11 / 61
第2章ー魔道士ー
エリート魔道士
しおりを挟む
「「おつかれさまー」」
2年に1度の魔道士入門試験が終わり、私とリゼットは打ち上げにオシャレなお店──ではなく、役所内にある社員食堂へとやって来た。
最後の受験生の魔法が暴走した事で、その後の処理や報告書の作成などで予定より時間が掛かってしまい、時間が遅くなってしまったのだ。おまけに、やっぱり、明日の午前中にリゼットがルシエント様と、今後の事についての話しをする事になっているそうで、取り敢えず─と、社員食堂で打ち上げをする事になった。「今日は頑張ったから、オマケだよ」と、料理長であるブルーノさんからはデザートのケーキをオマケしてもらった。
「最後に魔法が暴走したみたいだけど、ナディアは大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。と言うか…最後の人だけじゃなくて、細々と何かとフォローしたよ…。」
30人の受験生が居たけど…多分、かなり難しいんじゃないかな?と思ってしまう感じだった。
リゼットも、私のその話を聞いて微妙な顔をしたから、午前中の試験を見て、リゼットも思うところがあった─と言う事なんだろう。
合否の判断をするのは、試験官であるルシエント様とダレルさんで、結果は3日後に通知される。2年前の試験では、20人受けて合格したのが2人だった。狭き門ではあるが、受験するのに年齢制限は無い為、何度も受ける人も居る。受かってからも“見習い”から始まり、“魔道士”になるまでも、個人差が出てくる。何年かければ魔道士になれる─のではなく、実力を付けて、更に魔道士試験に合格しなければ“魔道士”にはなれないのだ。“魔道士見習い”のまま、辞めていく者も居たりする、完璧な実力主義の世界である。
「ここだけの話、貴族令息の筈なのに、貴族のルールやマナーが残念な子が居たわ…」
伯爵令嬢であるリゼットが言うからには、その子は本当に残念な子だったんだろう。
「でも、その時思ったんだけど、ナディアって所作が綺麗だよね。確か…あの孤児院の院長が元侯爵夫人…だったっけ?その院長から指導されたりしたの?」
「あー…うん。院長には…色々指導してもらったよ。」
「やっぱりね!」
と、クスクス笑うリゼット。
確かに、院長は元侯爵夫人で旦那さんが亡くなった後、後継ぎがいなかった為、従弟の子に引き継がせた後、あの孤児院の院長になったそうだ。その院長から、「魔道士になりたいのなら、貴族の事をそれなりに知っておく事と、貴族のルールとマナーを身に付けておいた方が良いわ。」と、まだ幼かった私の“魔道士になりたい”と言う夢を、笑う事もせず応援してくれて、更には院長自ら貴族のルールやマナーを指導してくれた。
前世の記憶があった私は、それをスルスルとマスターしていって、院長には驚かれたけど。
「ねー、ナディア。ナディアも王都に行かない?ナディアだったら、魔力も問題なく…王城付きの魔道士になれると思うんだけど……」
「リゼット……」
“王城付きの魔道士”
魔道士にとっては憧れの職─エリートだ。平の魔道士とは何もかもが違う。
お給料は勿論の事、周りからの視線もガラリと変わる。気位だけが高い貴族からも、“王城付き”と言うだけで好意的に見られたりもするのだ。私だって、憧れないわけではない。ただ─王城が…王都が怖いのだ。
男性恐怖症ではないし、魘される事もないけど、やっぱり今でもあの時の冷たい目を覚えている。
「あぁ、ここに居たのか」
そこで声を掛けて来たのは、私達の上司であるダレルさんだった。
「「ダレルさん、お疲れ様です」」
ダレルさんも、遅めの夕食をとりに来たのか─と、思ったけど、そのダレルさんの後ろにもう1人の姿があった。
王城付き魔道士─オスニエル=ルシエント様だ。
「お疲れ様」と、ダレルさんの後ろからひょこっと現れて、リゼットと私に軽く手を上げて微笑んだ。
「あ、ひょっとして、リゼットを探してましたか?」
話をするのは明日─と聞いていたけど、軽く打ち合わせ?でもするのかな?
「リゼットだけじゃなくて、ナディアも探してたんだよ。」
「私も…ですか?」
ダレルさんの言葉に、私だけではなく、リゼットも首を傾げる。
「今日は2人には補佐役としてお世話になったから、お礼に食事でもと思って……でも、少し遅かったみたいだね。」
そう言って苦笑するのはルシエント様。
「お礼なんて…必要ありません。ちゃんと、ダレルさんからお手当を頂くので。お気持ちだけ、有り難く頂きます。」
ー王城、その上、王太子の側近の人との交流なんて、御免蒙りたいー
「うーん…それじゃあ…せめて、お茶だけでもどうかな?」
なんて、王城付き魔道士に言われてしまえば……
「ありがとうございます。」
「───────はい。」
と、言うしかないよね?
2年に1度の魔道士入門試験が終わり、私とリゼットは打ち上げにオシャレなお店──ではなく、役所内にある社員食堂へとやって来た。
最後の受験生の魔法が暴走した事で、その後の処理や報告書の作成などで予定より時間が掛かってしまい、時間が遅くなってしまったのだ。おまけに、やっぱり、明日の午前中にリゼットがルシエント様と、今後の事についての話しをする事になっているそうで、取り敢えず─と、社員食堂で打ち上げをする事になった。「今日は頑張ったから、オマケだよ」と、料理長であるブルーノさんからはデザートのケーキをオマケしてもらった。
「最後に魔法が暴走したみたいだけど、ナディアは大丈夫だった?」
「うん、大丈夫。と言うか…最後の人だけじゃなくて、細々と何かとフォローしたよ…。」
30人の受験生が居たけど…多分、かなり難しいんじゃないかな?と思ってしまう感じだった。
リゼットも、私のその話を聞いて微妙な顔をしたから、午前中の試験を見て、リゼットも思うところがあった─と言う事なんだろう。
合否の判断をするのは、試験官であるルシエント様とダレルさんで、結果は3日後に通知される。2年前の試験では、20人受けて合格したのが2人だった。狭き門ではあるが、受験するのに年齢制限は無い為、何度も受ける人も居る。受かってからも“見習い”から始まり、“魔道士”になるまでも、個人差が出てくる。何年かければ魔道士になれる─のではなく、実力を付けて、更に魔道士試験に合格しなければ“魔道士”にはなれないのだ。“魔道士見習い”のまま、辞めていく者も居たりする、完璧な実力主義の世界である。
「ここだけの話、貴族令息の筈なのに、貴族のルールやマナーが残念な子が居たわ…」
伯爵令嬢であるリゼットが言うからには、その子は本当に残念な子だったんだろう。
「でも、その時思ったんだけど、ナディアって所作が綺麗だよね。確か…あの孤児院の院長が元侯爵夫人…だったっけ?その院長から指導されたりしたの?」
「あー…うん。院長には…色々指導してもらったよ。」
「やっぱりね!」
と、クスクス笑うリゼット。
確かに、院長は元侯爵夫人で旦那さんが亡くなった後、後継ぎがいなかった為、従弟の子に引き継がせた後、あの孤児院の院長になったそうだ。その院長から、「魔道士になりたいのなら、貴族の事をそれなりに知っておく事と、貴族のルールとマナーを身に付けておいた方が良いわ。」と、まだ幼かった私の“魔道士になりたい”と言う夢を、笑う事もせず応援してくれて、更には院長自ら貴族のルールやマナーを指導してくれた。
前世の記憶があった私は、それをスルスルとマスターしていって、院長には驚かれたけど。
「ねー、ナディア。ナディアも王都に行かない?ナディアだったら、魔力も問題なく…王城付きの魔道士になれると思うんだけど……」
「リゼット……」
“王城付きの魔道士”
魔道士にとっては憧れの職─エリートだ。平の魔道士とは何もかもが違う。
お給料は勿論の事、周りからの視線もガラリと変わる。気位だけが高い貴族からも、“王城付き”と言うだけで好意的に見られたりもするのだ。私だって、憧れないわけではない。ただ─王城が…王都が怖いのだ。
男性恐怖症ではないし、魘される事もないけど、やっぱり今でもあの時の冷たい目を覚えている。
「あぁ、ここに居たのか」
そこで声を掛けて来たのは、私達の上司であるダレルさんだった。
「「ダレルさん、お疲れ様です」」
ダレルさんも、遅めの夕食をとりに来たのか─と、思ったけど、そのダレルさんの後ろにもう1人の姿があった。
王城付き魔道士─オスニエル=ルシエント様だ。
「お疲れ様」と、ダレルさんの後ろからひょこっと現れて、リゼットと私に軽く手を上げて微笑んだ。
「あ、ひょっとして、リゼットを探してましたか?」
話をするのは明日─と聞いていたけど、軽く打ち合わせ?でもするのかな?
「リゼットだけじゃなくて、ナディアも探してたんだよ。」
「私も…ですか?」
ダレルさんの言葉に、私だけではなく、リゼットも首を傾げる。
「今日は2人には補佐役としてお世話になったから、お礼に食事でもと思って……でも、少し遅かったみたいだね。」
そう言って苦笑するのはルシエント様。
「お礼なんて…必要ありません。ちゃんと、ダレルさんからお手当を頂くので。お気持ちだけ、有り難く頂きます。」
ー王城、その上、王太子の側近の人との交流なんて、御免蒙りたいー
「うーん…それじゃあ…せめて、お茶だけでもどうかな?」
なんて、王城付き魔道士に言われてしまえば……
「ありがとうございます。」
「───────はい。」
と、言うしかないよね?
49
お気に入りに追加
789
あなたにおすすめの小説
「次点の聖女」
手嶋ゆき
恋愛
何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。
私は「次点の聖女」と呼ばれていた。
約一万文字強で完結します。
小説家になろう様にも掲載しています。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
1番近くて、1番遠い……僕は義姉に恋をする
桜乃
恋愛
僕、ミカエル・アルフォントは恋に落ちた。
義姉クラリス・アルフォントに。
義姉さまは、僕の気持ちはもちろん、同じく義姉さまに恋している、この国の王子アルベルトと友人のジェスターの気持ちにも、まったく、これっぽっちも気がつかない。
邪魔して、邪魔され、そんな日々。
ある日、義姉さまと僕達3人のバランスが崩れる。
魔道士になった義姉さまは、王子であるアルベルトと婚約する事になってしまったのだ。
それでも、僕は想い続ける。
そして、絶対に諦めないから。
1番近くて、1番遠い……そんな義姉に恋をした、一途な義弟の物語。
※不定期更新になりますが、ストーリーはできておりますので、きちんと完結いたします。
※「鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった」に出てくる、ミカエル・アルフォントルートです。
同じシチュエーションでリンクしているところもございますが、途中からストーリーがまったく変わります。
別の物語ですので「鈍感令嬢に〜」を読んでない方も、単独でお読みいただけると思います。
※ 同じく「鈍感令嬢に〜」にでてくる、最後の1人。
ジェスタールート「グリム・リーパーは恋をする ~最初で最後の死神の恋~」連載中です。
ご縁がございましたらよろしくお願いいたします。
※連載中に題名、あらすじの変更、本文の加筆修正等する事もございます。ストーリー展開に大きく影響はいたしませんが、何卒、ご了承くださいませ。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる