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8 メリット、デメリット
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どうやら、私、聖女としてはかなり優秀だったようです。それなりに酷い穢れも、少し時間がかかったりもしたけど、キッチリと浄化する事ができた。
アイルとフラムの暗躍のお陰もあり、魔獣や魔物が現れても誰一人大怪我をする事もなかった。
そして、浄化の旅に出てから1年と3ヶ月。最後のポイントの浄化を無事終える事ができた。
その日の夜は、その領主の邸で宴会をする事になり、私達は夜遅くまで皆で美味しい料理を堪能した。私以外の皆はアルコールを飲んでいたから、より一層楽しそうに騒いでいた。そんな中、窓の外に黒羽が居るのが見えて、私はこっそりとその宴会から抜け出した。
『浄化、無事に終わったようで何よりだ』
と、私の肩に止まっている黒羽を通してオールデンさんの声が聞こえた。
「アイルとフラムのお陰で、怪我をする事もなく無事に終えて良かったです」
『これからの事だが、最初に言っていた通りで良いのか?』
「あー……それ、少しだけ待ってもらえますか?」
『それは大丈夫だ。また、どうするか決まれば、黒羽を通して私を呼んでくれれば良い』
それから少しだけオールデンさんと話をした後、黒羽は私の肩から飛び去って行った。
浄化の旅は1年と3ヶ月かかったけど、王城への帰りは一瞬で帰れる。この世界は魔法アリの世界。私達が今居るのは、王都から一番遠い領。そんな領にある王家所有の邸内に、王都へと転移できる魔法陣が存在しているようで、帰りはその魔法陣を使用して帰る予定になっている。
だから、浄化が終わり王都に帰った後どうするか、ジュリアスさんに何と返事をするか─考える暇も無く、あっと言う間に王城に着いてしまうと言う事だ。
浄化の旅が終わっても、日本に還るつもりはなかった。還ったところで、私の居場所なんてないから。この世界で、アイルとフラムと一緒にどこか静かな所で過ごして行こうと思っていた。でも──
『私は……ミヅキとは、旅が終わった後も、一緒に居たいと思っているんだ。だから……今すぐにとは言わないから、少し、私との事を考えてみて欲しい』
あのジュリアスさんの言葉に揺れてしまっている。
ジュリアスさんの事が好きなのか?と訊かれれば、「分からない」と言うのが正直なところだ。彼の言葉を信じて良いのか──
ーあの2人から喰らったダメージは、私が思っているより深かったみたいねー
私は1人、月が雲に隠れて暗くなった夜空を見上げた。
******
「それにしても、ミヅキの浄化の力は凄かったわね」
「そうだな。聖女の能力以外は何も無いと聞いた時は、大丈夫か?と思ったけど、何の問題もなかったな」
「予定よりも1ヶ月も早く帰れる事になったし……ミヅキ様様だな」
宴会では、ミヅキはアルコールを飲まず、アルコールを飲んでいた同行メンバーとは別のテーブルに着いていた為、同行メンバー達は、ミヅキが何処に居るのか分かっていなかった。アルコールが入り、少し気が緩んでいるのもあったかもしれない。そんな時、同行メンバーで聖女ミヅキの話になった。
「ところで…これから、ミヅキはどうなるんですか?」
「“どうなる?”とは……」
そんな質問をしたのは魔道士のフラヴィアで、それに対して疑問を投げかけたのは、魔道士の第二王子ミリウス。
「過去の聖女様達は、浄化が終わった後もこの世界に残って、王族や貴族と結婚してますよね?その結婚に、愛があったのか無かったかは別として、聖女様達には魔力があって、結婚する事でメリットもあったと言う事ですよね?でも…ミヅキの場合、子に引き継がれる事がない聖女の能力しか無いじゃないですか。なら、ミヅキと結婚するメリットってあるのかな?と思って……」
「メリットかデメリットかで言うと、正直デメリットしかないだろうね。彼女には聖女と言う肩書きしかないし、魔力も無いからね。王家としては……諸手を挙げて喜ぶと言う事にはならないと思う。」
「あぁ…だから、ミリウス様じゃなくて、ジュリアスが?」
なるほど!と言わんばかりの顔で言い切るのはバーナード。ジュリアスとバーナードは所属する騎士団は違うが、学生の頃からの仲で、同期でもある。
「何が?」
「王家では受け入れられないけど、聖女様は聖女様だから、邪険にする事もできない。ジュリアスなら、同行メンバーの中では公爵の子息と身分も良いし、騎士団の中でも有望株だから、丁度良いって事だ」
「え?ジュリアスさんがミヅキと!?それは……大変ですね?」
「…………」
「身分ある男前は大変だな。それに…ミヅキは見た目が幼いしなぁ……ま、その辺りは、なんとでもなるけどな。あ、ところで───」
アルコールの入った同行メンバー達は、そこから話題を変え色々な話をしながら、夜遅くまで宴を楽しんだ。
******
「あ、ミヅキ、どこに行ってたんですか?気が付いたら居なくなっていたから、探していたんですよ?」
「………ジェナさん…ごめんなさい。ちょっと……外で涼んでました」
邸の廊下を歩いていると、私を探していたと言うジェナさんと出くわした。
「これから、宴会に戻りますか?それとも……」
「んー……少し疲れたから、部屋に戻ります」
「それじゃあ、部屋まで送りますね」
「ありがとうございます」
先にお礼を言って、私はジェナさんと一緒に部屋に戻る事にした。
アイルとフラムの暗躍のお陰もあり、魔獣や魔物が現れても誰一人大怪我をする事もなかった。
そして、浄化の旅に出てから1年と3ヶ月。最後のポイントの浄化を無事終える事ができた。
その日の夜は、その領主の邸で宴会をする事になり、私達は夜遅くまで皆で美味しい料理を堪能した。私以外の皆はアルコールを飲んでいたから、より一層楽しそうに騒いでいた。そんな中、窓の外に黒羽が居るのが見えて、私はこっそりとその宴会から抜け出した。
『浄化、無事に終わったようで何よりだ』
と、私の肩に止まっている黒羽を通してオールデンさんの声が聞こえた。
「アイルとフラムのお陰で、怪我をする事もなく無事に終えて良かったです」
『これからの事だが、最初に言っていた通りで良いのか?』
「あー……それ、少しだけ待ってもらえますか?」
『それは大丈夫だ。また、どうするか決まれば、黒羽を通して私を呼んでくれれば良い』
それから少しだけオールデンさんと話をした後、黒羽は私の肩から飛び去って行った。
浄化の旅は1年と3ヶ月かかったけど、王城への帰りは一瞬で帰れる。この世界は魔法アリの世界。私達が今居るのは、王都から一番遠い領。そんな領にある王家所有の邸内に、王都へと転移できる魔法陣が存在しているようで、帰りはその魔法陣を使用して帰る予定になっている。
だから、浄化が終わり王都に帰った後どうするか、ジュリアスさんに何と返事をするか─考える暇も無く、あっと言う間に王城に着いてしまうと言う事だ。
浄化の旅が終わっても、日本に還るつもりはなかった。還ったところで、私の居場所なんてないから。この世界で、アイルとフラムと一緒にどこか静かな所で過ごして行こうと思っていた。でも──
『私は……ミヅキとは、旅が終わった後も、一緒に居たいと思っているんだ。だから……今すぐにとは言わないから、少し、私との事を考えてみて欲しい』
あのジュリアスさんの言葉に揺れてしまっている。
ジュリアスさんの事が好きなのか?と訊かれれば、「分からない」と言うのが正直なところだ。彼の言葉を信じて良いのか──
ーあの2人から喰らったダメージは、私が思っているより深かったみたいねー
私は1人、月が雲に隠れて暗くなった夜空を見上げた。
******
「それにしても、ミヅキの浄化の力は凄かったわね」
「そうだな。聖女の能力以外は何も無いと聞いた時は、大丈夫か?と思ったけど、何の問題もなかったな」
「予定よりも1ヶ月も早く帰れる事になったし……ミヅキ様様だな」
宴会では、ミヅキはアルコールを飲まず、アルコールを飲んでいた同行メンバーとは別のテーブルに着いていた為、同行メンバー達は、ミヅキが何処に居るのか分かっていなかった。アルコールが入り、少し気が緩んでいるのもあったかもしれない。そんな時、同行メンバーで聖女ミヅキの話になった。
「ところで…これから、ミヅキはどうなるんですか?」
「“どうなる?”とは……」
そんな質問をしたのは魔道士のフラヴィアで、それに対して疑問を投げかけたのは、魔道士の第二王子ミリウス。
「過去の聖女様達は、浄化が終わった後もこの世界に残って、王族や貴族と結婚してますよね?その結婚に、愛があったのか無かったかは別として、聖女様達には魔力があって、結婚する事でメリットもあったと言う事ですよね?でも…ミヅキの場合、子に引き継がれる事がない聖女の能力しか無いじゃないですか。なら、ミヅキと結婚するメリットってあるのかな?と思って……」
「メリットかデメリットかで言うと、正直デメリットしかないだろうね。彼女には聖女と言う肩書きしかないし、魔力も無いからね。王家としては……諸手を挙げて喜ぶと言う事にはならないと思う。」
「あぁ…だから、ミリウス様じゃなくて、ジュリアスが?」
なるほど!と言わんばかりの顔で言い切るのはバーナード。ジュリアスとバーナードは所属する騎士団は違うが、学生の頃からの仲で、同期でもある。
「何が?」
「王家では受け入れられないけど、聖女様は聖女様だから、邪険にする事もできない。ジュリアスなら、同行メンバーの中では公爵の子息と身分も良いし、騎士団の中でも有望株だから、丁度良いって事だ」
「え?ジュリアスさんがミヅキと!?それは……大変ですね?」
「…………」
「身分ある男前は大変だな。それに…ミヅキは見た目が幼いしなぁ……ま、その辺りは、なんとでもなるけどな。あ、ところで───」
アルコールの入った同行メンバー達は、そこから話題を変え色々な話をしながら、夜遅くまで宴を楽しんだ。
******
「あ、ミヅキ、どこに行ってたんですか?気が付いたら居なくなっていたから、探していたんですよ?」
「………ジェナさん…ごめんなさい。ちょっと……外で涼んでました」
邸の廊下を歩いていると、私を探していたと言うジェナさんと出くわした。
「これから、宴会に戻りますか?それとも……」
「んー……少し疲れたから、部屋に戻ります」
「それじゃあ、部屋まで送りますね」
「ありがとうございます」
先にお礼を言って、私はジェナさんと一緒に部屋に戻る事にした。
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