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第三章ー学園生活ー
ダレル
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「ダレルさん、おはようございます。今日から暫くの間、宜しくお願いします。」
「おはようございます、ナディア。こちらこそ宜しくお願いしますね。」
今日は早目に登校し、そのまま門の所でダレルさんが来るのを待っていた。
そのダレルさんは、講師をする間は王城の客室で寝泊まりする事になっていて、王城と学園は近い場所にある為、ダレルさんは歩いてやって来た。
「では、部屋迄案内しますね」
と、私とダレルさんは一緒に学園の門を潜り抜けた。
「今日は、午前中に2年生と4年生の授業と、午後からは早速1年生のAクラスとBクラスの授業があります。」
第三王子や聖女─シェイラ=ペイトリンが居るクラスだ。
「初日に彼女を直接目で確認できるのは、ありがたいね。」
と、いつものように穏やかに笑うダレルさん。その笑顔に、少し緊張していた気持ちも和らいだ。
2年生と4年生の授業は運動場で行われた。
今日から暫くの間、ルシエント様に代わりに、ダレルさんが講師に就くと説明すると、残念がる生徒も居たが、授業を進めるうちに、ダレルさんの実力が何となく分かったのだろう。途中からは、やっぱりキラキラとした眼差しでダレルさんを見つめるようになっていた。流石は実力主義な集団である。
それに、ダレルさんの指導も、とても分かり易かったと言うのもあるだろう。
昼食は、極力第三王子や聖女と関わらないようにする為、2人でそのまま部屋でお弁当を食べた。ダレルさんのお弁当は王城で用意してもらった物らしく、それはそれは豪華なお弁当だった。
「午後からの授業は2コマだけで、先ずはBクラスで、最後にAクラスだったかな?」
「はい、そうです。1日最後の授業で、1年Aクラスに当たります。」
いよいよ、聖女─シェイラ=ペイトリンとの対面だ。
今日の1年生の授業も運動場で行われるが、特に新しい魔法などの指導はせず、今週末に行う実地試験に向けての練習、確認作業をさせる事にしている。そのせいで、第三王子と聖女の距離は、どうしても近くなってしまうだろう。
ールシエント様のせいで……ー
そっとため息を吐き、運動場でAクラスの生徒が来るのをダレルさんと待っていると、少しずつ生徒がやって来た。
その中で、すぐに視界に入る金髪と黒髪の2人。それが、第三王子アルビー様と聖女シェイラだ。もう既に、2人並んで歩いている。その後ろに、側近2人とオレリア様が居る。
「──ん?」
「ダレルさん、どうかし────」
私の横に居たダレルさんは、一言声を出した後、何故か、何かの魔法を展開させた。その魔法は、水滴を垂らした後の波紋の様に静かに広がって行くような魔法。おそらく、私以外は気付いていない。私も何か他に気を取られていたりしたら、気付いていないぐらいの静かな魔法なのに、かなりの広範囲に広がっていく。
ーダレルさんって……お役所で埋もれてて良い人じゃないんじゃない!?ー
その魔法が生徒達の足下にまで広がっていくが、勿論、生徒達はソレに全く気付いていない──が。
「──っ!?」
1人だけ、その魔法が足元に触れた時、僅かに顔を歪ませた。
「アタリ……か……」
「え?」
「もう授業が始まるから、後で説明するよ。」
「分かりました。」
私はダレルさんを見て返事をしたけど、ダレルさんはその人物を見つめたままだった。
あれからはダレルさんも、いつも通りのダレルさんに戻り、授業も特に問題無く終わり、今は部屋で1日の纏めをしている。
「第三王子達も、スペイシー家の魔具を着けてましたけど、今日はまだ特に変わった様子はなかったですね。」
「あの魔具は、今掛けられている魔法を弾くだけで、既に精神に掛けられているものを弾く訳ではないからね。掛けられているものは、別に解呪が必要となるし、一気に解呪すると精神に悪影響を及ぼす可能性があるから、ゆっくり少しずつ解呪する必要があるんだ。」
ゆっくり…少しずつ………
ふと、あの婚約者の姿が思い浮かんだ。
彼は、優しかった。いつも笑顔で──
最後に目にした彼は、恐ろしかった─
ーそれは……魅了の解呪を一気にしたせいで?もしそうなら……彼もまた、完璧な被害者だー
グッと手に力が入った時、コンコンと部屋の扉がノックされ、ダレルさんが「どうぞ」と入室を促し、部屋に入って来たのは、モンテルアーノ様だった。
どうやら、今日は定期的に学園に来ている日だったようで、“話がある”と、ダレルさんが声を掛けていたそうだ。そして、やっぱり、ダレルさんはこの部屋全体に結界を張った。
「やはり、あの聖女─シェイラ=ペイトリンは、何かしらの魔法を使っていますね。」
基本、学園内では、授業や先生に認められた場合以外では魔法を使ってはいけない事になっている。生徒が勝手に魔法を発動させると、感知するシステムになっている為、生徒が魔法を使えば直ぐに分かるようになっている。
「でも……システムは反応してませんでしたよね?」
「反応しなかったのは、魔法の授業が行われる運動場だったからだと思う。」
確かに。魔法の授業の場であれば、生徒が魔法を使ってもシステムは反応しない。
「あ、ひょっとして!」
「そう。私が授業が始まる前に発動させた魔法は、誰が魔法を使っているか調べると同時に、その魔法を無効化する為の魔法だ。それで、その探知魔法に引っ掛かったのが──シェイラ=ペイトリンだったんだ。」
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
❀.(*´▽`*)❀.
「おはようございます、ナディア。こちらこそ宜しくお願いしますね。」
今日は早目に登校し、そのまま門の所でダレルさんが来るのを待っていた。
そのダレルさんは、講師をする間は王城の客室で寝泊まりする事になっていて、王城と学園は近い場所にある為、ダレルさんは歩いてやって来た。
「では、部屋迄案内しますね」
と、私とダレルさんは一緒に学園の門を潜り抜けた。
「今日は、午前中に2年生と4年生の授業と、午後からは早速1年生のAクラスとBクラスの授業があります。」
第三王子や聖女─シェイラ=ペイトリンが居るクラスだ。
「初日に彼女を直接目で確認できるのは、ありがたいね。」
と、いつものように穏やかに笑うダレルさん。その笑顔に、少し緊張していた気持ちも和らいだ。
2年生と4年生の授業は運動場で行われた。
今日から暫くの間、ルシエント様に代わりに、ダレルさんが講師に就くと説明すると、残念がる生徒も居たが、授業を進めるうちに、ダレルさんの実力が何となく分かったのだろう。途中からは、やっぱりキラキラとした眼差しでダレルさんを見つめるようになっていた。流石は実力主義な集団である。
それに、ダレルさんの指導も、とても分かり易かったと言うのもあるだろう。
昼食は、極力第三王子や聖女と関わらないようにする為、2人でそのまま部屋でお弁当を食べた。ダレルさんのお弁当は王城で用意してもらった物らしく、それはそれは豪華なお弁当だった。
「午後からの授業は2コマだけで、先ずはBクラスで、最後にAクラスだったかな?」
「はい、そうです。1日最後の授業で、1年Aクラスに当たります。」
いよいよ、聖女─シェイラ=ペイトリンとの対面だ。
今日の1年生の授業も運動場で行われるが、特に新しい魔法などの指導はせず、今週末に行う実地試験に向けての練習、確認作業をさせる事にしている。そのせいで、第三王子と聖女の距離は、どうしても近くなってしまうだろう。
ールシエント様のせいで……ー
そっとため息を吐き、運動場でAクラスの生徒が来るのをダレルさんと待っていると、少しずつ生徒がやって来た。
その中で、すぐに視界に入る金髪と黒髪の2人。それが、第三王子アルビー様と聖女シェイラだ。もう既に、2人並んで歩いている。その後ろに、側近2人とオレリア様が居る。
「──ん?」
「ダレルさん、どうかし────」
私の横に居たダレルさんは、一言声を出した後、何故か、何かの魔法を展開させた。その魔法は、水滴を垂らした後の波紋の様に静かに広がって行くような魔法。おそらく、私以外は気付いていない。私も何か他に気を取られていたりしたら、気付いていないぐらいの静かな魔法なのに、かなりの広範囲に広がっていく。
ーダレルさんって……お役所で埋もれてて良い人じゃないんじゃない!?ー
その魔法が生徒達の足下にまで広がっていくが、勿論、生徒達はソレに全く気付いていない──が。
「──っ!?」
1人だけ、その魔法が足元に触れた時、僅かに顔を歪ませた。
「アタリ……か……」
「え?」
「もう授業が始まるから、後で説明するよ。」
「分かりました。」
私はダレルさんを見て返事をしたけど、ダレルさんはその人物を見つめたままだった。
あれからはダレルさんも、いつも通りのダレルさんに戻り、授業も特に問題無く終わり、今は部屋で1日の纏めをしている。
「第三王子達も、スペイシー家の魔具を着けてましたけど、今日はまだ特に変わった様子はなかったですね。」
「あの魔具は、今掛けられている魔法を弾くだけで、既に精神に掛けられているものを弾く訳ではないからね。掛けられているものは、別に解呪が必要となるし、一気に解呪すると精神に悪影響を及ぼす可能性があるから、ゆっくり少しずつ解呪する必要があるんだ。」
ゆっくり…少しずつ………
ふと、あの婚約者の姿が思い浮かんだ。
彼は、優しかった。いつも笑顔で──
最後に目にした彼は、恐ろしかった─
ーそれは……魅了の解呪を一気にしたせいで?もしそうなら……彼もまた、完璧な被害者だー
グッと手に力が入った時、コンコンと部屋の扉がノックされ、ダレルさんが「どうぞ」と入室を促し、部屋に入って来たのは、モンテルアーノ様だった。
どうやら、今日は定期的に学園に来ている日だったようで、“話がある”と、ダレルさんが声を掛けていたそうだ。そして、やっぱり、ダレルさんはこの部屋全体に結界を張った。
「やはり、あの聖女─シェイラ=ペイトリンは、何かしらの魔法を使っていますね。」
基本、学園内では、授業や先生に認められた場合以外では魔法を使ってはいけない事になっている。生徒が勝手に魔法を発動させると、感知するシステムになっている為、生徒が魔法を使えば直ぐに分かるようになっている。
「でも……システムは反応してませんでしたよね?」
「反応しなかったのは、魔法の授業が行われる運動場だったからだと思う。」
確かに。魔法の授業の場であれば、生徒が魔法を使ってもシステムは反応しない。
「あ、ひょっとして!」
「そう。私が授業が始まる前に発動させた魔法は、誰が魔法を使っているか調べると同時に、その魔法を無効化する為の魔法だ。それで、その探知魔法に引っ掛かったのが──シェイラ=ペイトリンだったんだ。」
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