、恋人となった片倉さんと会うことが嫌がらせへの恐怖に勝っているようだった。
良かった。やっと解決した。そう思って朝教室の扉を開けた瞬間、中の重い空気に目眩がした。
「…どうしたの?」
教室の隅で立っている由芽に話しかけると、由芽が珍しく困った顔をした。
「…喧嘩したみたい、なのよね」
主語のない言葉に、私は首をかしげる。教室中を見回して、ようやく重い空気を作り出している2人を見つけた。
「霙と、…雪くん?」
「…正解」
由芽は溜め息をついて、腕を組んだ。
「理由は知らないけど、霙が雪にキレたっぽいんだよね。普段仲良い分、雪はショックで立ち直れそうにないし、霙は徹底的に雪を無視してるし。で、雪にとって何がキツイって、霙、富とは普通に話すのよね。雪は相当ショックだと思うよ」
「えぇ…どうしようもない感じなんだね…?」
「うん。霙のがまだマシかな。雪以外には普通だし。でも、あの愚痴り魔が愚痴らないあたり、相当霙怒ってるよ。って竜夜が言ってた」
霙は喜怒哀楽が激しい。話すとスッキリするらしく、よく嫌なことを誰かに話している印象がある。
霙の怒りは相当だと判断したのが竜夜くんなら、不思議と信用出来る。普段霙を1番怒らせている男なだけあり、過去に経験済みなのだろう。
「朝は紗奈と来たらしいよ。紗奈もあそこまで怒ってる霙は初めて見たって、お手上げみたい」
「そっかぁ…」
「雪から問い質そうにも、ショック死しそうな勢いだから聞けないし。月曜の朝から空気が重いし。来週修学旅行なのに、大丈夫なのかな」
そういえば今日は23日。丁度修学旅行1週間前だった。
「とりあえず、今日は様子見ながらかな。余計なこと言うと、霙の怒りの矛先がこっちに来そうだしね」
由芽の意見を採用して、私はこっそり見守ることにした。恋愛のごたごたなら、私の心に伝わってくるはずだけど、霙からは何も伝わって来ない。黒くて暗い何かに塗り潰されているように、何も見えない。
雪くんに対しての怒りなら、恋愛絡みだと思うんだけどなぁ。
そう思いながら、私は席に着いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自己中女神のお陰で何度も死に戻りしてる俺

木嶋うめ香
ファンタジー
自称神だという女は自分のミスの償いに、異世界転生なんてふざけた事をしてくれた。 死にたくても死ねない。 死んでもすぐにこの世界に戻される。 俺はなにもしたくない。 もう眠りたいんだよ。 俺の気持ちを無視して、あの女はまた俺を生き返らせるのだ。 三年間この世界で生きたら、今度こそ永遠の眠りについてやる。 そんな思いを持ちながら、俺は盗賊から助けたキョーナと共に旅を始めた。 他サイトでかなり昔に執筆していた作品です。

ずっと一緒にいようね

仏白目
恋愛
あるいつもと同じ朝 おれは朝食のパンをかじりながらスマホでニュースの記事に目をとおしてた 「ねえ 生まれ変わっても私と結婚する?」 「ああ もちろんだよ」 「ふふっ 正直に言っていいんだよ?」 「えっ、まぁなぁ 同じ事繰り返すのもなんだし・・   次は別のひとがいいかも  お前もそうだろ? なぁ?」 言いながらスマホの画面から視線を妻に向けると   「・・・・・」 失意の顔をした 妻と目が合った 「え・・・?」 「・・・・  」 *作者ご都合主義の世界観のフィクションです。

沈黙のメダリスト

友清 井吹
青春
淳一は、神戸の下町で生まれ育った。父は震災で亡くなり、再婚した母も十五才の時、病気で喪う。義父は新たに再婚したので、高校から一人暮らしを余儀なくされる。水泳部で記録を伸ばし、駅伝にも出場して好タイムで走り注目される。  高二の時、生活費が途絶え、バイトをしながら学校に通う。担任の吉見から励まされながら防衛大を目指すが合格できず、奮起して国立の六甲大文学部に入学する。 大学では陸上競技部に入部し、長距離選手として頭角を現す。足を痛めて病院に行き、医師の次女、由佳と出会う。彼女は聾学校三年で同級生からの暴行事件で心を閉ざしていたが、淳一と知り合い、彼の走りを支えることで立ち直る。  淳一は、ロンドン五輪に出たいと由佳に打ち明け、神戸マラソンで二位、びわ湖毎日マラソンでは日本人一位になり五輪出場の夢を果たす。由佳にメダルを渡したいという一心で、二位入賞を果たす。帰国した夜、初めて淳一と由佳は結ばれる。 夢はかなったが、手話能力や生活環境の違いで二人の溝が露わになってくる。由佳は看護学校をやめてアメリカで学ぶ夢を持ち、淳一は仕方なく了承する。渡米してまもなく由佳は、現地の学生と関係を持ち妊娠してしまう。淳一は由佳の両親から経緯を知らされ自暴自棄になるが、高校の吉見から水泳部で淳一に思いを寄せていたみどりを紹介される。彼女のサポートを受け、再び陸上の世界に復帰する。 四回生の七月、かつて由佳が応援してくれた競技場で、五千mを走り、日本新記録を達成する。淳一は由佳の記憶を留め、次の目標に向かうことを決意する。

私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。 【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】 地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。 同じ状況の少女と共に。 そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!? 怯える少女と睨みつける私。 オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。 だったら『勝手にする』から放っておいて! 同時公開 ☆カクヨム さん ✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉 タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。 そして番外編もはじめました。 相変わらず不定期です。 皆さんのおかげです。 本当にありがとうございます🙇💕 これからもよろしくお願いします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】ソフィーの新婚生活

五色ひわ
恋愛
お嬢様育ちのソフィーが旦那様ライの役に立ちたくて奮闘するお話。 騎士団に勤めるライには困っていることがあるようで…。 (アルファポリス版)全12話です。

BUZZER OF YOUTH

Satoshi
青春
BUZZER OF YOUTH 略してBOY この物語はバスケットボール、主に高校~大学バスケを扱います。 主人公である北条 涼真は中学で名を馳せたプレイヤー。彼とその仲間とが高校に入学して高校バスケに青春を捧ぐ様を描いていきます。 実は、小説を書くのはこれが初めてで、そして最後になってしまうかもしれませんが 拙いながらも頑張って更新します。 最初は高校バスケを、欲をいえばやがて話の中心にいる彼らが大学、その先まで書けたらいいなと思っております。 長編になると思いますが、最後までお付き合いいただければこれに勝る喜びはありません。 コメントなどもお待ちしておりますが、あくまで自己満足で書いているものなので他の方などが不快になるようなコメントはご遠慮願います。 応援コメント、「こうした方が…」という要望は大歓迎です。 ※この作品はフィクションです。実際の人物、団体などには、名前のモデルこそ(遊び心程度では)あれど関係はございません。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...