15 / 58
15 祝賀パレード
しおりを挟む
「祝賀…パレード………」
「そう。聖女様達が無事に浄化を終えた事を祝う祭りがあって、王都では夜には王城でパーティーが開かれて、パレードはその日の午前中に行われるんです」
ーすっかり忘れてたー
確かに、浄化の旅が終わったら王都でパレードをして、夜にはパーティーに参加してもらいます─なんて言われてたっけ?ダンスが必須だと言われて、ダンスの練習もさせられた…。
「…………」
聖女不在のパレード──
大丈夫なんだろうか?勿論、「大丈夫じゃない!」と言われたところで、私が王城に戻る事はないけど。
それに、無能聖女なんて、誰もお呼びではないかもしれないけど。
「私も、辺境地の神官だけど、一応神官長だから、王城で開かれるパーティーには出席しないといけないから、数日は神殿を留守にしますね。」
「そうなんですね。分かりました。気を付けて行って来て下さい」
ここから王都迄の移動は、アルスティアの神殿からイシュメルさんの居る王都の神殿迄、魔法陣で転移するそうだ。本当に、魔法って便利だよね…。
「それで、私が居ない間、何かあったらメイジーさんに相談すると良いから」
「はい、分かりました。」
メイジーさん
イシュメルさんの生家から、歩いて5分程の距離に住んでいて、所謂“お隣の奥さん”だ。優しい旦那様のアランさんと、可愛い女の子の3人家族。
昨日、挨拶をしに行くと、娘のエステルちゃんに懐かれて、そのまま昼食をご馳走になったりと、とても気さくな家族だった。
「“オールデン神の祝福”を見られるかもしれないね」
「オールデン神の…祝福?」
「あぁ、若い子は、知らないかな?」
ー若いからではなく……世界が違うからだけどー
“オールデン神の祝福”とは──
国の穢れが浄化され綺麗になると、オールデン神が、聖女に対して感謝の気持ちを表す為に、空に現れるモノなんだそうだ。
「何が現れるんですか?」
「なんでも、七色に輝くモノらしいよ」
ー七色……ベタに虹……とか?ー
「それは、国中で見られるらしいから、パレードのある日は、外に出て空を見上げてみると良いよ」
「はい!忘れずに見上げます!!」
「それじゃあ、私はこれで……」
帰って行くマッテオさんを見送って、家の中に入ってから───
「聖女に対して感謝の気持ちを……表す為?」
それは……微妙だったりする?“無能”扱いされて“デメリット”呼ばわりされて、聖女はあの人達から逃げて……ここに居るわけで……。しかも、オールデンさんは、その事を知っている。更には、オールデンさんは楽しい事面白い事が好きな腹黒な神様だ。そんなオールデンさんが、素直に“オールデン神の祝福”をするだろうか?
「…………」
ーうん。考えるのは止めようー
どうなったところで、私には関係無い事だと思いたい──思っておく!
*王城、第一騎士団副団長室にて*
(ブラント視点)
クズであっても愚か者であっても、聖女ミヅキと共に浄化を成功させたミリウスとジュリアスとバーナードとフラヴィアは、取り敢えず予定通りにパレードに参加させる事になった。聖女ミヅキが不在のまま。
聖女ミヅキについては、国中にその存在を告知していたから、ミヅキ本人を見た事がなくとも、聖女が黒色の髪と瞳をした女の子だと言う事は知っている。だから、その黒色の女の子が居ないと言う事は、誰もが直ぐに気が付くだろう。
ー本当に……兄上は義姉上が亡くなってから傲慢な王になってしまったなー
もともと平民だった女性に恋をした兄。何とか手を回してその女性と結婚して、ルドヴィクとミリウスを生んだが……義姉上は貴族社会や王族には馴染めず、気を病んでしまい、そのまま───
ールドヴィクがマトモな思考の持ち主で良かったー
『ブラントさん』
何一つ、欠片さえ含まれてはいなかった。
『ブラント様』
『カールストン様』
俺の名を呼ぶ女性達の、その声には、いつも何かが含まれていた。俺は紳士的には振る舞ってはいるが、聖人君子ではない。そんな女性達とも上手く付き合っていた。
それが、紳士的に振る舞えば振る舞うほど、彼女は俺との間に壁を作っていった。笑っているようで、笑っていない笑顔を貼り付けていた。
ー取り繕う必要が無いなー
と思って、紳士的な態度を止めて素のままで対応してみれば、最初は驚いたような目で俺を見ていたが、数日もすれば彼女もそれに慣れたようで、彼女も私には素で対応するようになっていた。
『ブラントさん』
その声には、色も甘さも無い。ただただ名を呼んでいるだけ。それが、何となく落ち着く声だな─と思うようになっていた。そうなると、逆に色や甘さを含んだ声が鬱陶しくなっていった。
『行ってきます』
最後に聞いた彼女の声。未だに耳に残っている。
ふぅ──と、息を吐く。
彼女──聖女ミヅキが不在のパレード。一体どうなるのか…………
「兄上……次第か………」
俺は1人、呟いた。
「そう。聖女様達が無事に浄化を終えた事を祝う祭りがあって、王都では夜には王城でパーティーが開かれて、パレードはその日の午前中に行われるんです」
ーすっかり忘れてたー
確かに、浄化の旅が終わったら王都でパレードをして、夜にはパーティーに参加してもらいます─なんて言われてたっけ?ダンスが必須だと言われて、ダンスの練習もさせられた…。
「…………」
聖女不在のパレード──
大丈夫なんだろうか?勿論、「大丈夫じゃない!」と言われたところで、私が王城に戻る事はないけど。
それに、無能聖女なんて、誰もお呼びではないかもしれないけど。
「私も、辺境地の神官だけど、一応神官長だから、王城で開かれるパーティーには出席しないといけないから、数日は神殿を留守にしますね。」
「そうなんですね。分かりました。気を付けて行って来て下さい」
ここから王都迄の移動は、アルスティアの神殿からイシュメルさんの居る王都の神殿迄、魔法陣で転移するそうだ。本当に、魔法って便利だよね…。
「それで、私が居ない間、何かあったらメイジーさんに相談すると良いから」
「はい、分かりました。」
メイジーさん
イシュメルさんの生家から、歩いて5分程の距離に住んでいて、所謂“お隣の奥さん”だ。優しい旦那様のアランさんと、可愛い女の子の3人家族。
昨日、挨拶をしに行くと、娘のエステルちゃんに懐かれて、そのまま昼食をご馳走になったりと、とても気さくな家族だった。
「“オールデン神の祝福”を見られるかもしれないね」
「オールデン神の…祝福?」
「あぁ、若い子は、知らないかな?」
ー若いからではなく……世界が違うからだけどー
“オールデン神の祝福”とは──
国の穢れが浄化され綺麗になると、オールデン神が、聖女に対して感謝の気持ちを表す為に、空に現れるモノなんだそうだ。
「何が現れるんですか?」
「なんでも、七色に輝くモノらしいよ」
ー七色……ベタに虹……とか?ー
「それは、国中で見られるらしいから、パレードのある日は、外に出て空を見上げてみると良いよ」
「はい!忘れずに見上げます!!」
「それじゃあ、私はこれで……」
帰って行くマッテオさんを見送って、家の中に入ってから───
「聖女に対して感謝の気持ちを……表す為?」
それは……微妙だったりする?“無能”扱いされて“デメリット”呼ばわりされて、聖女はあの人達から逃げて……ここに居るわけで……。しかも、オールデンさんは、その事を知っている。更には、オールデンさんは楽しい事面白い事が好きな腹黒な神様だ。そんなオールデンさんが、素直に“オールデン神の祝福”をするだろうか?
「…………」
ーうん。考えるのは止めようー
どうなったところで、私には関係無い事だと思いたい──思っておく!
*王城、第一騎士団副団長室にて*
(ブラント視点)
クズであっても愚か者であっても、聖女ミヅキと共に浄化を成功させたミリウスとジュリアスとバーナードとフラヴィアは、取り敢えず予定通りにパレードに参加させる事になった。聖女ミヅキが不在のまま。
聖女ミヅキについては、国中にその存在を告知していたから、ミヅキ本人を見た事がなくとも、聖女が黒色の髪と瞳をした女の子だと言う事は知っている。だから、その黒色の女の子が居ないと言う事は、誰もが直ぐに気が付くだろう。
ー本当に……兄上は義姉上が亡くなってから傲慢な王になってしまったなー
もともと平民だった女性に恋をした兄。何とか手を回してその女性と結婚して、ルドヴィクとミリウスを生んだが……義姉上は貴族社会や王族には馴染めず、気を病んでしまい、そのまま───
ールドヴィクがマトモな思考の持ち主で良かったー
『ブラントさん』
何一つ、欠片さえ含まれてはいなかった。
『ブラント様』
『カールストン様』
俺の名を呼ぶ女性達の、その声には、いつも何かが含まれていた。俺は紳士的には振る舞ってはいるが、聖人君子ではない。そんな女性達とも上手く付き合っていた。
それが、紳士的に振る舞えば振る舞うほど、彼女は俺との間に壁を作っていった。笑っているようで、笑っていない笑顔を貼り付けていた。
ー取り繕う必要が無いなー
と思って、紳士的な態度を止めて素のままで対応してみれば、最初は驚いたような目で俺を見ていたが、数日もすれば彼女もそれに慣れたようで、彼女も私には素で対応するようになっていた。
『ブラントさん』
その声には、色も甘さも無い。ただただ名を呼んでいるだけ。それが、何となく落ち着く声だな─と思うようになっていた。そうなると、逆に色や甘さを含んだ声が鬱陶しくなっていった。
『行ってきます』
最後に聞いた彼女の声。未だに耳に残っている。
ふぅ──と、息を吐く。
彼女──聖女ミヅキが不在のパレード。一体どうなるのか…………
「兄上……次第か………」
俺は1人、呟いた。
79
お気に入りに追加
1,089
あなたにおすすめの小説
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!
伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。
いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。
衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!!
パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。
*表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*
ー(*)のマークはRシーンがあります。ー
少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。
ホットランキング 1位(2021.10.17)
ファンタジーランキング1位(2021.10.17)
小説ランキング 1位(2021.10.17)
ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。
お嬢様のために暴君に媚びを売ったら愛されました!
近藤アリス
恋愛
暴君と名高い第二王子ジェレマイアに、愛しのお嬢様が嫁ぐことに!
どうにかしてお嬢様から興味を逸らすために、媚びを売ったら愛されて執着されちゃって…?
幼い頃、子爵家に拾われた主人公ビオラがお嬢様のためにジェレマイアに媚びを売り
後継者争い、聖女など色々な問題に巻き込まれていきますが
他人の健康状態と治療法が分かる特殊能力を持って、お嬢様のために頑張るお話です。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています
※完結しました!ありがとうございます!
あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
聖女ウリヤナは聖なる力を失った。心当たりはなんとなくある。求められるがまま、婚約者でありイングラム国の王太子であるクロヴィスと肌を重ねてしまったからだ。
「聖なる力を失った君とは結婚できない」クロヴィスは静かに言い放つ。そんな彼の隣に寄り添うのは、ウリヤナの友人であるコリーン。
聖なる力を失った彼女は、その日、婚約者と友人を失った――。
※以前投稿した短編の長編です。予約投稿を失敗しないかぎり、完結まで毎日更新される予定。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。
それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。
誰にも信じてもらえず、罵倒される。
そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。
実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。
彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。
故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。
彼はミレイナを快く受け入れてくれた。
こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。
そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。
しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。
むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる