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11月23日 重い空気
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花火のけじめが付き、嫌がらせも減ったという話を聞いた。扇様が「好きな人の好きな人に嫌がらせしたら、好きな人にバレるし嫌われるわよ」と言ったらしい。その中でも、どうせもう手に入らないなら悪印象でも良いから覚えていて欲しい、という歪んだ愛で花火に嫌がらせをする人もいるらしい。ただ、前より酷いものは無いので余裕で耐えられる、と花火は笑っていた。無理している笑顔ではなく、恋人となった片倉さんと会うことが嫌がらせへの恐怖に勝っているようだった。
良かった。やっと解決した。そう思って朝教室の扉を開けた瞬間、中の重い空気に目眩がした。
「…どうしたの?」
教室の隅で立っている由芽に話しかけると、由芽が珍しく困った顔をした。
「…喧嘩したみたい、なのよね」
主語のない言葉に、私は首を傾げる。教室中を見回して、ようやく重い空気を作り出している2人を見つけた。
「霙と、…雪くん?」
「…正解」
由芽は溜め息をついて、腕を組んだ。
「理由は知らないけど、霙が雪にキレたっぽいんだよね。普段仲良い分、雪はショックで立ち直れそうにないし、霙は徹底的に雪を無視してるし。で、雪にとって何がキツイって、霙、富とは普通に話すのよね。雪は相当ショックだと思うよ」
「えぇ…どうしようもない感じなんだね…?」
「うん。霙のがまだマシかな。雪以外には普通だし。でも、あの愚痴り魔が愚痴らないあたり、相当霙怒ってるよ。って竜夜が言ってた」
霙は喜怒哀楽が激しい。話すとスッキリするらしく、よく嫌なことを誰かに話している印象がある。
霙の怒りは相当だと判断したのが竜夜くんなら、不思議と信用出来る。普段霙を1番怒らせている男なだけあり、過去に経験済みなのだろう。
「朝は紗奈と来たらしいよ。紗奈もあそこまで怒ってる霙は初めて見たって、お手上げみたい」
「そっかぁ…」
「雪から問い質そうにも、ショック死しそうな勢いだから聞けないし。月曜の朝から空気が重いし。来週修学旅行なのに、大丈夫なのかな」
そういえば今日は23日。丁度修学旅行1週間前だった。
「とりあえず、今日は様子見ながらかな。余計なこと言うと、霙の怒りの矛先がこっちに来そうだしね」
由芽の意見を採用して、私はこっそり見守ることにした。恋愛のごたごたなら、私の心に伝わってくるはずだけど、霙からは何も伝わって来ない。黒くて暗い何かに塗り潰されているように、何も見えない。
雪くんに対しての怒りなら、恋愛絡みだと思うんだけどなぁ。
そう思いながら、私は席に着いた。
良かった。やっと解決した。そう思って朝教室の扉を開けた瞬間、中の重い空気に目眩がした。
「…どうしたの?」
教室の隅で立っている由芽に話しかけると、由芽が珍しく困った顔をした。
「…喧嘩したみたい、なのよね」
主語のない言葉に、私は首を傾げる。教室中を見回して、ようやく重い空気を作り出している2人を見つけた。
「霙と、…雪くん?」
「…正解」
由芽は溜め息をついて、腕を組んだ。
「理由は知らないけど、霙が雪にキレたっぽいんだよね。普段仲良い分、雪はショックで立ち直れそうにないし、霙は徹底的に雪を無視してるし。で、雪にとって何がキツイって、霙、富とは普通に話すのよね。雪は相当ショックだと思うよ」
「えぇ…どうしようもない感じなんだね…?」
「うん。霙のがまだマシかな。雪以外には普通だし。でも、あの愚痴り魔が愚痴らないあたり、相当霙怒ってるよ。って竜夜が言ってた」
霙は喜怒哀楽が激しい。話すとスッキリするらしく、よく嫌なことを誰かに話している印象がある。
霙の怒りは相当だと判断したのが竜夜くんなら、不思議と信用出来る。普段霙を1番怒らせている男なだけあり、過去に経験済みなのだろう。
「朝は紗奈と来たらしいよ。紗奈もあそこまで怒ってる霙は初めて見たって、お手上げみたい」
「そっかぁ…」
「雪から問い質そうにも、ショック死しそうな勢いだから聞けないし。月曜の朝から空気が重いし。来週修学旅行なのに、大丈夫なのかな」
そういえば今日は23日。丁度修学旅行1週間前だった。
「とりあえず、今日は様子見ながらかな。余計なこと言うと、霙の怒りの矛先がこっちに来そうだしね」
由芽の意見を採用して、私はこっそり見守ることにした。恋愛のごたごたなら、私の心に伝わってくるはずだけど、霙からは何も伝わって来ない。黒くて暗い何かに塗り潰されているように、何も見えない。
雪くんに対しての怒りなら、恋愛絡みだと思うんだけどなぁ。
そう思いながら、私は席に着いた。
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