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❋新しい未来へ❋
60 私の望み
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「ジュリエンヌ=トワイアルなら…許可なんてなくても、それが簡単にできるんだ」
「許可なく……簡単に?」
「トワイアル王国が、竜王国の守護国となった大きな理由が、トワイアルが魔法に特化していたからだ」
そう。竜王国の守護国であるトワイアル王国は魔法、トルトニアは武に特化している。トルトニアの現国王陛下と王太子殿下は、この大陸の1、2を争う程の腕前で、この2人が居るだけでトルトニアの平和が護られるのでは?とも言われている程だ。そんな中、「ハロルド様は?」と言えば──
武の才能が無かった
それ故に、結婚と同時に公爵となり、武ではなく内政で兄である王太子殿下を支える事になっていたのだ。
「あの女は……腐っていても直系の王族だから、持っている魔力はかなりのモノなんだ。まぁ…今世に至っては、光属性に関してだけは微妙だが…あの女は、水属性もあって、そっちの魔力に関しては、今世でもかなりの魔力なんだ。その魔力のお陰で……あの女は、転移の魔法陣を使えるんだ」
“転移魔法陣”
あの魔法は、かなり高度なモノで、魔法陣を描くのにも魔力が必要で、展開するとなれば更に魔力が必要となる。勿論、魔法陣を描くのにもある程度の技術が必要で、簡単に扱える魔法ではない。
「もしかして……」
私が最期を迎える前に甘い香りがしていたのは──
「おそらく……あの女が俺にイーリャの実を使って俺を惑わせた後、イヴの元に転移して……イヴを竜王国の黒龍の目の前に……連れて来ていたんだと思う。転移した瞬間……魔法で眠らされて………」
だから……甘い香りがした後眠りに落ちて……次に目が覚めた時は……
「ジュリエンヌ様は、本当に……私の死を……望んでいたんですね。でも……今回では、今迄と違っていますよね?ハロルド様を呼び付けて何を?」
「本当は……イヴには浮島に閉じ込めて内緒にして、何も知らないうちに片付けたかったんだけど……イヴは、そんな事は…望んでないだろう?」
困った様な顔するフィルは、私の横までやって来て私を横抱きにして、そのままソファーに腰を下ろした。
どうやら、ジュリエンヌ様は、自分とフィルの距離が近付いた為、ハロルド様と私の距離を縮める為にハロルド様を呼び寄せたそうだ。
「私と…ハロルド様の距離?」
人間である私とハロルド様にはイーリャの実は効かない。それに、ハロルド様が不在だと国王両陛下にバレる前に距離を縮めるなんて……不可能だろう。
「……まさ……か………」
「うん。その“まさか”だ。イヴと……既成事実を作る為だ」
「何て……事を…………」
ーハロルド様は……そこまで愚かな人だったのかー
いや……メザリンド様にした時点で……クズだった。クズ以下だった。そのクズの下の事は何て言うんだろう?
「トルトニアの国王と王妃は把握済みで、国王は、馬鹿王子が竜王国に行く前に捕まえて処罰すると言って来たが、俺がそれを突っぱねて、あの2人の思う様にさせたんだ。あの2人だけは……俺の手で始末しないと……気が済まないから」
「フィル………」
静かに語るフィルから、圧や殺気を感じる事はないが、怒っていると言う事は分かる。きっと、私の為に殺気は抑えているんだろう。
「フィル、私………過去四度も噛み殺されたでしょう?」
「ゔっ……ごめん………」
「あ、違うの。フィルを責めてるわけじゃなくて……」
今世ではハロルド様と縁を結ぶ事はなく、フィルの番になり、未来へと続く路に進めた─と思っている。
それでも……どうしても、四度の過去の私が後から付いて来るのだ。
どうして、私は黒龍に噛み殺される最期を迎えなければいけなかったのか
どうして、ハロルド様はジュリエンヌ様との距離を縮めたのか
どうして、ハロルド様が私を婚約者に選んだのか
「ハロルド様がどうして……私に執着しているのか…知りたいんです。それと……私の方から……ハロルド様をバッサリキッチリスパッと……切り捨ててやりたいんです!」
「─────え?」
そう。一番の望みは……私がハロルド様をバッサリキッチリスパッと切り捨てる事。
過去の四度は、私がハロルド様に捨てられた─みたいな事になっていた。挙句に贄にされて噛み殺されて……。
「私、何も悪い事なんて…何一つしてなかったのに…婚約者にされて…裏切られて悪女にされて贄にされたんです。納得いかない。謝られても赦すつもりもないですけど……。兎に角……私、ハロルド様に直接会って……ハロルド様を切り捨てて、過去の私とも……決別したいんです……今世で、フィルと幸せになる為に」
「イヴ………」
何と言っても、最終目的は、フィルと幸せになる事。フィルだって……番である私を自分で四度も殺してしまった。加害者でありながら、一番の被害者でもある。だからこそ、フィルにも絶対に幸せになってもらわないといけないのだ。
「ありがとう…イヴ………」
泣き笑いな様な顔をした後、フィルは私をギュッと抱きしめた。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
❋お気に入り登録、ありがとうございます❋
⸜(❀*˙˘˙)⸝☆⋆*
「許可なく……簡単に?」
「トワイアル王国が、竜王国の守護国となった大きな理由が、トワイアルが魔法に特化していたからだ」
そう。竜王国の守護国であるトワイアル王国は魔法、トルトニアは武に特化している。トルトニアの現国王陛下と王太子殿下は、この大陸の1、2を争う程の腕前で、この2人が居るだけでトルトニアの平和が護られるのでは?とも言われている程だ。そんな中、「ハロルド様は?」と言えば──
武の才能が無かった
それ故に、結婚と同時に公爵となり、武ではなく内政で兄である王太子殿下を支える事になっていたのだ。
「あの女は……腐っていても直系の王族だから、持っている魔力はかなりのモノなんだ。まぁ…今世に至っては、光属性に関してだけは微妙だが…あの女は、水属性もあって、そっちの魔力に関しては、今世でもかなりの魔力なんだ。その魔力のお陰で……あの女は、転移の魔法陣を使えるんだ」
“転移魔法陣”
あの魔法は、かなり高度なモノで、魔法陣を描くのにも魔力が必要で、展開するとなれば更に魔力が必要となる。勿論、魔法陣を描くのにもある程度の技術が必要で、簡単に扱える魔法ではない。
「もしかして……」
私が最期を迎える前に甘い香りがしていたのは──
「おそらく……あの女が俺にイーリャの実を使って俺を惑わせた後、イヴの元に転移して……イヴを竜王国の黒龍の目の前に……連れて来ていたんだと思う。転移した瞬間……魔法で眠らされて………」
だから……甘い香りがした後眠りに落ちて……次に目が覚めた時は……
「ジュリエンヌ様は、本当に……私の死を……望んでいたんですね。でも……今回では、今迄と違っていますよね?ハロルド様を呼び付けて何を?」
「本当は……イヴには浮島に閉じ込めて内緒にして、何も知らないうちに片付けたかったんだけど……イヴは、そんな事は…望んでないだろう?」
困った様な顔するフィルは、私の横までやって来て私を横抱きにして、そのままソファーに腰を下ろした。
どうやら、ジュリエンヌ様は、自分とフィルの距離が近付いた為、ハロルド様と私の距離を縮める為にハロルド様を呼び寄せたそうだ。
「私と…ハロルド様の距離?」
人間である私とハロルド様にはイーリャの実は効かない。それに、ハロルド様が不在だと国王両陛下にバレる前に距離を縮めるなんて……不可能だろう。
「……まさ……か………」
「うん。その“まさか”だ。イヴと……既成事実を作る為だ」
「何て……事を…………」
ーハロルド様は……そこまで愚かな人だったのかー
いや……メザリンド様にした時点で……クズだった。クズ以下だった。そのクズの下の事は何て言うんだろう?
「トルトニアの国王と王妃は把握済みで、国王は、馬鹿王子が竜王国に行く前に捕まえて処罰すると言って来たが、俺がそれを突っぱねて、あの2人の思う様にさせたんだ。あの2人だけは……俺の手で始末しないと……気が済まないから」
「フィル………」
静かに語るフィルから、圧や殺気を感じる事はないが、怒っていると言う事は分かる。きっと、私の為に殺気は抑えているんだろう。
「フィル、私………過去四度も噛み殺されたでしょう?」
「ゔっ……ごめん………」
「あ、違うの。フィルを責めてるわけじゃなくて……」
今世ではハロルド様と縁を結ぶ事はなく、フィルの番になり、未来へと続く路に進めた─と思っている。
それでも……どうしても、四度の過去の私が後から付いて来るのだ。
どうして、私は黒龍に噛み殺される最期を迎えなければいけなかったのか
どうして、ハロルド様はジュリエンヌ様との距離を縮めたのか
どうして、ハロルド様が私を婚約者に選んだのか
「ハロルド様がどうして……私に執着しているのか…知りたいんです。それと……私の方から……ハロルド様をバッサリキッチリスパッと……切り捨ててやりたいんです!」
「─────え?」
そう。一番の望みは……私がハロルド様をバッサリキッチリスパッと切り捨てる事。
過去の四度は、私がハロルド様に捨てられた─みたいな事になっていた。挙句に贄にされて噛み殺されて……。
「私、何も悪い事なんて…何一つしてなかったのに…婚約者にされて…裏切られて悪女にされて贄にされたんです。納得いかない。謝られても赦すつもりもないですけど……。兎に角……私、ハロルド様に直接会って……ハロルド様を切り捨てて、過去の私とも……決別したいんです……今世で、フィルと幸せになる為に」
「イヴ………」
何と言っても、最終目的は、フィルと幸せになる事。フィルだって……番である私を自分で四度も殺してしまった。加害者でありながら、一番の被害者でもある。だからこそ、フィルにも絶対に幸せになってもらわないといけないのだ。
「ありがとう…イヴ………」
泣き笑いな様な顔をした後、フィルは私をギュッと抱きしめた。
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