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第四章ー未来へー
明暗
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*王城地下牢*
「リオネル…どうして、あの女なんかと……あの女さえいなければ、リオネルは私のモノになって……」
「アディーが居なくても、俺がお前──ローゼを選ぶ事はなかったよ。」
「っ!リオネル!あぁ!やっと、助けに来てくれたの!?」
俺の顔を見たとたん、パッと明るい笑顔になるシェイラは、本当に馬鹿なのか─と思う。
「リオネルで呼ぶなと言わなかったか?ローゼもそうだったけど、シェイラも頭は悪いんだな。」
確かに、ローゼ=ルードモントは聖女としては完璧だった。ただし、学力で言えば普通、若しくはソレ以下だった。シェイラもそうだ。記憶が蘇ってからは、男を魅了したり媚を売るのに忙しかったのか、みるみるうちに学力のレベルは低下して底をつく勢いだった。
「リオ………ダレル…先生……でも、ここに来たと言う事は、私に会いに来てくれたって事ですよね?助けて…くれるんですよね?」
今度は、俺に媚を売るかのように、上目遣いでハラハラと涙を流し出した。その姿には本当に嫌悪感しかない。リオネルは、この涙を見て───
ー本当に、愚かだったな……ー
「そう……だな。ある意味、お前を助けに来た。」
「やっぱり!ようやく、私を選んでくれたのね!」
スッと人差し指を立てて、シェイラの胸元に軽くあてる。
「お前は知っているか?心が壊れるとね……全てが無になって……楽になるんだ。何でもできるような気持ちになれるし、逆に何もできないと言う気持ちにもなるけど。そして、最後には………空っぽになるんだ。そうなると……何も考えなくてよくなる。」
「え?」
シェイラがパチッと瞬きをしたのと同時に、シェイラの胸元にあてていた指先に一気に魔力を流し込み、ソレを発動させた。
「─────っ!?」
ソレは、ほんの一瞬の事。一瞬のうちに、俺の出来る限りの魔力を注ぎ込んだ。
シェイラは言葉を発する事なく、大きく目を見開いた後、その場に倒れた。
“精神に関わる魔法は、一気に掛けても、一気に解呪しても精神や心を壊してしまう”
「お前自身も……味わえばいい…………」
「城付きに戻って来るつもりはないか?」
地下牢から出ると、そこには王太子殿下とモンテルアーノ様が居た。
「ナディア次第ですね。」
ナディアが城付きになると言うなら、戻っても良いとは思うが………おそらく、ナディアは城付きにはならないだろう。
「イカレ女が、正常のままの可能性は?」
「0です。残っていた聖女の魔力に無効化を掛けてから、やりましたからね。」
「「……………」」
「そ………そうか………」
「それでは、後は頼みます……」
引き攣った顔をした王太子殿下とモンテルアーノ様に挨拶をした後、私は魔道士棟の客室へと帰った。
それから3日後、焦点の合っていない目をした聖女シェイラは、一言も言葉を発することなく、辺境地にある修道院へと送られたのだった。
******
あれから1年半が経ち、私は学園で3度目の新年生を迎えた。今年は、平民の魔道士見習いの生徒が2人もいると言う事で、何やらダレルさんは嬉しそうだ。
そう─ダレルさんと私は、スフィール領の役所には戻らず、正式に学園で講師と助手として勤めている。
“帰れず”─の間違いかな?
1年半前、これからどうするのか?─と訊かれた時
「モンテルアーノ様のことは……好き…なんだと思いますけど、私は……城付きは嫌です。なので、スフィール領に──」
「なら、助手を続けるのはどうだ?」
「え?」
と、モンテルアーノ様に提案されたのが、ダレルさんの講師と私の助手の正式契約だった。
そうすれば、ダレル殿も安心するだろう─と。
「それに、ナディアがようやく俺に落ちて好きだと言ってくれたのに、俺がナディアをスフィールに帰す訳ないだろう?まぁ、落ちてなくても帰す気はなかったけどね。」
いつもと同じ優しい笑顔な筈なのに、背中がゾクゾクしたのは気のせいに違いない。
兎に角、その話はトントン拍子に進んだ。
学園としては、“褐色の魔道士”が講師で、その褐色の魔道士が目をかけていて、王族にも伝手がある私が助手と言う事で、喜んで受け入れたそうだ。
「スフィール領に帰れなくてすみません。」と謝れば、「帰らないと選択したのは私自身だし、帰ろうと思えばいつても帰れるから。」と、ダレルさんは笑ってくれた。
そんなダレルさんの机の上には、学園でもアンリエットさんの姿絵が置かれている。
「ナディア、ダレル殿、お疲れ様。」
「モンテルアーノ様?」
「お疲れ様です。」
入学式が終わり、今日、生徒達から集めた書類を整理していると、来賓として参加していたモンテルアーノ様がやって来た。
「私は外すから、ゆっくりどうぞ」と言って、ダレルさんは部屋から出て行ってしまった。
ーダレルさんに気を使ってもらうとか……恥ずかしい!ー
「あー……ナディアだ……」と言いながら、ギュッと抱きつかれた。
「えっ!?いや、ちょっ……ここ、学園ですよ!?」
「誰も居ないだろう?それに、ナディア不足なんだ。」
「えー……」
そんな恥ずかしい事を………
新年度前後は色々と忙しく、会うのも久し振りだった。
「モンテルアー………」
「ん?」
「……オードリック……さん…」
「“さん”も要らないねど、仕方無いか。で?何?」
と、私を抱きしめている力を緩めて、今度は顔を近付けて私と目を合わせる。この距離には、未だに慣れないし、バクバクと心臓も痛い。
「えっと……久し振りに会えて、私も……嬉しいです」
「ゔ─────っ…………」
モンテルアーノ様改め、オードリックさんは、呻き声を上げながら私の肩に顔を埋める。何故か、時々オードリックさんはこうやって呻き声をあげて暫く固まってしまうのだ。
「オードリックさん?大丈夫ですか?」
と、背中をポンポンと叩くと
「大丈夫じゃないから、今すぐ帰ろう」
と言われて、グイグイと手を引かれて学園を後にした。
❋感想やエールを頂き、ありがとうございます❋
❀.(*´∇`*)❀.
❋“置き場”に、影目線の話を投稿しました。お時間あれば、覗いてみてください❋
(* ᵕᴗᵕ)⁾⁾ ꕤ
「リオネル…どうして、あの女なんかと……あの女さえいなければ、リオネルは私のモノになって……」
「アディーが居なくても、俺がお前──ローゼを選ぶ事はなかったよ。」
「っ!リオネル!あぁ!やっと、助けに来てくれたの!?」
俺の顔を見たとたん、パッと明るい笑顔になるシェイラは、本当に馬鹿なのか─と思う。
「リオネルで呼ぶなと言わなかったか?ローゼもそうだったけど、シェイラも頭は悪いんだな。」
確かに、ローゼ=ルードモントは聖女としては完璧だった。ただし、学力で言えば普通、若しくはソレ以下だった。シェイラもそうだ。記憶が蘇ってからは、男を魅了したり媚を売るのに忙しかったのか、みるみるうちに学力のレベルは低下して底をつく勢いだった。
「リオ………ダレル…先生……でも、ここに来たと言う事は、私に会いに来てくれたって事ですよね?助けて…くれるんですよね?」
今度は、俺に媚を売るかのように、上目遣いでハラハラと涙を流し出した。その姿には本当に嫌悪感しかない。リオネルは、この涙を見て───
ー本当に、愚かだったな……ー
「そう……だな。ある意味、お前を助けに来た。」
「やっぱり!ようやく、私を選んでくれたのね!」
スッと人差し指を立てて、シェイラの胸元に軽くあてる。
「お前は知っているか?心が壊れるとね……全てが無になって……楽になるんだ。何でもできるような気持ちになれるし、逆に何もできないと言う気持ちにもなるけど。そして、最後には………空っぽになるんだ。そうなると……何も考えなくてよくなる。」
「え?」
シェイラがパチッと瞬きをしたのと同時に、シェイラの胸元にあてていた指先に一気に魔力を流し込み、ソレを発動させた。
「─────っ!?」
ソレは、ほんの一瞬の事。一瞬のうちに、俺の出来る限りの魔力を注ぎ込んだ。
シェイラは言葉を発する事なく、大きく目を見開いた後、その場に倒れた。
“精神に関わる魔法は、一気に掛けても、一気に解呪しても精神や心を壊してしまう”
「お前自身も……味わえばいい…………」
「城付きに戻って来るつもりはないか?」
地下牢から出ると、そこには王太子殿下とモンテルアーノ様が居た。
「ナディア次第ですね。」
ナディアが城付きになると言うなら、戻っても良いとは思うが………おそらく、ナディアは城付きにはならないだろう。
「イカレ女が、正常のままの可能性は?」
「0です。残っていた聖女の魔力に無効化を掛けてから、やりましたからね。」
「「……………」」
「そ………そうか………」
「それでは、後は頼みます……」
引き攣った顔をした王太子殿下とモンテルアーノ様に挨拶をした後、私は魔道士棟の客室へと帰った。
それから3日後、焦点の合っていない目をした聖女シェイラは、一言も言葉を発することなく、辺境地にある修道院へと送られたのだった。
******
あれから1年半が経ち、私は学園で3度目の新年生を迎えた。今年は、平民の魔道士見習いの生徒が2人もいると言う事で、何やらダレルさんは嬉しそうだ。
そう─ダレルさんと私は、スフィール領の役所には戻らず、正式に学園で講師と助手として勤めている。
“帰れず”─の間違いかな?
1年半前、これからどうするのか?─と訊かれた時
「モンテルアーノ様のことは……好き…なんだと思いますけど、私は……城付きは嫌です。なので、スフィール領に──」
「なら、助手を続けるのはどうだ?」
「え?」
と、モンテルアーノ様に提案されたのが、ダレルさんの講師と私の助手の正式契約だった。
そうすれば、ダレル殿も安心するだろう─と。
「それに、ナディアがようやく俺に落ちて好きだと言ってくれたのに、俺がナディアをスフィールに帰す訳ないだろう?まぁ、落ちてなくても帰す気はなかったけどね。」
いつもと同じ優しい笑顔な筈なのに、背中がゾクゾクしたのは気のせいに違いない。
兎に角、その話はトントン拍子に進んだ。
学園としては、“褐色の魔道士”が講師で、その褐色の魔道士が目をかけていて、王族にも伝手がある私が助手と言う事で、喜んで受け入れたそうだ。
「スフィール領に帰れなくてすみません。」と謝れば、「帰らないと選択したのは私自身だし、帰ろうと思えばいつても帰れるから。」と、ダレルさんは笑ってくれた。
そんなダレルさんの机の上には、学園でもアンリエットさんの姿絵が置かれている。
「ナディア、ダレル殿、お疲れ様。」
「モンテルアーノ様?」
「お疲れ様です。」
入学式が終わり、今日、生徒達から集めた書類を整理していると、来賓として参加していたモンテルアーノ様がやって来た。
「私は外すから、ゆっくりどうぞ」と言って、ダレルさんは部屋から出て行ってしまった。
ーダレルさんに気を使ってもらうとか……恥ずかしい!ー
「あー……ナディアだ……」と言いながら、ギュッと抱きつかれた。
「えっ!?いや、ちょっ……ここ、学園ですよ!?」
「誰も居ないだろう?それに、ナディア不足なんだ。」
「えー……」
そんな恥ずかしい事を………
新年度前後は色々と忙しく、会うのも久し振りだった。
「モンテルアー………」
「ん?」
「……オードリック……さん…」
「“さん”も要らないねど、仕方無いか。で?何?」
と、私を抱きしめている力を緩めて、今度は顔を近付けて私と目を合わせる。この距離には、未だに慣れないし、バクバクと心臓も痛い。
「えっと……久し振りに会えて、私も……嬉しいです」
「ゔ─────っ…………」
モンテルアーノ様改め、オードリックさんは、呻き声を上げながら私の肩に顔を埋める。何故か、時々オードリックさんはこうやって呻き声をあげて暫く固まってしまうのだ。
「オードリックさん?大丈夫ですか?」
と、背中をポンポンと叩くと
「大丈夫じゃないから、今すぐ帰ろう」
と言われて、グイグイと手を引かれて学園を後にした。
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