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10月27日 調べた文献
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「はぁ…」
溜め息をついているのは花火。久しぶりに花火の姿を見た気がするのは、花火が1週間、仕事の方で学校を休んでいたからだろう。
「おはよう花火、どうしたの?」
「おはよう夕音。えーっと…ちょっと、ね…」
疲れた笑いを浮かべる花火。よく見ると青っぽい隈も出来ている。
「…仕事の方?」
「仕事…なのかしら…」
遠い目をして、悲しそうに目尻を下げる。
「…9月にさ…深沙ちゃんと青海川くんと扇様が会った時…色々あったじゃない?」
説明するのが難しいことが、確かにあった。私もその場にいたので、言いたいことは大体わかる。
「あの後、奥様や旦那様、長年働いていらっしゃる方に話を聞いたの。そしたら古い文献を見せてくださってね、そしたら…見つけたの。大火事で亡くなった女性の話」
「大火事…」
「年までは分からなかったのだけど…相当昔。名前の読みは分からなかったけれど、難しい字で…その女性の最も近しい護衛の名前が"舞茶"だったわ」
「舞茶…!深沙ちゃんの…」
花火は頷く。
「…突飛押しもない、ただの想像に過ぎないけれど…その時の先祖返りなのかもしれないわね。あの3人は」
「…そうかもしれないね。そう考えるのが、一番自然かも」
花火はびっくりしたような顔で私を見つめる。
「笑わないの?」
私は答える代わりに微笑んだ。私の表情で理解したのか、花火も微笑んで話を続けた。
「私、もうあそこで働き始めて…7年くらいかしら…になるのだけど、昔から扇様は、火と熱いものが駄目なのよね。理由は分からないらしいのだけど…」
「理由なく怖いものは前世の死因って言うし…」
「うん、それに随筆も残っていたの。あまり有名な方ではなかったのか、わざとお嬢様の家系が隠していたのかは分からないけれど…あの時、青海川くんが詠んだ句が文字として残ってたわ…ここまで証拠が揃うと、私も信じるしか…」
「…ねぇ花火、私の話も聞いてくれる?」
「…?うん…?」
「私、3人が会った後倒れたじゃない?あの時、夢を見たの。最初の場面は、暗闇の中で燃え盛る炎。叫ぶ少女。場面が変わって、畳の上に四肢を投げ出す女性」
「…それって…」
「うん、深沙と扇様の話に似てるの。私は、2人の前世…花火が見た文献の話が、夢に出てきたのかなって思ったの。現実にあった話が」
花火は目をぱちくりと瞬き、私の目をまっすぐ見つめた。
「私の方が突飛押しもない話でしょ?でも、今までの話も合わせるとあり得そうでしょ」
私は笑顔で言った。花火もふっと笑って、肩の力が抜けたようだった。
「ねぇ夕音?」
「何?」
「…ありがとう」
「何もしてないよ」
「ううん…ありがと」
「…どういたしまして」
窓の外で、木の葉がさらさらと揺れる音がした。
溜め息をついているのは花火。久しぶりに花火の姿を見た気がするのは、花火が1週間、仕事の方で学校を休んでいたからだろう。
「おはよう花火、どうしたの?」
「おはよう夕音。えーっと…ちょっと、ね…」
疲れた笑いを浮かべる花火。よく見ると青っぽい隈も出来ている。
「…仕事の方?」
「仕事…なのかしら…」
遠い目をして、悲しそうに目尻を下げる。
「…9月にさ…深沙ちゃんと青海川くんと扇様が会った時…色々あったじゃない?」
説明するのが難しいことが、確かにあった。私もその場にいたので、言いたいことは大体わかる。
「あの後、奥様や旦那様、長年働いていらっしゃる方に話を聞いたの。そしたら古い文献を見せてくださってね、そしたら…見つけたの。大火事で亡くなった女性の話」
「大火事…」
「年までは分からなかったのだけど…相当昔。名前の読みは分からなかったけれど、難しい字で…その女性の最も近しい護衛の名前が"舞茶"だったわ」
「舞茶…!深沙ちゃんの…」
花火は頷く。
「…突飛押しもない、ただの想像に過ぎないけれど…その時の先祖返りなのかもしれないわね。あの3人は」
「…そうかもしれないね。そう考えるのが、一番自然かも」
花火はびっくりしたような顔で私を見つめる。
「笑わないの?」
私は答える代わりに微笑んだ。私の表情で理解したのか、花火も微笑んで話を続けた。
「私、もうあそこで働き始めて…7年くらいかしら…になるのだけど、昔から扇様は、火と熱いものが駄目なのよね。理由は分からないらしいのだけど…」
「理由なく怖いものは前世の死因って言うし…」
「うん、それに随筆も残っていたの。あまり有名な方ではなかったのか、わざとお嬢様の家系が隠していたのかは分からないけれど…あの時、青海川くんが詠んだ句が文字として残ってたわ…ここまで証拠が揃うと、私も信じるしか…」
「…ねぇ花火、私の話も聞いてくれる?」
「…?うん…?」
「私、3人が会った後倒れたじゃない?あの時、夢を見たの。最初の場面は、暗闇の中で燃え盛る炎。叫ぶ少女。場面が変わって、畳の上に四肢を投げ出す女性」
「…それって…」
「うん、深沙と扇様の話に似てるの。私は、2人の前世…花火が見た文献の話が、夢に出てきたのかなって思ったの。現実にあった話が」
花火は目をぱちくりと瞬き、私の目をまっすぐ見つめた。
「私の方が突飛押しもない話でしょ?でも、今までの話も合わせるとあり得そうでしょ」
私は笑顔で言った。花火もふっと笑って、肩の力が抜けたようだった。
「ねぇ夕音?」
「何?」
「…ありがとう」
「何もしてないよ」
「ううん…ありがと」
「…どういたしまして」
窓の外で、木の葉がさらさらと揺れる音がした。
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