上 下
13 / 61
第2章ー魔道士ー

魅力的なエサ

しおりを挟む
リゼットは、お昼休みの20分前に魔法科に戻って来た為、ランチも一緒にとる事ができた。
特に新しい話はなく、王城付きになる為の必要事項の確認や書類の作成をした後、今後のスケジュールの確認をして終わったそうだ。
それとなく、私の事を訊いてくれたそうたけど、教えてはくれなかったそうだ。私としても、一体どんな提案なのかは気になるけど、仕方無い。兎に角、お昼休みが終わったら応接室に来て欲しいとの事だった。

「それにしても、ルシエント様ってイケメンだよね。恋人が居ないのが不思議だわ。」

「私からしたら、美人なリゼットに恋人が居ないのも不思議だけどね?」

「“美人”ってところは有り難く受け取っておくわ。恋人に関しては…私より強い人が居たら考えるわ。」

2属性持ちの攻撃タイプのエリート(確定)より強い人………もう、ルシエント様ぐらいしかいないんじゃないかなぁ?確か、ルシエント様も攻撃タイプじゃなかったっけ?ルシエント様の性格とかは知らないけど、見た目だけで言うと、2人並ぶとお似合いな2人だよね。同じ魔道士で同じ伯爵位だし。

ーうん。恋愛事は、見てる分には……楽しいかもー

と、少し明るい?気持ちのままお昼休みを過ごす事ができ、私はそのままの気持ちで応接室へと向かった。






******


「助手───ですか?」

「そう。助手。」

そう言って、ニッコリ微笑むのはオスニエル=ルシエント様。そのルシエント様の提案とは──

王都にある王立の学園は、15歳から18歳の子供が通う学校の一つであり、そこには主に貴族の子供達が通っている。学力があれば、平民でも通う事ができ、成績が優秀であれば、平民に限っては学費が免除されるシステムもあるそうだ。それは、100年前にはなかったシステムだ。
そして、その学園には色んな学びの科がある。
殆どの学生が普通科になるが、他に、経済科、騎士科、執事侍女科、魔法科がある。
その魔法科に、来年度からルシエント様が講師に就く事になったそうで、その為に、今助手を探している─との事だった。

「えっと…それで、どうして私が?私ではなくても、王都…ルシエント様の周りにもっと適任者が居るのでは?」

流石に、王城付きの魔道士仲間を助手として連れて行くのは無理だとしても、王都ともなれば、私なんかよりもっと優れた魔道士が居る筈だ。
それに…この容姿だ。女性の魔道士なら、ルシエント様が誘えば喜んで助手をしてくれるだろう。勿論、男性でも箔が付く─と、喜んでするだろうけど。

「それはそうかも知れないけど………ハッキリ言うけど、私は、喜ぶ者と仕事をする事が嫌なんだよね。」

ーん?“”?ー

「男性でも女性でもね。身近に媚を売って来るような人間が居るのは…迷惑でしかないんだよね。」

ーうわぁ…この人、ハッキリ言うなぁ…ー

「特に、女性なんかの粘っこい視線は嫌悪感しかないからね。それで、丁度、王都に来るディシリス嬢なら適任だと思ったけど、流石に王城付きになる年に同時に助手も─とは無理があるからね。」

確かに、リゼットは適任だろうけど、初めての事を同時にスタートさせるのは……微妙なところだろう。

今回の魔道士入門試験の試験官として、補佐役のリゼットと対面した時、ルシエント様自分に対しての態度を取ったリゼットに好感を持ったそうだ。一体、この人はどれだけモテるのか……。
なんとか助手もさせられないか?と思案していたところ、またまた自分に対して何の感情も持たない女性─ナディアわたしに会ったと。

「本当に…君は私に対して普通でもなく、無関心だよね?」

「…………」

ーなんとも返事がし難い質問ですよね?ー

「あ、怒ったり気を悪くした訳じゃないから。寧ろ、気持ちよかった位だから。」

ーえ?それはそれで…怖いんですけど?ー

「あーうん。何を言ってもある意味普通の対応をするのが良いよね。私は伯爵家の嫡男で、王城付きの魔道士で、更には王太子の側近だからね。それに、この容姿だから……どうしても周りは普通には接して来ないんだよね。まぁ、それはそれで仕方無い─と思ってはいるけどね。」

そのお陰で良い思いをする事もあるけど─と、ルシエント様は苦笑した。

兎に角、助手に関しては、多少の媚は仕方無いか─と思っていたところで、今回補佐役としてその務めをキッチリこなしたリゼットと私。オマケに自分に対して媚が全く無かった─と言う事で、私に声を掛けたと。

「それに、君の受験生達への対応は、本当に素晴らしかったしね。サポートするタイミングも完璧だったし…何より、最後の魔法の暴走に対する咄嗟の判断と対処は…目を見張るものがあった。君なら、助手としても、キッチリやってくれるだろう─と。」

だから、助手の話の事を考えてみて欲しい─

申し訳無いが、色々と準備があるから、返事は1週間以内で頼む─

引き受けてくれるなら、“魔法の書”だけではなく、王家所有の書も読めるように手配しよう─



ルシエント様は、「これでもか!」と言う程のをばら撒いてから、応接室から出て行った。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

お嬢様のために暴君に媚びを売ったら愛されました!

近藤アリス
恋愛
暴君と名高い第二王子ジェレマイアに、愛しのお嬢様が嫁ぐことに! どうにかしてお嬢様から興味を逸らすために、媚びを売ったら愛されて執着されちゃって…? 幼い頃、子爵家に拾われた主人公ビオラがお嬢様のためにジェレマイアに媚びを売り 後継者争い、聖女など色々な問題に巻き込まれていきますが 他人の健康状態と治療法が分かる特殊能力を持って、お嬢様のために頑張るお話です。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています ※完結しました!ありがとうございます!

1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする

桜乃
恋愛
僕、ミカエル・アルフォントは恋に落ちた。 義姉クラリス・アルフォントに。 義姉さまは、僕の気持ちはもちろん、同じく義姉さまに恋している、この国の王子アルベルトと友人のジェスターの気持ちにも、まったく、これっぽっちも気がつかない。 邪魔して、邪魔され、そんな日々。 ある日、義姉さまと僕達3人のバランスが崩れる。 魔道士になった義姉さまは、王子であるアルベルトと婚約する事になってしまったのだ。 それでも、僕は想い続ける。 そして、絶対に諦めないから。 1番近くて、1番遠い……そんな義姉に恋をした、一途な義弟の物語。 ※不定期更新になりますが、ストーリーはできておりますので、きちんと完結いたします。 ※「鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった」に出てくる、ミカエル・アルフォントルートです。 同じシチュエーションでリンクしているところもございますが、途中からストーリーがまったく変わります。 別の物語ですので「鈍感令嬢に〜」を読んでない方も、単独でお読みいただけると思います。 ※ 同じく「鈍感令嬢に〜」にでてくる、最後の1人。 ジェスタールート「グリム・リーパーは恋をする ~最初で最後の死神の恋~」連載中です。 ご縁がございましたらよろしくお願いいたします。 ※連載中に題名、あらすじの変更、本文の加筆修正等する事もございます。ストーリー展開に大きく影響はいたしませんが、何卒、ご了承くださいませ。

こんなに遠くまできてしまいました

ナツ
恋愛
ツイてない人生を細々と送る主人公が、ある日突然異世界にトリップ。 親切な鳥人に拾われてほのぼのスローライフが始まった!と思いきや、こちらの世界もなかなかハードなようで……。 可愛いがってた少年が実は見た目通りの歳じゃなかったり、頼れる魔法使いが実は食えない嘘つきだったり、恋が成就したと思ったら死にかけたりするお話。 (以前小説家になろうで掲載していたものと同じお話です) ※完結まで毎日更新します

『完結』孤児で平民の私を嫌う王子が異世界から聖女を召還しましたが…何故か私が溺愛されています?

灰銀猫
恋愛
孤児のルネは聖女の力があると神殿に引き取られ、15歳で聖女の任に付く。それから3年間、国を護る結界のために力を使ってきた。 しかし、彼女の婚約者である第二王子はプライドが無駄に高く、平民で地味なルネを蔑み、よりよい相手を得ようと国王に無断で聖女召喚の儀を行ってしまう。 高貴で美しく強い力を持つ聖女を期待していた王子たちの前に現れたのは、確かに高貴な雰囲気と強い力を持つ美しい方だったが、その方が選んだのは王子ではなくルネで… 平民故に周囲から虐げられながらも、身を削って国のために働いていた少女が、溺愛されて幸せになるお話です。 世界観は独自&色々緩くなっております。 R15は保険です。 他サイトでも掲載しています。

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚 不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。 私はきっとまた、二十歳を越えられないーー  一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。  二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。  三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――? *ムーンライトノベルズにも掲載

処理中です...