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201号室 四宮 晶
しおりを挟むピンポーンと来客を告げる我が家のチャイムが鳴った。
明け方までキャバクラの仕事で、ようやく寝ついた所だったのに。
イライラしながらウチー四宮 晶は乱暴にドアを開けた。
「…はいはーい、どちら様?
って、三木と…アンタ誰?」
私の安眠を妨害したのは隣に住む202号室の三木と、三木と同じくらいの年の見知らぬ女だった。
「四宮さん、お休みの所すみません!
こちら今日から201号室で暮らす鍋島さんです。」
「鍋島です、これからよろしくお願いします!」
201号室の新しい住人は、そう言って頭を下げる。
「…ウチは四宮、もう一回寝直すからそれじゃあね。」
ウチは相手の返事も聞かず、不機嫌を隠さず目の前のドアを乱暴に閉めた。
もう一度寝る為にベッドの布団に潜るが、一度起きたからか目が冴えてもう寝られない。
仕方なく起き上がって電子タバコに火をつけた。
フーっと煙を吐き出して昨夜の嫌な客を思い出した。
ウチの店に来る客は良客と嫌な客の差が激しい。
良客に当たった日はラッキーだが、昨夜は生憎アンラッキーな日だった。
会社の同僚と来ていた若い3人組の男達で初めての客だったが、その中の1人が最悪の部類だった。
安酒しか入れないクセに、テーブルに着いたウチやヘルプのリリカに偉そうな事この上ない。
偉そうなのは我慢できる。
お客はこの店で気分よくお酒を飲んで、上機嫌で帰ってもらうのが目的だからだ。
…だけど、激しいボディータッチは禁止だ。
太ももに手を置く、肩を抱くぐらいならセーフだがそれ以上は店の黒服のお出ましだ。
一発出禁だ。
昨夜の男もリリカの口にキスしようとしていた。
「ケンちゃん、それ以上はアウトだよー!」
ウチはケンと名乗ったその男からリリカをやんわりと引き離す。
すると、それまでは偉そうにしながらも上機嫌で飲んでいたケンが豹変した。
「あンだとぉ、このブス!
偉そうに、キスの一つや二つ減るもんじゃねぇだろぉがっ!!」
『あンだとぉ』はコッチのセリフだ!
ウチはこれでも店のナンバー3だ!
ブスとは何だ、ブスとは!!
「ウチの店ではお触り禁止なの。
触りたければ他所行きな。」
心の中でケンにキレ散らかしながら、ウチは冷静に3人組に伝えた。
ケンはまだキレていたが仲間の男達2人が空気を読んだのだろう。
ケンを宥めながら『お騒がせしました』と、会計を済ませてそそくさと退店した。
黒服が出てくる事態ではなかったので出禁にはならなかった。
ああいう手合いは日を置かずに、また来る可能性が高い。
その日を予想してウチはまたタバコの煙を吐き出した。
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