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第2章ー魔道士ー

魔道士入門試験

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魔道士と言っても、魔力があれば誰でもなれる─訳ではない。学力は勿論の事、ある程度の貴族のマナーやルールも必要とされる。それは、魔道士になる事に身分は関係ないが、魔道士として働く事になった時、その相手が貴族である事の方が多いからだ。

全ての貴族が─ではないが、平民の魔道士と知ると喩え優秀な魔道士であっても、見下されたりする事がある。100年前よりは、かなりマシにはなっているけど。

なので、魔道士の入門試験は午前に筆記、午後に実技と、1日通して行われる。
そして、私は午後の実技試験の試験官の補佐を任されている。と言う事で、“前世の悪夢で魘されて”ではなく、“緊張で眠れなかった”から、顔色が悪いと言う事にした。
ここ数年は見なかった夢─前世。何故こんな、魔道士にとって大切な日にみるのか……。

「何も無ければ…良いけど………」
「ん?何か言った?」
「ううん、何でもないわ。リゼット、今日は頑張ろうね!」
「ええ!頑張りましょう!」

と、私とリゼットはそれぞれの準備に取り掛かった。






今回、この領地で試験を受けるのは30人。うち、10人が貴族だった。午前の筆記試験は学力試験で、基本的な語学や計算やこの国の歴史に関するモノと、貴族のルールに関するモノ。そして、貴族のマナーについての簡単な実地試験がある。
それが終わると、昼食を兼ねた休憩が入り、その後に魔法の実技試験が行われる。それも、一人一人個別に行われるのだ。

その為、順番はクジで決められる。
その試験官は、その試験会場となる場の魔道士長と、王城から派遣される、王城付きの魔道士─所謂エリートだ。そして、その2人の補佐役として、今回私が選ばれた。選ばれた理由は──魔力量が多いから。

「何かあったとしても、その魔力量で何とでもなるよね!?」

と、魔道士長上司に言われたら、“嫌”とは言えない。ひら魔道士の私には、ソレに従うしかない訳で…。

“王城付きの魔道士”─知ってる人ではないんだろうけど…できれば、王家や王都に関係する人とは…今世では関わり合いたくなんて…なかった…。それでも、今日1日だけ我慢すれば良いだけの話だ。それに、試験を目の当たりにする事ができるのは、正直に言うと……楽しみだ。





「あ、リゼット、お疲れ様。」

食堂でランチをしていると、午前中の試験の補佐を終えたリゼットがやって来た。

「ナディアは今からよね。頑張ってね!」
「うん。ありがとう。それじゃあ、行って来るけど…今日は終わったら、夜は一緒に食べようね!行って来ます!」

そう言って、私は試験会場となる訓練場へと向かった。






試験官としてやって来た王城付きの魔道士は

オスニエル=ルシエント様

火属性の金髪緑眼のイケメンで、何でも、王太子様の側近の1人らしい。何故、そんな立派な人が、こんな田舎領地な試験会場に試験官としてやって来たのか─
それは、多分、来月からリゼットが王城付きの魔道士となるからだろう。

リゼット=ディシリス

リゼットは伯爵家の令嬢で、土と水の二つの属性持ちで、可愛らしい顔とは反して、主に攻撃に特化している魔道士である。そのリゼットは来月で成人となる20歳になる。20歳になるとそれぞれ自立する事が許される為、優秀な魔道士であるリゼットは、それを機に─と王城付きへと昇進するのだ。
そのリゼットと会う為に来たのだろう。親友であるリゼットが王都へと行ってしまうのは寂しいけど、彼女の実力が認められるのは嬉しい限りだ。





「それじゃあ、今日は宜しくお願いしますね。」

と、ルシエント様は私達に軽く挨拶をした後、午後の実技試験を始めた。





ーうーん……今年の受験生は……かな?ー

魔道士は、相手が魔獣だったりもするから、先を見越した行動や臨機応変さも求められる。だけど、今回の受験生達は、色々と詰めが甘かったり咄嗟の判断が鈍い者が多いように感じる。

補佐の役目は、受験生が怪我をしたり魔力暴走を起こしたり、無理な魔力消費をさせないようにする事─なんだけど……ずーっと補佐をしまくっている状態だ。
そんな私を上司であるダレルさんは、ニヤニヤしながら見ている。

ー後で、特別手当でも請求しようー

「───うわぁっ!!」
「「「───っ!」」」

そんな事を考えていると、最後の受験生の魔法が暴走して物凄い勢いで威力が膨れ上がった。
私は迷う事なくルシエント様とダレルさんの前に立ち、スッ─と右手を振って小さな竜巻を作り、その暴走した魔法を絡め取るようにして吸い取り、そのまま暴走した魔法を消化させた。

「お二人とも大丈夫でしたか?」

後ろに居る2人に振り返る。

「流石はナディアだね。何ともないよ。ありがとう。」

と、ダレルさんはいつもの様子で笑っている。

ーうん。やっぱり特別手当は貰おう!ー

「───私も……大丈夫だ。ありがとう。」

何故か、ルシエント様からは、たっぷり間があってからお礼を言われた。

ーあぁ…助けてなんて必要なかったから……気を悪くしたのかもしれないー

と、その時の私はそう思ったのだった。






    
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