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元王子アール
対決
しおりを挟む魔王がいるであろう大広間までは何も起こらず、広間の扉まで辿り着いた。
カメリアが静かに話しかける。
「…アール様っ、扉からかなり離れててくださいっ。」
黙って頷きながら扉から大きく距離を取る。
お互いに頷き合いながら、カメリアが一気に扉を開けた!
その瞬間、広間の中から扉に向けて強大な炎の魔法が放たれていた。
彼女は自身に結界魔法をかけていたが、更に防御魔法を展開する。
そして防御しながら素早く広間の中へと入っていった。
ボクも炎が収まってから、慌てて中に続く。
ーーそこで目にしたのは、魔王サツキと対等に剣で斬り結ぶカメリアの姿だった。
魔王と目が合う。
「…お前はアルト、いや変態元王子アールか!?」
久々に会ったというのに失礼な奴だな。
それに何故かボクがバカバッカの元王子という事を知っている。
疑問を口にする前に
「アール様に失礼な口きかないでくださいっ!!」
カメリアが魔王に斬りかかった。
魔王はそれを危なげなく避ける。
そしてまた斬り結びはじめて剣で攻撃しながらも、お互いに強力な魔法を放っていた。
「そういえば、お互い自己紹介がまだだったな。
俺はカトウ サツキ。
お前は?」
そう言いながら魔王は氷の魔法を放つ。
「アタシは聖女カメリアですっ!」
カメリアは避けながら答える。
後ろの壁が一面凍っていた。
「…!?カメリア!?
おいっ、それは本名なのかっ!?」
急に魔王が隙だらけで慌てだす、カメリアはその隙を見逃さなかった。
「本名ですよっ!!」
言いながら持っていた剣を横一閃に薙ぎ払った。
勝負ありだった。
魔王の体は真っ二つになりこそしていないが、臍から左脇腹までがざっくり抉れている。
魔王は両膝が崩折れた。
次の瞬間、最期の力を振り絞ったであろう強大な魔力で撃った氷の刃がボクに向かってきた。
ボクが不死身なのを忘れていたのか、もう目が見えなかったのか分からないが、カメリアではなくボクに撃ってきた。
ボクは不死身でも痛覚はある。
避けきれない!!
反射的に目を瞑る。
そしてすぐに『ドスッ』と大きな音がした。
しかし、いつまで待っても痛みが来ない。
どうしたんだと思い目を開けると、腹の中心に氷の刃が刺さったカメリアがいた。
前に倒れてきたので慌てて抱きとめる。
「…カメリアッ!何で、どうしてっ!?」
カメリアはボクが無事である事が分かると、口から血を流しながら微笑んだ。
「…アール様にっ…怪我が…なく…て…ほんと…よかっ…た…」
「カメリア、自分に治癒魔法を!!」
彼女は力なく首を横に振り
「魔力切れですっ…」
「ボクは復活できるのにっ…!」
「…それ…でも…痛い…おもい…は…して…ほし…く…なかった…」
その言葉を最後にカメリアの手は重力に逆らわずに、地に落ちた。
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