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混沌
しおりを挟む夜の学校は静まり返り、普段の喧騒とは打って変わって、まるで時間が止まったかのような雰囲気に包まれていた。麻衣と玲奈は、暗闇の中で身をひそめながら、学校の裏庭に向かって歩き続けた。目的地は、石田と加藤が秘密裏に計画を進めている場所だ。
「ここが…その場所よね。」玲奈が低い声で呟き、麻衣とともに暗がりに目を凝らした。目の前には、古びた倉庫のような建物があり、その中からは微かな光が漏れていた。
麻衣は深呼吸をし、思いを新たにした。「もう、引き返せない。あの計画を止めるためには、今すぐにでも石田と対峙しないと。」
玲奈は静かに頷いた。「でも、気をつけて。何か仕掛けられているかもしれない。」
二人は慎重に倉庫の扉に近づき、隙間から中を覗き込んだ。中には、石田と加藤が向かい合って座っており、その間には黒い袋が置かれていた。麻衣はその袋に目を凝らし、何が入っているのか気になったが、今はそれを確かめる余裕はなかった。
「もうすぐだ。」石田が低い声で言った。「麻衣の心が、完全に私のものになる日が。」
加藤は冷ややかな笑みを浮かべ、頷いた。「でも、計画には最後の一手が必要だ。それが上手くいけば、全てが完璧になる。」
その言葉に麻衣の胸は締め付けられるように痛んだ。これ以上、石田の思惑に引き込まれてはいけない。自分の意思で、この終わりにしなければならない。
玲奈は静かに麻衣を見つめ、そして小さく言った。「行こう。今ならまだ間に合う。」
二人は足音を忍ばせながら、倉庫の扉を押し開けた。中に入ると、石田と加藤は二人とも驚いた顔をして振り向いた。
「君たち…。」石田の目が鋭く光った。「どうしてここに?」
麻衣は一歩踏み出し、冷静に言った。「もう、あなたたちの計画を許さない。」
加藤はその言葉に笑みを浮かべた。「お前たちが来ることは分かっていた。君たちがどうしても真実を知りたかったから。」
石田も立ち上がり、麻衣に向かって歩み寄る。その瞳は冷たく、鋭く、まるで獲物を狙うような眼差しだった。
「計画はもう止まらない。」石田が低く言った。「麻衣は、もう私のものだ。」
その言葉に麻衣の心は激しく動揺したが、同時に決意が固まった。「あなたが何をしても、私はもう誰のものでもない。自分の意思で生きるんだ。」
玲奈は隣で麻衣を支え、力強く言った。「私たちの友情を壊させるわけにはいかない。もう、二度とこんなことを許さない。」
石田は無言でその場に立ち尽くし、加藤もまた冷静に二人を見つめていた。
「じゃあ、これで終わりだ。」加藤が言った。
その瞬間、周囲の空気が一変した。倉庫の中に張り詰めた緊張感が、一気に膨れ上がる。そして、石田が突然手を伸ばし、何かを握りしめた。
「これで…」石田は呟きながら、手に持っていた黒い袋を麻衣に向かって投げた。
麻衣はその動きに反応し、身を引こうとしたが、間に合わなかった。袋が開き、中からは見たこともない黒い粉が舞い上がった。それは不気味な香りを放ち、麻衣の目に刺さるように感じた。
「な、何これ?」麻衣は咳き込みながら、目を擦った。
「それは、君を完全に私のものにするための薬だ。」石田が満足そうに言った。「もう、逃げられない。」
玲奈はすぐに麻衣を守るように立ち、石田に向かって強い声で言った。「絶対に許さない!麻衣は自分で選ぶんだ!お前の思い通りにはさせない!」
その瞬間、倉庫の扉が急に開き、誰かが入ってきた。麻衣と玲奈はその人物に一瞬目を見開く。
「君たち、何をしているんだ。」その声は、信じられないほど静かで冷たいものだった。
その人物は、誰あろう…石田の父親だった。
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