上 下
6 / 61
第1章ー前世ー

王都での出来事

しおりを挟む

「アドリーヌ!」
「お父様!お母様!」

修道院に来てから1年。1年ぶりに、父と母が私に会いに修道院へとやって来た。
もう、戸籍上では親子関係は無いが、“侯爵様”、“侯爵夫人”と呼ぼうものなら、母からは涙攻撃を受けてしまったから、誰も居ない時は─と、“お父様”、“お母様”と呼ぶ事になった。
そして、今は院長の計らいで修道院の応接室に私達3人だけにしてもらっているから、周りを気にすることなく話もできるようになった。

「アドリーヌ…最後に会った時より元気そうで良かったわ。」
「そうだな。少し…したか?」
「まぁ、お父様!でも……そうね……最近では食べる物全てが美味しくて。少し太ってしまったかも…ふふっ…」

毎日洗濯したり、掃除をしたり、たっぷり働くと、その分食事がとても美味しく感じて、ついつい食べ過ぎてしまったりしている─のだけど──

『何を言っているの!?アドリーヌのその量は、ようやく人並みになったってだけよ!もっと食べなさい!』

と、アーニーさんには怒られた。

ー解せないー

「さあ、アドリーヌ!アドリーヌの好きだったクッキーを持って来たから、一緒に食べながら…話でも聞かせてくれ。」
「はい!お父様!」

と、私は元気良く返事をした後、久し振りに3人でお茶をしながら話に花を咲かせた。









「アドリーヌも落ち着いたようだから…アドリーヌが知りたいと言うのなら……王都でのこの1年の間にあった話をするつもりで来たんだ。勿論、お前が必要無いと言うなら、私から話す事は無いが…どうする?」

と、ある程度話をした後、父が少し困ったように目を細めて、私を見つめている。

私は既に侯爵家からは除籍され、ただの平民─修道女となっている。もう、王族や貴族とは無縁。“聞きたくない”、“必要ない”と言えばそれで終わるけど──

「お父様。私も……どうなったのか……知っておく必要がある─と思っているので……教えて下さい。」
「分かった。それならば、私は嘘偽り無く全てをお前に話すが、どうしても不安になったり気分が悪くなったら、我慢せずに言う事。分かったね?」
「──はい。」

コクリ─と静かに頷くと、私の隣に座っていたお母様が私の手を優しく握ってくれた。







私も知っていた通り、第二王子とジョアンヌ様の婚約は続いていて、婚儀の日取りも決まっていて、ジョアンヌ様は王城で過ごしながら公務も行っていた──のだが。

「お前が修道院に入ってから半年程経った頃に、子爵令嬢が妊娠したんだ。第二王子との子をね」

そう。実は、第二王子と子爵令嬢の関係は……いたのだ。

、私から見た彼女はだった。でも…実際は違っていた─と言う事だ。被害者ぶっていたのだ。ギュッ─と、握りしめる手に力が入る。
では、の、彼女の私に縋る様な行動は何だったのか──

身分は子爵令嬢だが、彼女は光属性持ち─聖女だ。王太后様は“子爵”と言う血が王家に交じることを疎んじたが、運良く?悪く?王太后様の体調が悪くなり、そのまま王家所有の保養地に療養の為に引き籠もる事になり─

「それを機に、公爵側が一気に動いてな。第二王子とジョアンヌ様の婚約を解消させ、子爵令嬢をその後釜に据えたんだ。子爵令嬢だとしても、聖女は聖女だ。誰も反対はしなかった。あの娘本人も………喜んでいたよ。」

そう言った父は笑ってはいたけど、目には、どこか冷たいモノがあった。

そして、婚約を解消したジョアンヌ様は、隣国の王太子様自らが公爵邸を訪れて、ジョアンヌ様にプロポーズをしたらしい。友好関係にあった両国で、王太子と、第二王子の婚約者として会う事がよくあり、お互い、秘めた想いがあったのかもしれない。プロポーズをされて、隣国の王太子の婚約者となってからのジョアンヌ様は、とても幸せそうなんだとか─

ーそれなら…良かったー

色々気になる事やお礼やお祝いもしたいから、ジョアンヌ様に手紙でも書いてみよう。


「──それで……の……話も聞くかい?」

今でもハッキリと覚えている。
あの目に…もう、怯える事はないけど──

「───はい。」




1年前、私をこの修道院に送り届けて王都に帰ってから1週間程してから、父が彼の邸に訪れて、彼とその両親である侯爵夫妻にも、私を侯爵家から除籍し修道院に入った事を説明し、婚約解消を伝えたそうだ。

「オレ──私は、解消なんてしたくない!嫌です!」

それでもなお、彼は婚約解消を拒否したそうだけど、両親達が婚約解消を受け入れ、無事に解消する事ができた。ただ、彼だけは、私の居場所を必死になって探していたらしい。
その彼は彼で、“婚約者に手を上げた”と言う噂が広がり廃嫡となったのだが、隣国のとある女公爵の目に留まり、その公爵家に婿入りする事が決まったそうだ。


ちなみに、その女公爵は結婚と離婚を3回程繰り返した──38歳になる女公爵だそうだ。









❋エールやお気に入り登録をしていただいて、ありがとうございます。いつも、励みになっています!❋
ꕤ.(⑉˙ᗜ˙⑉).ꕤ



しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

逆行転生した悪役令嬢だそうですけれど、反省なんてしてやりませんわ!

九重
恋愛
我儘で自分勝手な生き方をして処刑されたアマーリアは、時を遡り、幼い自分に逆行転生した。 しかし、彼女は、ここで反省できるような性格ではなかった。 アマーリアは、破滅を回避するために、自分を処刑した王子や聖女たちの方を変えてやろうと決意する。 これは、逆行転生した悪役令嬢が、まったく反省せずに、やりたい放題好き勝手に生きる物語。 ツイッターで先行して呟いています。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

巻き込まれではなかった、その先で…

みん
恋愛
10歳の頃に記憶を失った状態で倒れていた私も、今では25歳になった。そんなある日、職場の上司の奥さんから、知り合いの息子だと言うイケメンを紹介されたところから、私の運命が動き出した。 懐かしい光に包まれて向かわされた、その先は………?? ❋相変わらずのゆるふわ&独自設定有りです。 ❋主人公以外の他視点のお話もあります。 ❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。すみません。 ❋基本は1日1話の更新ですが、余裕がある時は2話投稿する事もあります。

【完結】8年越しの初恋に破れたら、なぜか意地悪な幼馴染が急に優しくなりました。

大森 樹
恋愛
「君だけを愛している」 「サム、もちろん私も愛しているわ」  伯爵令嬢のリリー・スティアートは八年前からずっと恋焦がれていた騎士サムの甘い言葉を聞いていた。そう……『私でない女性』に対して言っているのを。  告白もしていないのに振られた私は、ショックで泣いていると喧嘩ばかりしている大嫌いな幼馴染の魔法使いアイザックに見つかってしまう。  泣いていることを揶揄われると思いきや、なんだか急に優しくなって気持ち悪い。  リリーとアイザックの関係はどう変わっていくのか?そしてなにやら、リリーは誰かに狙われているようで……一体それは誰なのか?なぜ狙われなければならないのか。 どんな形であれハッピーエンド+完結保証します。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~

サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

処理中です...