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「皇帝陛下からの文を読み上げます。『王女テオドラの離縁を認める。しかしながら当家の状況は知っての通り故、可及的速やかに再婚相手を見つけるように』とのことです」
 お父様からの使者がようやっと到着しました。文の内容はつまり、余裕がないので再婚してくれと言うものです。
 再婚相手については私の裁量に任せるとのこと。裁量に任せると言われても、再婚相手にしたい殿方なんて、それこそ殿下くらいしかいません。話していて楽しいというぼんやりとした好意ではありますが、結婚には充分でしょう。

 さて、なんと返したものかと思案していると、共に使者の言葉を聞いていた殿下がおもむろに口を開きます。何かを決めたような静かな声色でした。

「テオドラ嬢」
「はい」
 殿下には好いていらっしゃる女性がいるので、再婚を申し出て二人の仲を割くのも悪いですから……と思案を重ねていた私は、次に発せられた言葉に耳を疑いました。

「私と……結婚していただきたい!」
 !?
 ……結婚…………!? 殿下と……!? 認識が追いつきません。あまりにも突然のことで衝撃を隠しきれませんでした。

「でも、フリードリヒ様には想いを寄せていらっしゃる方が……」
「それが貴女のことだ。今まで黙っていたこと、本当に申し訳ない。こんな突然で、しかも出会って数日で……断ってくれて構わない。ただ、私の気持ちを伝えたかったんだ」
 顔が熱くなるのを感じます。怒りから来るものではありません。
 殿下が謝罪のために跪こうとするので、慌ててそれは止めました。
 度々殿下が話されていたその女性が私だったとは驚きでしたが。好きなことに一生懸命で、気丈で、芯が強い方が私だなんて。到底自分とは重ね合わせられませんが、そう見えているのなら光栄です。

 実のところ、私は殿下の申し出を受けるつもりです。殿下に対して恋愛感情があるのかどうかはわかりませんが、好ましく思っていることは事実ですから。恋愛感情でなかったとしても、燃え盛る炎のような恋をして、物語のような駆け落ちをするよりも、趣味の合う旦那様と添い遂げる方が私は好きです。

「私、申し出をお受けいたします」
 伏せられていた殿下の目が驚きでこちらを向きました。

「本当に……? いいのか、私で」
「はい」
 そう答えても、まだ信じられぬといったふうに何度も訊き返され、その度にまた答えました。
 私の方こそ、本当に私で良いのかお聞きしたいくらいです。

 使者に王弟殿下との結婚を希望する旨の手紙を書いて持たせ、再びお父様のところに送りました。
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