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少女の母親②
しおりを挟むシズエはナミカの自殺の件と聞いて動揺したが、サヤカの話をしっかり聞きたかった。
家の中に通すと、サヤカはナミカの祭壇に手を合わせても良いかと尋ねる。
どうぞと許可すると、沢山の子供が好きそうなお菓子やジュースを紙袋ごと渡された。
サヤカは随分と長く手を合わせた後に、シズエと着いてきたヒマリの方を正座のまま向く。
そして、遂には土下座の姿勢で
「…サヤカちゃんの自殺の原因は私の娘が手酷く虐めたからです。
謝っても到底許される事ではございませんが、本当に申し訳ございません!」
サヤカの衝撃的な一言に座っているのに、シズエの身体はぐらついた。
隣のヒマリが慌てて支える。
ヒマリはサヤカに憎悪の目を向けながら
「それなら、何でアンタ一人でここに来たのよ!?
虐めてた張本人と父親はどうしたのっ!?」
サヤカに疑問をぶつけた。
サヤカは土下座の姿勢のまま
「…ナミカちゃんの遺書が娘と夫に隠されてしまいました。」
そう切り出した彼女はシズエとヒマリに、ナミカの自殺当日に宇多丸家で起きた出来事を包み隠さず語った。
そして最後に
「私の判断ミスのせいで真実を公に出来ずに申し訳ございません!
ですが責任を持って必ず探しだします!」
再び謝罪した。
シズエは涙がとめどなく溢れて止まらない。
「…どうしてナミカが…ひどい…どうして…」
うわ言を繰り返す。
「…アンタは母親なのに娘がやってた事に本当に気づかなかったの!?」
半ば放心状態のシズエに代わり、ヒマリがサヤカに尋問する。
サヤカは少しだけ逡巡して自分の立場と事情を説明した。
「…だからと言って娘の過ちに気付けなかった言い訳にはなりませんが…」
「当たり前でしょう!!
ナミカは…ナミカはもう戻ってこないのにっ!」
ヒマリもサヤカに怒りながら悔し涙を流す。
シズエはヒマリの涙を見て、先程より少しだけ冷静になった。
ー血の繋がった実の娘だって育てるのは大変だ。
私はナミカを愛してるから乗り切れた。
でも、この人は自分が望まぬ形で子育てが始まって、それでも何とか折り合いをつけて頑張っていたのだ。
そして今、血の繋がらない娘がやった事なのに、この人だけが謝罪の為に私達に頭を下げている…
「…頭を上げて下さい…」
サヤカは少しの間の後、そろりと頭を上げた。
「あなたの娘さんがナミカにした事は、どんなに謝られても到底許す事はできません。」
「…はい。」
「…ですが、ナミカが最期に何を思い伝えたかったか私は知りたい!
どんな手を使ってでも探しだして下さい!」
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