上 下
58 / 58

58 最終話

しおりを挟む
『結婚おめでとう』
「ありがとう…ございまっ………ふっ……」
「「「「…………」」」」

早いもので、ブラントさんと婚約を結んでから1年も経たない今日、結婚式を迎えた私達の目の前に金髪碧眼のオールデンさんが現れた。

ブラントさんは以前言っていた通り、私と結婚する前に公爵を返上した──けど「叔父上の子に引き継いでもらいますから」とルドヴィクさんに言われ、“一時預かり”となった。王族籍もそのままだ。
兎に角、ブラントさんは騎士爵位で私は平民と言う事で、結婚式はイシュメルさんにお願いをして、参列者はネッドさんとジェナさんとルドヴィクさんとリンだけの小さな式。ただ、リンが1週間前に王子を出産した為、リンは参列する事ができなくなってしまった。おめでたい事だけど、少しだけ残念だ。
そんな小さな小さな結婚式の途中に、神殿内がキラキラと輝きだしたと思えば、想像画通りの姿をしたオールデンさんが現れた。私は笑いを堪えるのに必死だけど、他の人達は目を見開いたまま固まっている。

『チカ、これが普通の反応だ。チカは素っ気なさ過ぎるのだ。まぁ、それがチカの面白いところだがな』

ニヤッと黒く笑った後、スッと表情を引き締めた。

『ブラント。チカは立派に聖女としての務めを果たし、この国を豊かにした私のお気に入りだ。くれぐれも、チカの事は頼むぞ?ルドヴィク、父王の様にはならないようにな?イシュメル、これからもチカを頼む。チカ、幸せにな』
「はい。オールデンさん、ありがとうございます」

お礼を言うと、また神殿内がキラキラと光った後、オールデンさんの姿は無くなっていた。





******

『『『チカ、おめでとう』』』

アルスティアの家に戻ると、フラムとアイルとトゥールが出迎えてくれた。

『私達、オールデン様に呼ばれているから今から行って来るわね。今夜は頑張ってね!』
『チカ、頑張れ』
『チカ、頑張れ~』

「何を!!!!」

ーそんな言い方止めなさい!ー

見た目小さいから、そんな言葉を掛けられるとは思ってもみなかったから、余計に恥ずかしい。

これからは所謂“結婚初夜”。ブラントさんは一度登城し、騎士団長に挨拶をしてからアルスティアに来る予定。王族でもあるブラントさんが、アルスティアで生活をするのはどうなの?と心配していたけど、ルドヴィクさんからも「転移魔法陣があるから何処に住んでいても一緒だろう」と言われたそうだ。

兎に角、ブラントさんが帰って来る前に……お風呂に入ろう。







「うわぁ………」

入浴後、2人の寝室となる部屋に入ると、大人3人が寝れる大きさのベッドの上に赤と青と緑の花びらが散りばめられていた。可愛い姿をした妖精は、大人な配慮ができる妖精だった。

「これ、チカがやったのか?」
「ふわあっ!?ブラントさん!」

いつの間に帰って来たのか、ブラントさんにバックハグをされた状態で耳元で囁かれた。

「えっと…これは……」
「俺には見えてはいないけど、花を届けてくれていた妖精か?」
「そうです」
「気の利く妖精だな」
「そうで─ひやあっ!?」
「安定のチカだな」

と、くすくすと笑うブラントさんにお姫様抱っこでベッド迄運ばれて、ベッドに下ろされた─のと同時に啄む様なキスをされ、あっと言う間に深いキスになり──

「俺の全てをチカにあげるから、チカの全てを俺にくれる?」
「………はい」

と返事をすれば、フワリと微笑んで

「俺がどれだけチカが好きなのか……思い知ってもらうから」


と笑顔でブラントさんが宣言した通り、私はその一晩でブラントさんからの愛の重さを………思い知らされました。




気を失うって………あるんですね?






『やり過ぎじゃない?』
『チカ、大丈夫?』
『チカ、何か飲む?』

初夜の翌日、お昼過ぎ迄起きる事ができなかった。お昼過ぎに起きる事はできたけど、動く事はできなくて、ベッドの上で笑顔のブラントさんにお世話をしてもらっていたところに、フラムとアイルとトゥールが帰って来た。

「この、赤色と青色と緑色の子達は…妖精か?」
「え!?ブラントさん見えるんですか!?」

あれ?今迄見えてなかったよね!?どうして!?と、フラム達に視線を向ける。

『あぁ、それは、私達と契約を交わしているチカと、ブラントがからよ』
「ごふっ─────!!言い方!」
「なるほど。今迄見えていなかったが、毎日花を届けてくれてありがとう」
『花を運んでいたのは僕で、風の妖精のトゥールだよ。これからもよろしくね』
『僕はアイル。水の妖精だ』
『私は火の妖精のフラムよ。私達の最優先はチカだから。』
「分かっている」
『それと…チカに無理強いはさせないように。あまりに酷いと……私が赦さないから』
「……善処する」

見た目は可愛い小さい小さい火の妖精フラムだけど、誰よりも頼りになるお姉さんです。






異世界で聖女として頑張った挙句裏切られ、王子に裏切られた悪役令嬢を拾い


もうイケメンは懲り懲り──



と思っていた私だけど、異世界でもイケメンに捕まりました。今度こそは、ブラントさんイケメンと幸せになります!






❋これにて完結となります。最後迄お付き合いいただき、ありがとうございました❋
(*ˊᗜˋ*)ノ°•· ✿

❋“置き場”に、その後の話を投稿しました。時間がある時にでも覗いて見ていただければ幸いです❋
(,,ᴗ  ̫ᴗ,,)ꕤ*.゚


しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(53件)

towaka
2023.11.20 towaka
ネタバレ含む
みん
2023.11.21 みん

towaka様

ありがとうございます。

本当は、リンの結婚迄で、チカはイケメンなブラントとどうなる!?と言う所で終わりにする予定でした。なので、“溺愛”タグは付けていなかったのですが、ついつい駆け足的に結婚までいきました(笑)予定外だったので、最後はアッサリになって、すみませんでした!
(。>﹏<。)💦

解除
towaka
2023.11.20 towaka
ネタバレ含む
みん
2023.11.21 みん

towaka様

ありがとうございます。

ネッドはいつでもスタンバイOKです!
(*•̀ω•́*)✧

解除
芹香
2023.11.19 芹香
ネタバレ含む
みん
2023.11.21 みん

芹香様

ありがとうございます。

ブラントには、これから一途に頑張ってもらいます(笑)
(*´ 艸`)

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

お嬢様のために暴君に媚びを売ったら愛されました!

近藤アリス
恋愛
暴君と名高い第二王子ジェレマイアに、愛しのお嬢様が嫁ぐことに! どうにかしてお嬢様から興味を逸らすために、媚びを売ったら愛されて執着されちゃって…? 幼い頃、子爵家に拾われた主人公ビオラがお嬢様のためにジェレマイアに媚びを売り 後継者争い、聖女など色々な問題に巻き込まれていきますが 他人の健康状態と治療法が分かる特殊能力を持って、お嬢様のために頑張るお話です。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています ※完結しました!ありがとうございます!

あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
聖女ウリヤナは聖なる力を失った。心当たりはなんとなくある。求められるがまま、婚約者でありイングラム国の王太子であるクロヴィスと肌を重ねてしまったからだ。 「聖なる力を失った君とは結婚できない」クロヴィスは静かに言い放つ。そんな彼の隣に寄り添うのは、ウリヤナの友人であるコリーン。 聖なる力を失った彼女は、その日、婚約者と友人を失った――。 ※以前投稿した短編の長編です。予約投稿を失敗しないかぎり、完結まで毎日更新される予定。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。