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二度目の召喚

神様達の裏事情

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*菊花視点*



『ねぇ……いつ迄寝ているつもりなのかしら?』

『……後……10ヶ月程は眠りに就いているかと………』

『10ヶ月?そんなに寝る必要あるの?神力が戻ってない?いや、ほぼ戻ってるわよね?完璧では無いだけで、ほぼ戻っているわよね?完璧に戻る迄待つ必要があるの?無いわよね?お前達の失態、怠慢だったわよね?』

ー千代様の圧が……半端無い!ー

今回の事で、千代様の怒りはマックスを迎えてしまった。
脳筋と馬鹿聖女のせいで、とばっちりは菊花わたしとアイリーン様にやって来た。

いえ、とばっちりではなく、私達の失態なのは確かなので、言い返す言葉もありません。

『今すぐ、鹿を起こしなさい。』
『────はい??』
『返事は……“はい”か“分かりました”か“承知しました”しかないわ。』

ーなるほど。“拒否権は無い”と言う事ですね?ー

『分かりました』

としか言えないよね!?

眠りに就いている神を起こすのは大変なのだ。
自身に結界を張っていて、その結界を潜り抜けて眠りに就いている神の側に行かないといけない為、側に行く迄にかなりの妖力が消費されてしまうのだ。
それができない訳ではないけど、自ら進んで起こしに行こう!とは思わない─思えない事なのは確かだ。

されど──

千代様に言われれば、何を置いてもするしかない。千代様に言われたのだから、起こされたアイリーン様も文句は言わない──言えないだろう。
何故アイリーン様が言えないかと言うと、キレた千代様が恐ろし──コホンッ。千代様の方が、アイリーン様より800年程先輩だからだ。アイリーン様は、まだまだ若手の女神の部類に入る。
今回の聖女選びも、実は、千代様は少しだけ難色を示していた。

久保清香あの子は、悪に染まりやすい可能性がある』

と、千代様は言っていた。それでも、アイリーン様は、久保清香を聖女に選んだ。

その結果が───コレだった。

一度目の召喚時の志乃様への待遇に関しては、千代様は我慢した。
志乃様が、無事にこっちに還って来た時は……ホッとしたそうだが、それは直ぐ様また怒りに変換された。

私が音信不通になったから──

それからの、二度目の召喚に、売られて買われてからの不遇に継ぐ不遇。その極めつけが──久保清香と脳筋騎士の、志乃様へのやらかし。



『ふふっ──“チェックメイト”って知ってるかしら?』

千代様がブチ切れた瞬間だった。

あの時の千代様のアルカイックスマイルは、忘れる事は無いだろうと思う。





それから、間髪入れずにアイリーン様の元へと飛び、削り取られて行く妖力なんて気にせずに結界を潜り抜け、更に妖力を使ってアイリーン様を目覚めさせた。

『──キッカ…私はまだ──』
『アイリーン様。すみません。詳しい説明は後程させていただきますが、千代様がキレたので千代様の命で、アイリーン様を起こしに来ました。』

眠りを妨げられたアイリーン様の怒りが大きくなる前に、起こした理由を言えば、アイリーン様は一瞬にして顔を強張らせた。

『何故……千代様が?』
『兎に角、“外界に姿を現して、自ら直接対応をして来い”との事です。“それらが終わったら、直接報告をしに来るように”とも言ってました。』

直訳すると

“お前が直接尻拭いをして、全て終わらせてから詫びに来い”

である。

『キッカ………』
『はい。後で必ず……いくらでも罰は受けますので、今は直ぐに行動に移しましょう。拒否権はありませんから。』
『……そうね。取り敢えず、直ぐに……外界に行きましょう。』

そうして、妖力が半分程になった私は、アイリーン様と共に外界へと転移した。





****


『これは一体…どうなっているの!?』


──』



アイリーン様は、目の前に居る召喚された者である4人に絶句している。

ーですよね…ー

“後で覚えてらっしゃい”

と、その向けられた視線で三角の耳と三つの尻尾が出てしまったのは、仕方無い事だった。





志乃様は、やっぱりお人好しで優しい人だった。
やらかした私へのフォローをしてくれた。もっと、私やアイリーン様に文句を言っても良いのに。

まぁ、その分、脳筋騎士と馬鹿聖女には、私達がキッチリとお返しをしておこう。特に、脳筋騎士に関しては、千代様から『連れて来い』と言われているから、許可を得てから先に脳筋騎士だけ転送しておいた。

ー私からも、“丑三つ時行脚”をプレゼントしようー

なんなら、妖に食べさせても……問題無くないか?と、思わなくもない。先に、志乃様を魔犬に食べさせようとしたのだから。

ー因果応報──やっぱり、良い四字熟語だよねー







******


『──と言う事で、エメラルド─久保清香から聖女の能力を取り上げ私の愛し子から外しました。勿論、新たな加護は与えてません。』

『─────そう。』

『『…………』』

あれから急ぎ千代様の元へとやって来たアイリーン様は、先程のやり取りを全て報告した。

『後は、一週間後にウィステリアがこちら側に還って来てから私の愛し子から外して、存在を修復させて繋がりを断ち切れば、私の仕事は……終わります。』

『──へぇ……終わるの?』
『え?』
『あぁ、“での仕事終わる”と言う事ね?まさか、ここ迄きて、あの娘を放ったらかしにする─なんて事は言わないわよね?言わせないけれど………。』
『『…………』』

千代様が、はぁー…と、ため息を吐くと、アイリーン様と私はビクッと反応して、自然と背筋がピンッと伸びる。

『誰にでも失敗はあるわ。失敗しても、そこから勉強して次に活かせば良いの。だから、失敗自体は仕方無いとしても、その後が問題なのよ。5年も眠りに就くのはやめなさい。眠りに就かなくても良いように対策を練りなさい。でなければ、そっちの世界とは……完全に完璧に切り離すからね?』

ニッコリ千代様が微笑むと、『早急に策を練ります!』と言ってあちら側へと還って行った。




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