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第三章 地下迷宮挑戦編

第94話 地下迷宮13 18階層モンスター部屋

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 18階層隠し部屋。8階層よりもさらに広い。
 俺は屋敷メンバーを引き連れて隠し部屋に来た。やはりここもモンスター部屋だった。

 総勢19名(社長含む)がこの部屋に挑む。この部屋は我が社の未来だ。

 よく考えたら、俺達にとっては最高の狩場だが、普通の冒険者がこのモンスター部屋に来たらかなり危険だ。レベル相応の冒険者が間違えてここに入ったら、間違いなく死ぬ。500体もの魔物に襲われて生きていられるわけがない。

 というわけで冒険者達の命も救う為、今日から8階層、18階層のモンスター部屋は我が社が独占する。

 独占禁止法だと???

 知らん。そんな法律はこの世界にはない。 

 この場所は社長の俺が現場で泥に塗れながら、足で見つけたものだ。今の時代、テレビ広告、ネット広告、アフィリエイト、ユーチーブ全盛だ。そんな中、俺は汗水流し、泥を啜ってこの場所を見つけたんだ。誰にも譲らん。この部屋は我が社の未来だ。ふふふ。

(社長、頭大丈夫?そろそろよろしいかしら?)

 くそっ、ユヅキめ。昨日のお仕置きが足りてなかったのか!?

(た、足りてた。足りてたわよ……じ、十分です…汗)


 俺が馬鹿なことを考えていたら、魔物が現れ始めた!

 今度はクイーンアント!また蟻か!前回のビッグアントは体長1mぐらいCP70~100ぐらい。

 クイーンアントは体長2mから3m、CP300~400ぐらい。

 かなり強くなっている。

 今日の作戦も先制攻撃は魔法組。

 ルーシー、カレン、ミケネ、フーカ、サーシャと魔法組のメイド達。

(今ですわっ!)

 カレンの指揮の元一斉に魔法が放たれる!

 うほお!こりゃ凄い!四属性全ての魔法が入り乱れる。

 ドカーーーーン!!!

 耳をつん裂くような爆発音。
 物凄い爆風がこちらにも向かってくる。俺とユヅキは【プロテクション】で爆風から皆をガードする。【プロテクション】は個別ではなく範囲で使えるようになっていた。

 200匹程。一網打尽だった。


「す、凄い……」

 メイド達が驚きの声をあげている。
 驚きで震えてる子もいるようだ。

 一瞬の静寂。

 また湧き出て来る。出るわ出るわで気持ち悪いぐらいの群れになっている。

 ルイスを先頭に接近戦の得意なミケネ、カレン、フーカが前に出る。

 ルイスの槍がクイーンアントを襲う。一払いで数匹が舞い上がる。

 ミケネの剣術は更に磨かれているようだ。

 カレンの鞭がクイーンアントを複数刻んでいく。

 フーカは両手短剣の為一撃で倒せない事が分かると次々と魔物の急所を刺していく。

 後方からルーシーとフーカが魔法で援護する。

 このメンバーはいつの間にか全員CP1000を超えている。

 凄いな。出会った頃とはみんな別人じゃないか。
 ユヅキもステラも余裕の表情で見ている。

 メイド達は尊敬の眼差しで戦闘を眺めている。

「みんなもあれぐらいすぐになれるからね!大丈夫!」

 ユヅキがメイド達に声をかける。

「わ、私達が………」

「あ、あんな風に………」

「「「はい!ユヅキ様!頑張ります!」」」

 キリッとした表情に変わるメイド達。ルイス達の戦闘を目に焼き付けているのだろう。特に自分と同じ武器を持つ先輩は参考になる。

 俺もルイスやルーシー達の戦いを目に焼き付けていた。

 600体程倒した頃だろうか。魔物の出るペースが少なくなってきた時、ユヅキが皆に念話をする。

(みんな戻って!次はメイドちゃん達の番!)

(((了解!!!)))

(さあ、ミア達の番だよ!危なくなったらすぐに下がっていいからね。ファイト!)

(((はい!!!)))

 現在20匹程のクイーンアントが残っている。

 また魔法組が魔法を一斉に放つ!

 バーーーーーン!!!

 ビッグアントの群れに炸裂するが一撃では倒せないようだ。

 前回同様、槍を持つダリア、大ハンマーを持つマイテ、両手短剣持ちのココとミミが前に出る。

 4人も一撃では倒せないようだ。魔法で弱ったクイーンアントを優先で倒していく。

 魔法組はノーダメージのクイーンアントに魔法を放ち前衛を援護している。

 あっ、まずいな。

 ココが正面の敵を倒すのに気を取られて背後に気づいていない。背後のクイーンアントがココに襲いかかる。

「ココ危ない!背後きてる!」
 アイナがここに叫ぶ!

 ココはハッとして、後ろを振り向くがもう避けられない。

 俺は【短距離転移】を使い一瞬でクイーンアントとココの間に割込み、クイーンアントを【マジックオーラ】の刃で切り刻む!

(ココ、大丈夫か?周りの注意を忘れないようにしよう。アイナもう少し早く気付ければ最高だった!)

 俺は二人に言葉を掛ける。

((はいっ!あさひ様!ありがとうございます!))

(うん。あともう少しだ。ファイト!)

((はいっ!!))


 その後なんとか20体を倒したメイド達。

 うん。凄い!

「「はあ、はあ、はあ、はあ」」

 みんなの息が完全にきれている。大量の汗もかいていた。

 しかし、無常にもクイーンアントはまだ湧き出てきた。

 うげっ!今までで一番多い!!!

 メイド達は恐怖に引きつった顔をしている。

 流石にこれ以上は可哀想だ。

 これ以上うちの大事な新入社員達に重労働をさせる訳にはいかん。あさひコーポレーションはホワイトで有名だ。ここは社長の俺がかっこよく決めて社員達から尊敬の眼差しを浴びなくては。

 さあ、なんの技で決めようかな。ここは久しぶりにかっこよく【闘魔術】で一発で決めるか?いや、全ての敵を体術で倒すのもなかなか良い。ふふふ、迷うぜ。それとも、あの技を試すのも………


(はい、みんな下がってー!終わらせちゃうね♪)

 第一秘書が剣をかまえている。

 うげっ!うちの第一秘書!またしゃしゃり出てきやがった!社長の見せ場を!

 くそっ、優秀すぎる。美人すぎる。いや、美人過ぎるのはいいが、優秀過ぎるのは考えもんだ!



斬光剣ザンコウケン!)



 げっ!あの技は!!!

 いかんっ!あの技はカッコ良すぎる!このままでは俺の社長の座が危うい。

 前回よりも更に強い光!ユ、ユヅキさん!眼が!

【神眼】が神々しく青く光ってます!!!

 な、なんて神々しいんだ!!!ユヅキ様の信者になりたい!

 ち、違う!俺は何を言ってるんだ!

 光の斬撃は一直線にクイーンアント400匹の群れに向かう!


 全てのビッグアントは光に包まれ消えた!

 オーバーキル!前回よりもさらに完璧にオーバーキル!

 シーンとするその場に残るのは全部で1000個ほどの魔石………



 全員ポカーンとその光景を眺めている。


 デ、デジャブか?この光景見たことあるぞ???

 こちらを向いて舌を出し、ニコッと笑うユヅキ。

「た、たったの一撃で。。。」
 フーカがボソっと言う。

「か、神の光………神の一撃………」
 ミケネが神を崇めるようにユヅキを崇める。

「………」
 サーシャは言葉が出ないようだ。

(あかんっ!やりすぎだ。神々しすぎだ。)

(ごめん、ごめん、ちょっとやりすぎた。久々に力使ってみたくて)

「すっ!凄いですわっ!ユヅキ様!!!伝説の勇者様!凄すぎますわ!!!」
 カレンが興奮している。

 みんな全開とセリフ同じじゃないかっ!


「あ、あんなの………国が消える………」

 ルイスがガチガチ震えている。

「伝説の勇者ユヅキ様………」

 ルーシーの目の大きさがいつもの二倍になっている。


 はっ!メ、メイド達は。メイド達はどうした!???



 ど、土下座しとるぞ!

 全員綺麗な土下座を!完全に地面におでこがついてる。

 あれは!どこかの銀行員よりも遥かに美しい土下座!

 ユヅキは秘書から頭取にジョブチェンジしたのか?
 俺は捨てられた。見捨てられた社長。無能だから、見捨てられる。当たり前のことだけだ。

(見捨てるわけないでしょ!ぷぷぷっ)

 はっ?ユヅキ秘書は俺を見捨てない。


 よ、良かった………



「皆様、宝箱が出ましたよ」

 うちの冷静な第二秘書ステラさんがみんなに声を掛ける。

 しかし、誰も反応できない。ユヅキの技があまりにも凄すぎた。

 さて、今日こそ俺が宝箱開くか。

 コツン、コツン、コツン。

 俺は颯爽と歩く。この中でただ一人冷静を保てる俺。


 ボーゼンとするみんなを置き去りに俺は宝箱を開けに行く。ふふ、ここは俺の神引きでみんなを驚かそう。

 なぜなら俺はガチャ運が良かった。どんなゲームも無課金なのに課金者よりもキャラが揃うのが早かった。0.1%を引く男と呼ばれていた。

 よく仲間には嫉妬されたもんだ。本当は課金してんだろ!?とか。お前運営だろ!?とか。チーターだ!とか。



 だから、自信がある。




 さあ来い!!!




 スーパーウルトラレア!!!




 0.01%よ!降臨せよ!



 ガチャッ



 …………………


 ………無い。何も無い。


 宝箱。空っぽ………………


(ど、どんまい………社長………)

(あさひ様………そういう時もありますよ………)



 俺はその日以降宝箱は二度と開けなくなった。
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