46 / 61
第三章ー学園生活ー
スペイシー邸②
しおりを挟む
夕食は、懐かしい味を含んでいた。
ありふれた食事の中に、スペイシー家特有の物があった。父が甘い物が好きで、当時の料理長が甘目の料理をいくつか考案した物。きっと、引き継がれているんだろう。気が緩むと涙が出そうになるけど─
「ナディア、これ、食べた事ある?美味しいぞ?」
「………」
何て言いながら、モンテルアーノ様が私の目の前に、一口サイズにカットされた物を掲げて、ニッコリ笑って来るのだ。
ーコレをどうしろと?ー
「モンテルアーノ様、“あーん”なんてしませんよ?アデル様、そんな期待の籠った瞳で見ないで下さい。ダレルさん、口元がニヤニヤしてるの、我慢できてませんよ?」
こんな調子で、涙なんてスッ─と引き返して行くのだ。有り難いやら恥ずかしいやら疲れるやら……。
「本当に、ナディアはなかなか流れてくれないな。」
「流れませんよ?」
「そこがまた、可愛いところだけどね。」
「はい!?」
「えっと…食事は終わったから、私は先に出るから、後は2人で仲良くしてくれるかな?」
「あ、ダレル様、私も一緒に行きますわ。」
ニコニコ微笑むアデル様とダレルさんに、うんうんと頷いている使用人達。
「私も行きますよ!」
「それは残念だ。」
私も慌ててアデル様達の後を追いかけた。
移動先はサロン。そこで、明日の予定を聞かされた。
今日は不在だったアデル様の兄─現スペイシー侯爵が、明日私達に挨拶をしたいからと、朝食を一緒に取る事になった。そして、午前中の間に、色んな魔具を見せてくれるそうだ。
昼食をとった後、いい時間になれば帰る─と言う流れになった。
「そんな感じになりますけど、何か不明な点はなかったですか?」
アデル様が私達に確認するように訊くと
「アデル様……もし可能であれば……100年前に被害に遭った……令嬢のお墓に、花を手向けさせてもらえませんか?」
「アドリーヌ様の…ですか?」
「はい。今回の事で、何かと縁ができてしまいましたから、どうしても気になってしまって……」
「勿論、構いませんよ。明日、ご案内しますね。」
そして、魔具を見せてもらった後、アドリーヌのお墓に行く事になった。
ナディアがアドリーヌのお墓に行く事になるとは───
今日は眠れるかな?なんて、心配したりもしたけど、モンテルアーノ様に色々と精神的な攻撃を受けたせいか、それとも、就寝前にモンテルアーノ様が淹れてくれたハーブティーを飲んだお陰か、ベッドに入って目を閉じれば────直ぐに眠りへと落ちた。
今世の私は、少し逞しくなれたようです。
******
『****は、僕が騎士になって、守ってあげる。』
『ありがとう、*****』
『僕は、****の為だけの騎士だから。』
何だか、懐かしい夢をみた気がするけど、何を見たのかは覚えていなかった。
ここはスペイシー邸。アドリーヌの頃の夢でもみたのかもしれない。それは、嫌なものではなく、温かいものだったような気がした。
朝食に現れたスペイシー侯爵は、貴族名鑑に載っていた絵姿よりも綺麗な顔立ちをしていた。スペイシー家特有の、ピンクゴールドの髪に碧色の瞳だ。
アドリーヌが死んだ後、遠縁から養子を迎え入れたと言っていたけど、この色が途絶える事がなかったと言う事は、その子もまた、この色を持っていたのかもしれない。
もともと、モンテルアーノ様とダレルさんは面識がある為、朝食をとっている間は楽しそうに話をしていた。スペイシー侯爵も、アデル様のように気さくな人だった。
今日も仕事で登城する為、朝食後「私はこれで失礼しますが、何かあった時はいつでもアデルや私に言って下さい。最優先で動きますから。」と言って、そのまますぐに食堂から出て行った。
朝食後はそれぞれの部屋で少し休んでから、アデル様のお迎えで、色んな魔具を見せてもらう為に別邸へとやって来た。魔具の研究などは、この別邸の地下室でされているそうだ。
その地下室には、アデル様の他に3人の魔道士が居た。この3人の魔道士は、このスペイシー家と契約を結んで、ここで魔具の研究や開発をしているそうだ。
「何か気になる物があれば訊いて下さい。では、ゆっくりと見て下さいね。」
ズラリと並んだ魔具。魔具には見えず、ただの装飾品のような物まであり、一体どんな魔具なの?と言う物が多く、その度に質問をするけど、アデル様や魔道士達は嫌な顔をする事はなく、一つ一つ丁寧に説明してくれた。
本当に、100年前には考えもしなかった物がたくさんあった。こんな小さな石に大きな魔力を込めるのは、本当に大変だっただろうと思う。その辺りの技術?能力?は、このスペイシー家に於いて極秘扱いなのだそうだ。兎に角、ここに居る魔道士3人が、とても楽しそうな顔をして語っているのを見ると、3人とも“魔道士馬鹿”である事に違いないだろう。
「これは………」
そうして、私はある魔具に目が留まった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
:.* ♡(°´˘`°)/ ♡ *.:
ありふれた食事の中に、スペイシー家特有の物があった。父が甘い物が好きで、当時の料理長が甘目の料理をいくつか考案した物。きっと、引き継がれているんだろう。気が緩むと涙が出そうになるけど─
「ナディア、これ、食べた事ある?美味しいぞ?」
「………」
何て言いながら、モンテルアーノ様が私の目の前に、一口サイズにカットされた物を掲げて、ニッコリ笑って来るのだ。
ーコレをどうしろと?ー
「モンテルアーノ様、“あーん”なんてしませんよ?アデル様、そんな期待の籠った瞳で見ないで下さい。ダレルさん、口元がニヤニヤしてるの、我慢できてませんよ?」
こんな調子で、涙なんてスッ─と引き返して行くのだ。有り難いやら恥ずかしいやら疲れるやら……。
「本当に、ナディアはなかなか流れてくれないな。」
「流れませんよ?」
「そこがまた、可愛いところだけどね。」
「はい!?」
「えっと…食事は終わったから、私は先に出るから、後は2人で仲良くしてくれるかな?」
「あ、ダレル様、私も一緒に行きますわ。」
ニコニコ微笑むアデル様とダレルさんに、うんうんと頷いている使用人達。
「私も行きますよ!」
「それは残念だ。」
私も慌ててアデル様達の後を追いかけた。
移動先はサロン。そこで、明日の予定を聞かされた。
今日は不在だったアデル様の兄─現スペイシー侯爵が、明日私達に挨拶をしたいからと、朝食を一緒に取る事になった。そして、午前中の間に、色んな魔具を見せてくれるそうだ。
昼食をとった後、いい時間になれば帰る─と言う流れになった。
「そんな感じになりますけど、何か不明な点はなかったですか?」
アデル様が私達に確認するように訊くと
「アデル様……もし可能であれば……100年前に被害に遭った……令嬢のお墓に、花を手向けさせてもらえませんか?」
「アドリーヌ様の…ですか?」
「はい。今回の事で、何かと縁ができてしまいましたから、どうしても気になってしまって……」
「勿論、構いませんよ。明日、ご案内しますね。」
そして、魔具を見せてもらった後、アドリーヌのお墓に行く事になった。
ナディアがアドリーヌのお墓に行く事になるとは───
今日は眠れるかな?なんて、心配したりもしたけど、モンテルアーノ様に色々と精神的な攻撃を受けたせいか、それとも、就寝前にモンテルアーノ様が淹れてくれたハーブティーを飲んだお陰か、ベッドに入って目を閉じれば────直ぐに眠りへと落ちた。
今世の私は、少し逞しくなれたようです。
******
『****は、僕が騎士になって、守ってあげる。』
『ありがとう、*****』
『僕は、****の為だけの騎士だから。』
何だか、懐かしい夢をみた気がするけど、何を見たのかは覚えていなかった。
ここはスペイシー邸。アドリーヌの頃の夢でもみたのかもしれない。それは、嫌なものではなく、温かいものだったような気がした。
朝食に現れたスペイシー侯爵は、貴族名鑑に載っていた絵姿よりも綺麗な顔立ちをしていた。スペイシー家特有の、ピンクゴールドの髪に碧色の瞳だ。
アドリーヌが死んだ後、遠縁から養子を迎え入れたと言っていたけど、この色が途絶える事がなかったと言う事は、その子もまた、この色を持っていたのかもしれない。
もともと、モンテルアーノ様とダレルさんは面識がある為、朝食をとっている間は楽しそうに話をしていた。スペイシー侯爵も、アデル様のように気さくな人だった。
今日も仕事で登城する為、朝食後「私はこれで失礼しますが、何かあった時はいつでもアデルや私に言って下さい。最優先で動きますから。」と言って、そのまますぐに食堂から出て行った。
朝食後はそれぞれの部屋で少し休んでから、アデル様のお迎えで、色んな魔具を見せてもらう為に別邸へとやって来た。魔具の研究などは、この別邸の地下室でされているそうだ。
その地下室には、アデル様の他に3人の魔道士が居た。この3人の魔道士は、このスペイシー家と契約を結んで、ここで魔具の研究や開発をしているそうだ。
「何か気になる物があれば訊いて下さい。では、ゆっくりと見て下さいね。」
ズラリと並んだ魔具。魔具には見えず、ただの装飾品のような物まであり、一体どんな魔具なの?と言う物が多く、その度に質問をするけど、アデル様や魔道士達は嫌な顔をする事はなく、一つ一つ丁寧に説明してくれた。
本当に、100年前には考えもしなかった物がたくさんあった。こんな小さな石に大きな魔力を込めるのは、本当に大変だっただろうと思う。その辺りの技術?能力?は、このスペイシー家に於いて極秘扱いなのだそうだ。兎に角、ここに居る魔道士3人が、とても楽しそうな顔をして語っているのを見ると、3人とも“魔道士馬鹿”である事に違いないだろう。
「これは………」
そうして、私はある魔具に目が留まった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
:.* ♡(°´˘`°)/ ♡ *.:
48
お気に入りに追加
788
あなたにおすすめの小説
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
お嬢様のために暴君に媚びを売ったら愛されました!
近藤アリス
恋愛
暴君と名高い第二王子ジェレマイアに、愛しのお嬢様が嫁ぐことに!
どうにかしてお嬢様から興味を逸らすために、媚びを売ったら愛されて執着されちゃって…?
幼い頃、子爵家に拾われた主人公ビオラがお嬢様のためにジェレマイアに媚びを売り
後継者争い、聖女など色々な問題に巻き込まれていきますが
他人の健康状態と治療法が分かる特殊能力を持って、お嬢様のために頑張るお話です。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています
※完結しました!ありがとうございます!
1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする
桜乃
恋愛
僕、ミカエル・アルフォントは恋に落ちた。
義姉クラリス・アルフォントに。
義姉さまは、僕の気持ちはもちろん、同じく義姉さまに恋している、この国の王子アルベルトと友人のジェスターの気持ちにも、まったく、これっぽっちも気がつかない。
邪魔して、邪魔され、そんな日々。
ある日、義姉さまと僕達3人のバランスが崩れる。
魔道士になった義姉さまは、王子であるアルベルトと婚約する事になってしまったのだ。
それでも、僕は想い続ける。
そして、絶対に諦めないから。
1番近くて、1番遠い……そんな義姉に恋をした、一途な義弟の物語。
※不定期更新になりますが、ストーリーはできておりますので、きちんと完結いたします。
※「鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった」に出てくる、ミカエル・アルフォントルートです。
同じシチュエーションでリンクしているところもございますが、途中からストーリーがまったく変わります。
別の物語ですので「鈍感令嬢に〜」を読んでない方も、単独でお読みいただけると思います。
※ 同じく「鈍感令嬢に〜」にでてくる、最後の1人。
ジェスタールート「グリム・リーパーは恋をする ~最初で最後の死神の恋~」連載中です。
ご縁がございましたらよろしくお願いいたします。
※連載中に題名、あらすじの変更、本文の加筆修正等する事もございます。ストーリー展開に大きく影響はいたしませんが、何卒、ご了承くださいませ。
こんなに遠くまできてしまいました
ナツ
恋愛
ツイてない人生を細々と送る主人公が、ある日突然異世界にトリップ。
親切な鳥人に拾われてほのぼのスローライフが始まった!と思いきや、こちらの世界もなかなかハードなようで……。
可愛いがってた少年が実は見た目通りの歳じゃなかったり、頼れる魔法使いが実は食えない嘘つきだったり、恋が成就したと思ったら死にかけたりするお話。
(以前小説家になろうで掲載していたものと同じお話です)
※完結まで毎日更新します
『完結』孤児で平民の私を嫌う王子が異世界から聖女を召還しましたが…何故か私が溺愛されています?
灰銀猫
恋愛
孤児のルネは聖女の力があると神殿に引き取られ、15歳で聖女の任に付く。それから3年間、国を護る結界のために力を使ってきた。
しかし、彼女の婚約者である第二王子はプライドが無駄に高く、平民で地味なルネを蔑み、よりよい相手を得ようと国王に無断で聖女召喚の儀を行ってしまう。
高貴で美しく強い力を持つ聖女を期待していた王子たちの前に現れたのは、確かに高貴な雰囲気と強い力を持つ美しい方だったが、その方が選んだのは王子ではなくルネで…
平民故に周囲から虐げられながらも、身を削って国のために働いていた少女が、溺愛されて幸せになるお話です。
世界観は独自&色々緩くなっております。
R15は保険です。
他サイトでも掲載しています。
【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる