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10月19日 先輩の好きなところ
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※同性愛的描写があります。苦手な方はご注意下さい。
菜古ちゃんは震えながらその場にしゃがみ込んだ。人気のない廊下に、菜古ちゃんのしゃくりあげる音だけが響く。拭っても拭ってもとめどなく溢れ落ちる涙。私もしゃがんで、まっすぐ菜古ちゃんを見つめる。
「…っせん、ぱ…っ…亜美、先輩…っ」
嗚咽混じりの涙声の中に、途切れ途切れに亜美の名前を呼ぶ声。不安定な心の声と共に、どれだけ亜美のことを想っているかが伝わってくる。痛いくらいに想って、届かなくて。その届かない理由が「同性の後輩だから」だということには、薄々気付いているようで。亜美は元々鈍感気味である。あんなにも男子に好意を向けられているのに、気付かないくらいには。分かりやすい北原くんの恋心にも気付いていなかったようだったし。そもそも恋愛感情というものをあまり理解していないように見えた。亜美は1年生の時からモテモテで、噂にもなっていたのに誰とも付き合っておらず、一時期同性愛者かと疑われている時もあった。学年でトップクラスの有名人で、初めて同じクラスになったのに亜美のことはある程度知っていた。そのくらい有名だったのだ。そんな優しくて、可愛い彼女と関われば、女でも惹かれてしまうのは無理はないのかもしれない。
「…私…は…」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を、未だに拭い続ける菜古ちゃんにハンカチを渡す。菜古ちゃんは躊躇いながらもそれを受け取り、少しずつ落ち着いていく。
「…苦しかったら吐き出して良いよ。忘れて欲しかったら忘れるし。話した方が、楽になれるかもしれないし」
私の言葉にピクリと肩を震わせた菜古ちゃんは、やがてゆっくりと話しだした。
「…私、亜美先輩が…好きなんです…敬愛じゃなくて、恋愛なんです」
震えた声で、しかしはっきりと菜古ちゃんはそう言った。私は黙って頷く。
「…男の人になりたいわけじゃありません。小学生の頃とかは男子が好きでしたし、亜美先輩が初めてなんです。女の人を好きになったの。気付いたら、好きだったんです…でも、どうして良いか分からなくて…亜美先輩に近付く男の人が憎くて、羨ましくて…簡単に告白出来る男の人が、ずるいです…」
枯れてしまうのではないか、というくらいに涙を流し、泣き続ける菜古ちゃん。
「…私は女だから、恋愛対象と見られることはなくても、せめて隣にいたかった…亜美先輩は、あまり恋愛感情を向けられることに慣れていないようで、気付いてもいないようでした。だから、少し安心してたんです。…彼氏なんて、出来ないって。なのに、なのに…」
亜美には夏休み中に彼氏が出来た。潮賀くん。丁寧で柔らかい口調の、優しい男の子。見た目、性格的にもあの2人はお似合いで、だからこそ悪く言えなくて、辛いのだろう。私はただ、菜古ちゃんの話を聞いていた。
菜古ちゃんは震えながらその場にしゃがみ込んだ。人気のない廊下に、菜古ちゃんのしゃくりあげる音だけが響く。拭っても拭ってもとめどなく溢れ落ちる涙。私もしゃがんで、まっすぐ菜古ちゃんを見つめる。
「…っせん、ぱ…っ…亜美、先輩…っ」
嗚咽混じりの涙声の中に、途切れ途切れに亜美の名前を呼ぶ声。不安定な心の声と共に、どれだけ亜美のことを想っているかが伝わってくる。痛いくらいに想って、届かなくて。その届かない理由が「同性の後輩だから」だということには、薄々気付いているようで。亜美は元々鈍感気味である。あんなにも男子に好意を向けられているのに、気付かないくらいには。分かりやすい北原くんの恋心にも気付いていなかったようだったし。そもそも恋愛感情というものをあまり理解していないように見えた。亜美は1年生の時からモテモテで、噂にもなっていたのに誰とも付き合っておらず、一時期同性愛者かと疑われている時もあった。学年でトップクラスの有名人で、初めて同じクラスになったのに亜美のことはある程度知っていた。そのくらい有名だったのだ。そんな優しくて、可愛い彼女と関われば、女でも惹かれてしまうのは無理はないのかもしれない。
「…私…は…」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を、未だに拭い続ける菜古ちゃんにハンカチを渡す。菜古ちゃんは躊躇いながらもそれを受け取り、少しずつ落ち着いていく。
「…苦しかったら吐き出して良いよ。忘れて欲しかったら忘れるし。話した方が、楽になれるかもしれないし」
私の言葉にピクリと肩を震わせた菜古ちゃんは、やがてゆっくりと話しだした。
「…私、亜美先輩が…好きなんです…敬愛じゃなくて、恋愛なんです」
震えた声で、しかしはっきりと菜古ちゃんはそう言った。私は黙って頷く。
「…男の人になりたいわけじゃありません。小学生の頃とかは男子が好きでしたし、亜美先輩が初めてなんです。女の人を好きになったの。気付いたら、好きだったんです…でも、どうして良いか分からなくて…亜美先輩に近付く男の人が憎くて、羨ましくて…簡単に告白出来る男の人が、ずるいです…」
枯れてしまうのではないか、というくらいに涙を流し、泣き続ける菜古ちゃん。
「…私は女だから、恋愛対象と見られることはなくても、せめて隣にいたかった…亜美先輩は、あまり恋愛感情を向けられることに慣れていないようで、気付いてもいないようでした。だから、少し安心してたんです。…彼氏なんて、出来ないって。なのに、なのに…」
亜美には夏休み中に彼氏が出来た。潮賀くん。丁寧で柔らかい口調の、優しい男の子。見た目、性格的にもあの2人はお似合いで、だからこそ悪く言えなくて、辛いのだろう。私はただ、菜古ちゃんの話を聞いていた。
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