上 下
21 / 51

21 再会と、新たな出会い

しおりを挟む
「朝食が済んだ頃に迎えを遣るから」

と、お兄様に言われていた為、朝食後部屋で待っているとアメリーが迎えにやって来た。ちなみに、今日もシルヴィはお留守番だ。
今から向かうお兄様の執務室は、比較的近い所にある為、あっと言う間に……

「着いてしまった……」
「はい?何か…ありましたでしょうか?」

ついつい言葉に出ていたようで、「何もありません」と言うと、アメリーは執務室のドアをノックした。



「おはよう、ブルーナ。」
「おはようございます。」

どうやら、リュウさん達はまだ来ていないようだ。
お兄様曰く、リュウさんが呼んで来たのは3人。そのうちの1人は、他の2人の護衛として付いて来ていると言う事だった。しかも、そのが条件で2人がイーレンにやって来る事がそうだ。
きっと、その護衛がセオ君だ。そのセオ君が護衛をしていた、あのプラチナブロンドの髪の女性が──



「殿下、リュウ様達がいらっしゃいました。」
「あぁ、入ってくれて構わないよ。」
「失礼いたします。」
「…………」

お兄様と並んで出迎える。
今にでも逃げ出しそうになる足を、しっかり床に押し付けるような気もちで縫い止め、震えそうになる手にはギュッと力を入れて、顔は………どんな顔になっているのかは正直分からない。

一番に部屋に入って来たのはリュウさん。
「少し…遅くなって申し訳無い。」

それから続けて入って来た2人は、白いフードを深く被っていて顔が全く見えないけど、おそらく、2人とも女性だろう。そして、最後に入って来たのは──

「リュウさん、念の為、結界を宜しくお願いします。」
「ん?俺が?何で?」
「“最低限に”と、言われてますから………」
「あぁ……なる程………」

少し遠い目をした後、リュウさんはこの部屋に結界を張った。

「遅くなってすみ─────え?──」

その後、挨拶をしようと私達の方を向いた、その護衛はやっぱりセオ君で、そのセオ君は挨拶の途中で固まった。ちなみに、私も改めて…固まっている。

ー何故、セオ君がこの世界に居るのかー

おそらく、セオ君も同じ事を思っているに違いない。

「────スイ?」
「───はい。」
「翠!!」
「は───っ!?」

名を呼ばれて返事をすれば、また名を呼ばれて、返事をしようとしたところで……あっと言う間に距離を詰められて……抱きしめられた。

「「「!?」」」
「…………」

そんな私達を、お兄様はビックリしたまま固まっていて、リュウさんは何故かニヤニヤと笑っている。フードを被っている2人は、どうなのかは分からない。

「え?翠?え?何で?あれ?ここは…イーレンの王太子宮だって…今日は……第二王女に会うって………え?翠が……第二…王女?」

背中に回されていた手を離し、今度は私の両頬を挟み込むように手を当てて、そのまま顔を上に向けさせられた。そこには、やっぱり綺麗な青色の瞳があった。

「あー…セオ、少し落ち着こうか?ちゃんと、説明するから…くくっ─」
「あ!す、すみません!」

ニヤニヤ笑いながら、セオ君の肩を叩いたのはリュウさんで、そこでセオ君が我に返ったようにハッとした後、私の頬から手を離して、私からも距離を取るように後ろに下がった。

「──リュウ……確信犯ね?後でキッチリ説明しなさい。」
「ワカリマシタ……」

フードを被ったうちの1人が言うと、リュウさんは顔を少し引き攣らせた。

「王太子殿下、それに…王女殿下、リュウが失礼をして……申し訳ありませんでした。の事も……。」
「あぁ…取り敢えず…お座り下さい。」

お兄様は困惑しながら、取り敢えず─と、部屋に居る全員に椅子に座るようにと促した。


お兄様と私が横並びに座り、長方形の机を挟んだ向かい側にフードを被った2人とリュウさんが並んで座り、下座に当たる椅子にセオ君が座っている。その、座っているセオ君からの視線を感じたりするのは……気のせいではないと思う。チラッと盗み見ると、目を細められた。

「──っ!!」

恥ずかし過ぎてバッと視線を外すと、今度はニコニコ笑うリュウさんと目が合った。

「それじゃあ、先ずは紹介から始めようか。」

そう言うと、2人のうちの1人がフードをはずした。その人は、綺麗な黒色の長い髪を後ろで一つに括っていて、瞳の色も黒色で、容姿はリュウさんと同じで馴染みのある日本人みたいだ。

「私の名前はミヤ=ウォーランド。“ミヤ”と呼んでもらって構わないわ。」

ーん?“ウォーランド”?ー

あれ?聞き違い?かと思い、横に居るお兄様を見ると、そのお兄様も私を見て……若干顔色が悪くなっている。“ウォーランド”とは……あの大国と同じ…名前だ。もう、間違い、気のせいなんかじゃない。この“ミヤ”と名乗る女性は、大国─ウォーランド王国の王妃様であり、過去最高レベルと謳われる聖女様だ。

そして、その驚きが落ち着かないままに、もう一人の人がフードを外すと、そこから現れたのは──
プラチナブロンドの髪に、水色の様なグレーのような綺麗な色の瞳の小柄な女性。今朝、セオ君が優しい微笑みを向けていた女性だ。

…年上だろうか?ー

「ハル=カルザインです。」

私とは違って、とても可愛らしい人だ。







❋エールを頂き、ありがとうございます❋
(。˃ω˂ *)و♡

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

あなたの子ですよ~王太子に捨てられた聖女は、彼の子を産んだ~

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
聖女ウリヤナは聖なる力を失った。心当たりはなんとなくある。求められるがまま、婚約者でありイングラム国の王太子であるクロヴィスと肌を重ねてしまったからだ。 「聖なる力を失った君とは結婚できない」クロヴィスは静かに言い放つ。そんな彼の隣に寄り添うのは、ウリヤナの友人であるコリーン。 聖なる力を失った彼女は、その日、婚約者と友人を失った――。 ※以前投稿した短編の長編です。予約投稿を失敗しないかぎり、完結まで毎日更新される予定。

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

選ばれたのは私以外でした 白い結婚、上等です!

凛蓮月
恋愛
【第16回恋愛小説大賞特別賞を頂き、書籍化されました。  紙、電子にて好評発売中です。よろしくお願いします(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾】 婚約者だった王太子は、聖女を選んだ。 王命で結婚した相手には、愛する人がいた。 お飾りの妻としている間に出会った人は、そもそも女を否定した。 ──私は選ばれない。 って思っていたら。 「改めてきみに求婚するよ」 そう言ってきたのは騎士団長。 きみの力が必要だ? 王都が不穏だから守らせてくれ? でもしばらくは白い結婚? ……分かりました、白い結婚、上等です! 【恋愛大賞(最終日確認)大賞pt別二位で終了できました。投票頂いた皆様、ありがとうございます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾応援ありがとうございました!  ホトラン入り、エール、投票もありがとうございました!】 ※なんてあらすじですが、作者の脳内の魔法のある異世界のお話です。 ※ヒーローとの本格的な恋愛は、中盤くらいからです。 ※恋愛大賞参加作品なので、感想欄を開きます。 よろしければお寄せ下さい。当作品への感想は全て承認します。 ※登場人物への口撃は可ですが、他の読者様への口撃は作者からの吹き矢が飛んできます。ご注意下さい。 ※鋭い感想ありがとうございます。返信はネタバレしないよう気を付けます。すぐネタバレペロリーナが発動しそうになります(汗)

氷の騎士は、還れなかったモブのリスを何度でも手中に落とす

みん
恋愛
【モブ】シリーズ③(本編完結済み) R4.9.25☆お礼の気持ちを込めて、子達の話を投稿しています。4話程になると思います。良ければ、覗いてみて下さい。 “巻き込まれ召喚のモブの私だけが還れなかった件について” “モブで薬師な魔法使いと、氷の騎士の物語” に続く続編となります。 色々あって、無事にエディオルと結婚して幸せな日々をに送っていたハル。しかし、トラブル体質?なハルは健在だったようで──。 ハルだけではなく、パルヴァンや某国も絡んだトラブルに巻き込まれていく。 そして、そこで知った真実とは? やっぱり、書き切れなかった話が書きたくてウズウズしたので、続編始めました。すみません。 相変わらずのゆるふわ設定なので、また、温かい目で見ていただけたら幸いです。 宜しくお願いします。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

処理中です...