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11月14日 犯人へ問う
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何も言えなかった。口を開こうにも、片倉さんの気迫に圧倒されて何も言えなかった。扇様も戸惑っていたが、花火が片倉さんに抱えられているのを見つけ、階段を駆け下りていった。
「花火、花火!!大丈夫!?」
「平気です、お嬢様…片倉くんのおかげで…」
ちらっと片倉さんの様子を見て、慌てて目を逸らす花火。その後ハッと気付いて離れようとするが、片倉さんはそれに気付かずにこちらを睨みつけている。
「…あの…違うの…」
花火の隣にいたメイドの女性は、震えながら口元を隠す。目が泳ぎ、落ち着かない様子である。
私はその様子を見て、花火の怪我や倒れた時のことなどが思い浮かんで、無意識に口を動かしていた。
「…花火の荷物にカッターの刃を入れたのは貴方ですか」
「…!夕音…!?」
花火の慌てる声が聞こえる。私の方に意識を集中させているせいか、動揺して気が緩んだのが、怪我した手が扇様の目に映る。片倉さんもそれに気付き、目を見開いて驚きを表情に表す。
「…キースさんが片倉さんに懐いたタイミングで入れ始めましたよね」
「えっ…」
キースさんが静かに動揺する。私はそれに構うことが出来ず、私の意思に関係なく、勝手に言葉が紡がれる。私は震えて動かない女性に近寄り、耳元で囁いた。
「…片倉さんが、他の女性に恋情を抱いているのがそんなに悔しかった?分かりやすくて、なのに本人は鈍感で、それが許せなかった?」
「…っ…」
「そんな中キースさんが来て、彼女に罪をなすりつけて花火を傷付けようとしたの?」
私が推理したわけではないのに、何故かそんな推測が私の口から溢れ出る。怖いくらいにするすると、第三者の視点から語られる。
私は彼女の耳元から唇を離して、じっと彼女の瞳を見つめた。そのタイミングで、体がやっと私の意思に従うようになった。さっきまで、別の人に体を乗っ取られていたみたいだ。
「…違うの…違うのよ…っ!」
膝から崩れ落ちてしゃがみこむ女性。
「あの…」
「この方は私がメイド長さんの元へ連れて行きます。夕音さんは、花火さんをお願いします」
キースさんがそっと呟く。私は先程までの気迫を失い、キースさんの意思に従うしかなかった。
キースさんが女性を連れてその場を去るのを見て、私は花火の元へ駆け寄った。花火はやっと片倉さんから解放されて、恥ずかしさからか頬を赤らめていた。
「…花火さん、その怪我は…」
「やめなさい作夜」
片倉さんがそう聞こうとするのを扇様が制する。
「客人にこんなところ見せて申し訳ないわ。作夜、花火、貴方達がちゃんとけじめをつけないからこうなるのよ。しっかりしなさい」
流石お嬢様、といったところか。付き人への指示に威厳がある。
「…は、はい…?」
花火は首を傾げていたが、片倉さんは視線を落として静かに頷いた。
「花火、花火!!大丈夫!?」
「平気です、お嬢様…片倉くんのおかげで…」
ちらっと片倉さんの様子を見て、慌てて目を逸らす花火。その後ハッと気付いて離れようとするが、片倉さんはそれに気付かずにこちらを睨みつけている。
「…あの…違うの…」
花火の隣にいたメイドの女性は、震えながら口元を隠す。目が泳ぎ、落ち着かない様子である。
私はその様子を見て、花火の怪我や倒れた時のことなどが思い浮かんで、無意識に口を動かしていた。
「…花火の荷物にカッターの刃を入れたのは貴方ですか」
「…!夕音…!?」
花火の慌てる声が聞こえる。私の方に意識を集中させているせいか、動揺して気が緩んだのが、怪我した手が扇様の目に映る。片倉さんもそれに気付き、目を見開いて驚きを表情に表す。
「…キースさんが片倉さんに懐いたタイミングで入れ始めましたよね」
「えっ…」
キースさんが静かに動揺する。私はそれに構うことが出来ず、私の意思に関係なく、勝手に言葉が紡がれる。私は震えて動かない女性に近寄り、耳元で囁いた。
「…片倉さんが、他の女性に恋情を抱いているのがそんなに悔しかった?分かりやすくて、なのに本人は鈍感で、それが許せなかった?」
「…っ…」
「そんな中キースさんが来て、彼女に罪をなすりつけて花火を傷付けようとしたの?」
私が推理したわけではないのに、何故かそんな推測が私の口から溢れ出る。怖いくらいにするすると、第三者の視点から語られる。
私は彼女の耳元から唇を離して、じっと彼女の瞳を見つめた。そのタイミングで、体がやっと私の意思に従うようになった。さっきまで、別の人に体を乗っ取られていたみたいだ。
「…違うの…違うのよ…っ!」
膝から崩れ落ちてしゃがみこむ女性。
「あの…」
「この方は私がメイド長さんの元へ連れて行きます。夕音さんは、花火さんをお願いします」
キースさんがそっと呟く。私は先程までの気迫を失い、キースさんの意思に従うしかなかった。
キースさんが女性を連れてその場を去るのを見て、私は花火の元へ駆け寄った。花火はやっと片倉さんから解放されて、恥ずかしさからか頬を赤らめていた。
「…花火さん、その怪我は…」
「やめなさい作夜」
片倉さんがそう聞こうとするのを扇様が制する。
「客人にこんなところ見せて申し訳ないわ。作夜、花火、貴方達がちゃんとけじめをつけないからこうなるのよ。しっかりしなさい」
流石お嬢様、といったところか。付き人への指示に威厳がある。
「…は、はい…?」
花火は首を傾げていたが、片倉さんは視線を落として静かに頷いた。
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