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17 一難去ってまた一難
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ウェント家の人達が次々と病んで行く中、黒色持ちの保護者や調査員への強制捜査が行われ、ウェント伯爵の黒色持ちに対する仕打ちが明らかとなり、調査員はそのウェント家から見逃す事への見返り金を受けていた事が判明した。
ウェント伯爵は爵位を奪爵され、見返り金を受け取っていた調査員は、職を解かれて辺境地へと送られた。
幸いな事に、他の黒色持ちは実の子だったようで、虐待されていた者はいなかったそうだ。
“黒色持ちを虐待していたウェント家が、使用人も含めて殆どが気を病み、爵位も取り上げられた”
“聖女となる者が黒色持ちだった”
“他国では、黒色持ちは当たり前のように居る”
これでようやく、ウェザリア王国も黒色持ちに対する偏見や差別が無くなっていけば良いなと思う。
「これで平穏な生活が送れると思っていたけど…」
「ごめんなさい」
「「コユキが謝る事じゃないから」」
頭を下げて謝るコユキに、ウィル様と私は同じ言葉を口にした。ウィル様とコユキと私は今、3人で学校内にある庭園のベンチに並んで座っている。リッカルド殿下は、今日は公務があるそうで、学校には来ていない。モモカは───
「何故、モモカが王太子の泊りがけの公務に同行しているんだ?」
「ごめんなさい、私にも分からなくて…今朝、登校しようと馬車の所に行くと、百花とミリウス様が居て、今日は公務に行くから学校は休むって、その時初めて言われて……」
その公務が、聖女が関わる事ならコユキも同行する筈だから、聖女とは関係無い公務なんだろう。だとしたら、何故モモカが同行するのか?
「前々から噂はあったんだ」
“王太子と聖女は想い合っている”
「周知の事実ではないけど、王太子に婚約者は居ないから問題無い……筈なんだけど……」
“婚約者のベレニス=テイロードが嫉妬して、聖女モモカを苛めている”
「厄介な噂話が広まってるようだ」
私とウィル様は、最近迄バタバタしていたから、モモカ達の事や噂話の事には全く気付いていなかった。その事を知った時には、その噂話が真実だと思われてしまっている状況だった。それに加えて、聖女であるコユキに関しての噂話も広がっていた。
“治癒しかできない聖女は、浄化の地に行く事を嫌がり、聖女としての責務を果たしていない”
“城で贅沢をして、学校では浄化の聖女を苛めている”
「こんなくだらない噂話を信じるとは……この国の貴族社会の将来、ヤバくないか?もう、今のうちに廃嫡させた方が良いと思う」
それは言い過ぎ──ではないと思う。
治癒しかできない──治癒ができるのは、神がその力を与えた者だけで、今はコユキだけだ。そのコユキは、毎週末神殿で、貴族平民関係無く治癒の力を使って多くの人達を助けている。それに、同行しなくて大丈夫だと言っているのは、モモカと王太子様だ。それなのに、何故コユキが非難されないといけないのか。
「少し考えれば分かるだろうし、コユキを見れば嘘だとすぐに分かる事なのに……」
そもそも、モモカと王太子様が否定すれば噂にすらならなかっただろう。それなのに、何故否定しないのか……。
「ウィルさん、アンバー、ありがとう。こうして分かってくれる人が居るから、私は大丈夫」
「コユキ……」
コユキは、シロだった時も心穏やかで優しい性格で温かかった。あの時も、私なんて無視してあのまま走って逃げていれいば助かったのに、私を庇って………だから、今度は私がコユキを守る番だ。コユキを傷付けるなら、相手がコユキと同じ世界から来たコユキの友達で神に許された聖女だったとしても、私は絶対に許さない。黒狐として仕返しと言うのは難しいけど、何とかして頑張る!
「コユキ、私はいつだってコユキの味方だからね」
「ふふっ…ありがとう、アンバー」
「俺の存在も、忘れないで欲しい……」
「「忘れてません!」」
「なら良かった」
私1人では無理だろうけど、ウィル様やグウェイン様が居ると、大変な事でも何とかなりそうな気がするし安心もする。
「先ずは、コユキは1人で行動しない方が良い。必ず誰かと一緒に行動するように。一番良いのは王族であるリッカルドだろうけど…リッカルドが居ない時は留学生の俺が付けば良いかな?」
常に誰かと行動していれば、後で何か言われても反論する事ができるし、それがリッカルド殿下や留学生のウィル様の証言なら、表立って疑う人は居ないだろう。
聖女に直接手を出して来るような人は居ないと思うけど、その相手が聖女と言うなら、どう出て来るか分からない。
ーモモカは一体何がしたいの?ー
よく考えてみれば、モモカと会話を交わした事が殆ど無い。入学してからも、挨拶を何度かしたぐらいだ。取っている授業科目も違うようで、同じ教室になる事も殆ど無い。
ーモモカは……どんな子だった?ー
それさえも、殆ど記憶に残っていなかった。
ウェント伯爵は爵位を奪爵され、見返り金を受け取っていた調査員は、職を解かれて辺境地へと送られた。
幸いな事に、他の黒色持ちは実の子だったようで、虐待されていた者はいなかったそうだ。
“黒色持ちを虐待していたウェント家が、使用人も含めて殆どが気を病み、爵位も取り上げられた”
“聖女となる者が黒色持ちだった”
“他国では、黒色持ちは当たり前のように居る”
これでようやく、ウェザリア王国も黒色持ちに対する偏見や差別が無くなっていけば良いなと思う。
「これで平穏な生活が送れると思っていたけど…」
「ごめんなさい」
「「コユキが謝る事じゃないから」」
頭を下げて謝るコユキに、ウィル様と私は同じ言葉を口にした。ウィル様とコユキと私は今、3人で学校内にある庭園のベンチに並んで座っている。リッカルド殿下は、今日は公務があるそうで、学校には来ていない。モモカは───
「何故、モモカが王太子の泊りがけの公務に同行しているんだ?」
「ごめんなさい、私にも分からなくて…今朝、登校しようと馬車の所に行くと、百花とミリウス様が居て、今日は公務に行くから学校は休むって、その時初めて言われて……」
その公務が、聖女が関わる事ならコユキも同行する筈だから、聖女とは関係無い公務なんだろう。だとしたら、何故モモカが同行するのか?
「前々から噂はあったんだ」
“王太子と聖女は想い合っている”
「周知の事実ではないけど、王太子に婚約者は居ないから問題無い……筈なんだけど……」
“婚約者のベレニス=テイロードが嫉妬して、聖女モモカを苛めている”
「厄介な噂話が広まってるようだ」
私とウィル様は、最近迄バタバタしていたから、モモカ達の事や噂話の事には全く気付いていなかった。その事を知った時には、その噂話が真実だと思われてしまっている状況だった。それに加えて、聖女であるコユキに関しての噂話も広がっていた。
“治癒しかできない聖女は、浄化の地に行く事を嫌がり、聖女としての責務を果たしていない”
“城で贅沢をして、学校では浄化の聖女を苛めている”
「こんなくだらない噂話を信じるとは……この国の貴族社会の将来、ヤバくないか?もう、今のうちに廃嫡させた方が良いと思う」
それは言い過ぎ──ではないと思う。
治癒しかできない──治癒ができるのは、神がその力を与えた者だけで、今はコユキだけだ。そのコユキは、毎週末神殿で、貴族平民関係無く治癒の力を使って多くの人達を助けている。それに、同行しなくて大丈夫だと言っているのは、モモカと王太子様だ。それなのに、何故コユキが非難されないといけないのか。
「少し考えれば分かるだろうし、コユキを見れば嘘だとすぐに分かる事なのに……」
そもそも、モモカと王太子様が否定すれば噂にすらならなかっただろう。それなのに、何故否定しないのか……。
「ウィルさん、アンバー、ありがとう。こうして分かってくれる人が居るから、私は大丈夫」
「コユキ……」
コユキは、シロだった時も心穏やかで優しい性格で温かかった。あの時も、私なんて無視してあのまま走って逃げていれいば助かったのに、私を庇って………だから、今度は私がコユキを守る番だ。コユキを傷付けるなら、相手がコユキと同じ世界から来たコユキの友達で神に許された聖女だったとしても、私は絶対に許さない。黒狐として仕返しと言うのは難しいけど、何とかして頑張る!
「コユキ、私はいつだってコユキの味方だからね」
「ふふっ…ありがとう、アンバー」
「俺の存在も、忘れないで欲しい……」
「「忘れてません!」」
「なら良かった」
私1人では無理だろうけど、ウィル様やグウェイン様が居ると、大変な事でも何とかなりそうな気がするし安心もする。
「先ずは、コユキは1人で行動しない方が良い。必ず誰かと一緒に行動するように。一番良いのは王族であるリッカルドだろうけど…リッカルドが居ない時は留学生の俺が付けば良いかな?」
常に誰かと行動していれば、後で何か言われても反論する事ができるし、それがリッカルド殿下や留学生のウィル様の証言なら、表立って疑う人は居ないだろう。
聖女に直接手を出して来るような人は居ないと思うけど、その相手が聖女と言うなら、どう出て来るか分からない。
ーモモカは一体何がしたいの?ー
よく考えてみれば、モモカと会話を交わした事が殆ど無い。入学してからも、挨拶を何度かしたぐらいだ。取っている授業科目も違うようで、同じ教室になる事も殆ど無い。
ーモモカは……どんな子だった?ー
それさえも、殆ど記憶に残っていなかった。
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