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第一章 アルバ大森林での修行編

第16話 剣術訓練 転移3日目

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 今日も朝食を美味しくいただいた。俺はステラさんに胃袋を完璧に掴まれている。

 その後、ステラさんが俺の為に訓練用の木剣と防具を用意してくれた。
 外用の服に着替えて、防具を装備する。軽装な皮製の鎧、靴、グローブを装備する。サイズ的には問題なさそうだ。
 何から何までステラさんにはいつもながら感謝する。
 家の近くの少し開けた庭のようなところに行く。

「あさひ様、似合っていますよ」
 ステラさんは微笑みながら、俺を見て褒めてくれる。

「ありがとうございます。実は剣を持つのも防具を身に付けるのも初めてでして、緊張します」
 剣術、男心がくすぐられる。楽しみだ。

「そうですか。では始めましょう」

 俺とちょっと距離を置き凛とした姿で立つステラさんは、銀色の長い髪が風になびいて、太陽の光をキラキラと反射している。

 メイド服とは違う。少し露出多めの美しい剣士の姿。絶世の美女剣士。

 俺は美しいと思った。そしてそれ以上にカッコ良かった。
 ユヅキも俺と同じことを思ったようだ。いや、誰でも思うだろう。俺って凄くラッキー。創造神様、ここに転送させていただきありがとうございます。

「はい、ステラさん。よろしくお願いします」

「まず、あさひ様は剣を使用するのが初めてとのことですので、素振りの型をお教えしたいと思います」

「ですが、その前にあさひ様の動きを確認したいので自由に、本気で私に向かって攻めてみてください。私は反撃しませんので、ご安心ください」

 そう言って、ステラさんと俺は木剣を構える。俺もステラさんも大きめの両手持ちの木剣。

 構えなんて分からないから、ステラさんを真似てそれっぽく構える。

「やーっ」
 夢中で剣を振る。何度も何度も振る。
 当たらない。当たらない。当たらない。
 ステラさんは軽々と俺の剣を交わし続ける。
 5分ほど振った後だろうか。

「はあ、はあ、はあ」
 剣を振り回していた俺はかなりの汗を掻いて息を乱す。ステラさんは涼しい顔をしてこちらを見ている。

「あさひ様、だいたいわかりました。それでは素振りから始めましょう」

『ステラさん、凄ーい。あさひ、私に変わって』
 ユヅキが感動したように、俺との交代をせがむ。

「ステラさん、あともう少しだけやらせてください」
 ステラさんにお願いしてみる。

「わかりました。ではもう少しやりましょう」

 そしてユヅキと【チェンジ】する。

 そして、ユヅキは俺の体でステラさんに向かう。

 ユヅキは剣を振る。

 当たらない。当たらないけど、
 ステラさんは驚いた顔をする。

 しばらく剣を振り続ける。
 ユヅキの攻撃をステラさんが剣で受け止める。

「驚きました。先程とは動きがまるで違います。さあ、続けてください」

 ユヅキは剣を振る。縦に横に斜めに。フットワークも軽やかに振り続ける。

 ユヅキの剣がステラさんの髪に掠る。
 ユヅキはニヤッとする。

 うそーーーん。ユヅキ。なんでそんなに凄いんだ。俺って一体………CPたったの5………ゴミか………それほど俺とユヅキの動きに差があった。なぜ同じ体なのに?ユヅキってもしかして天才?俺はけっこう落ち込んだ。

『あさひ【チェンジ】して』
 素早く俺とユヅキは元に戻る。
 思考加速先生のおかげで俺とユヅキのやり取りは高速である。

 ステラさんは俺と距離を取り、かまえを解いて言う。
「あさひ様。本当に驚きました。素晴らしい才能かと思います。とても今日はじめて剣を持ったとは思えません」

「あっ。いえ。夢中で振っただけで………」

 俺は自分の力じゃないだけに複雑な気持ちで、ステラさんに答えた。

「ですが、まだ動きに無駄や未熟な部分がたくさんあります。いえ、今日はじめてなのですから、あって当たり前ですね。まずは剣の動かし方の基本をお教え致しますので、一緒に真似てみてください」

 そう言って、ステラさんは流れるような素振りをする。何種類かの型を見せてくれた。完全記憶師匠は即座に仕事をする。

 そして俺はステラさんの素振りを黙って見続ける。

『あさひ変わって』

 またユヅキからの要望で【チェンジ】する。

 ユヅキはステラさんの動きを真似する。

 しばらく、ステラさんとユヅキは素振りを続けていた。

 ユヅキはステラさんの動きを見続けながら、同じタイミングで素振りをし続ける。
 俺はステラさんの素振りを見ながら、ユヅキの思考を読むが、なんというか酷く純粋だ。剣のことしか考えてない。

 ユヅキ、剣術の才能めちゃくちゃあるんだな………

「あさひ様。良いと思います。まずは10日間。この動きをずっと練習し続けてください。もう少し踏込みを速くすることと、次の動きに即座に移れるように意識すること。そして振ったあとの姿勢がブレないように注意してください。」


「はい。わかりました。ステラさんありがとうございます」

 ユヅキは俺の代わりに答える。

 しばらくステラさんはユヅキの素振りを見続けて、さらに少しアドバイスをする。

「では私は家に戻りますので続けてください」
「はい」
 そう言ってステラさんは家に戻った。

『あさひ。やばい。剣術楽しいよ♪』

『そうみたいだな。ユヅキが楽しんでるの伝わってくる』

『うん。ごめんね。変わってもらっちゃって』

『いや、ユヅキが楽しそうで俺も嬉しいよ』

 実際に嬉しかった。ユヅキがこんなに感情を表して楽しんでるのは初めてだし、ユヅキの喜びが俺の感情を引っ張る。剣術楽しいな。
 俺も思考加速先生と完全記憶師匠の力を借りてユヅキの素振りに集中する。

 なんだこれ、凄く勉強になるぞ。師匠が記憶したステラさんの動きとユヅキの動きを重ね合わせるようにユヅキの素振りに集中する。

 それから30分、ユヅキは振り続けた。

『ふう。いやあ、楽しい!ステラさんの動きを真似してるけど、まだまだ全然だね♪』
 休憩したユヅキは俺に話しかける。俺も邪魔してはいけないと思って素振り中は話しかけず【ルーム】でユヅキが振っている木剣と同じような物を作り、振り続けてた。

『そうだな。いや、ユヅキもマジで凄いと思う。ちょっと変わって。俺もやりたい』

『オッケー。あさひ交代』
【チェンジ】して今度は俺の番。

 おっ、体がだいぶ疲れてる。

 俺も素振りをする。ユヅキ程ではないが最初よりは随分良くなった気がする。

『あれ、あさひ凄く良くなってる』

 悔しいから俺も一緒に【ルーム】で素振りしてた。

『あっ、本当だ。木剣がある。あさひ負けず嫌いね』

 くそっ、ユヅキに置いてかれないように頑張ります。

『うふふっ、うん。頑張ろ』

 恐らくユヅキは俺の思考を読んだのだろう。剣術楽しいという思いと、悔しいという思い。それをわかった上で余計な事は言わなかった。

 この後、俺とユヅキは何度も交代しながら素振りをし続けた。

________________

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