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❋新しい未来へ❋
50 新たな日常
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ベッドの上の住人だっ5日間で、ゆっくりと自分と向き合う事ができた。
ニノンさんからも、私のメンタルな処を心配された。
「自分を四度も噛み殺した黒龍が怖くないか?」
正直、怖いものは怖い。噛み付かれた瞬間もハッキリ覚えている。私を四度も殺した黒龍だけど、私を守ってくれたのもフィリベールさんだ。
ーそりゃあ……三度目は…かなり辛かったけどー
番となった割には、竜王陛下と会わないな─と思っていたら、私のメンタルを気にして、物理的な距離を取らせている─とニノンさんから聞いた時、私は素直に「寂しいな…」と思った。「会いたいなぁ」と思った。と言う事は、そう言う事なんだろう。
「あの……竜王陛下の好きなお菓子を作って…持って行っても良いですか?」
ニノンさんに訊くと「勿論です」と、ニノンさんが嬉しそうに笑って、次の日にお菓子作りの準備をしてくれて、竜王陛下のスケジュールも整えてくれて、私は1人で竜王陛下の執務室までやって来た。
まぁ…執務室に入ってから暫くは、竜王陛下の様子がかなり変だったけど……。
それでも、竜王陛下を目の前にしても、恐怖心はなかった。久し振りに会えて、元気そうにしていて……安心した。
取り敢えず、今の私の気持ちを素直に話した。「仕返ししてやろう」とも伝えたけど、何故か嬉しそうに笑われただけだった。竜人からすれば、人間からの仕返しなんて、痛くも痒くもないのかもしれない。
「それで…竜王へい──」
「もう、“フィリベール”と…呼んでくれないのか?」
「え?」
ーやっぱり、竜王陛下が犬に見えるー
「あの…竜王陛下を、名前で呼んでも……良いんですか?」
「勿論!エヴェリーナが俺の名前を呼べないと言うなら、他の誰も俺の名前を呼べなくなる。今迄通り“フィリベール”と呼んで欲しい。否─“フィル”と呼んで欲しい。それと、敬語も要らない」
「敬語…は…少しずつ頑張りま──頑張ってみるね。名前は……ハードルが高い…かな?」
「そうか……無理強いはしない。ただ、父が亡くなってからは、“フィル”と呼んでくれる人が居なくなってしまって……」
「───分かり……分かった!フィル!私の事も、リーナとか愛称で呼んでくれると嬉しい……かも!?」
あまりにも寂しそうな顔をするから、思わず愛称呼びをしたし、思わず愛称呼びをお願いしてしまったけど……
「ありがとう……イヴ」
ーくうっー
そんな笑顔で、“イヴ”なんて呼ばれたら……心臓が持ちません!と言うか……私、上手く転がされてない?
でも──胸が苦しいのに、全く嫌なモノではなくて、嬉しい感じがする。人は、嬉しい事でも、胸が苦しくなったりするのか─これが…恋なんだろうか?
五度目の人生で初めて、本当の恋を知る事ができそうだ。
その日からは、フィルの時間がある時は、一緒にお茶をしたり散歩をしたりするようになった。私の中に流れる竜力も私にすっかり馴染んだようで、以前よりも体が軽く感じたりもする。
「ひょっとして、私も竜化できるとか?」
「残念だが…それはできない」
「ですよね………」
「でも…俺が、イヴを空へ連れて行く事はできる」
「空へ?」
「もし、怖くなったら教えて」と呟いた後、フィルの体が黒い光に包まれて───
「竜さんだ」
目の前に、キラキラと黒色に光る鱗の黒龍が現れた。
『怖くは…ないか?』
竜さんの体に触れると、その鱗はやっぱり温かかった。
四度も私を噛み殺した黒龍。それでも─
「フィルだと分かってるからかな?怖く…ない」
『そうか…良かった』
それから、黒龍となったフィルの手に包まれて、そのまま空へと飛び立った。
「大丈夫か?」
「大丈夫……じゃないかも?」
はい。空の旅は………私にはまだ早かったようだ。
途中迄は良かった。ただ、フィルが上昇し過ぎて途中から怖くなって……少し気を失ってしまったようで、気が付けば、どこかの庭園のベンチで、フィルに横抱きにして抱え込まれていた。
「すまない。イヴと一緒に空を飛んでると思うと、嬉し過ぎて…少し羽目を外してしまっていた」
シュン─としている姿は、やっぱり犬だ。私には、どうしたって…フィルが可愛く見えてしまうのは…きっと、フィルの事が好きだからだ。
「私も…楽しかったですよ?ありがとう」
ニッコリ微笑んで、フィルの頬にキスをする。
「────え?」
フィルはそのままビシッ─と固まった。
それからゆっくりと瞬きをした後、私のおでこにキスをして、それから───
唇に軽く触れるだけのキスをした
******
私が番となってから3ヶ月後
黒龍の番と言う事は極秘のまま、学園に復帰する事になった。極秘と言っても、そのまま外へ出れば、私に最強の竜力があるとバレる可能性がある為、ソレがバレないように、竜力を抑える魔法が掛けられたピアスを着ける事になった。勿論、そのピアスの色は黒に近い濃藍だ。
久し振りの学園では、お見舞いのお礼にと、クッキーを作って渡した。
3ヶ月の遅れを取り戻すのは大変だったけど、イロハやクラスメイトの助けのお陰でテスト前には何とか追い付き、テストも無事に受ける事ができ、進級する事もできた。
そして、いよいよ、トワイアル第一王女ジュリエンヌ様が、トルトニアへと留学する年となった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
_(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)_ꕤ*.゚
ニノンさんからも、私のメンタルな処を心配された。
「自分を四度も噛み殺した黒龍が怖くないか?」
正直、怖いものは怖い。噛み付かれた瞬間もハッキリ覚えている。私を四度も殺した黒龍だけど、私を守ってくれたのもフィリベールさんだ。
ーそりゃあ……三度目は…かなり辛かったけどー
番となった割には、竜王陛下と会わないな─と思っていたら、私のメンタルを気にして、物理的な距離を取らせている─とニノンさんから聞いた時、私は素直に「寂しいな…」と思った。「会いたいなぁ」と思った。と言う事は、そう言う事なんだろう。
「あの……竜王陛下の好きなお菓子を作って…持って行っても良いですか?」
ニノンさんに訊くと「勿論です」と、ニノンさんが嬉しそうに笑って、次の日にお菓子作りの準備をしてくれて、竜王陛下のスケジュールも整えてくれて、私は1人で竜王陛下の執務室までやって来た。
まぁ…執務室に入ってから暫くは、竜王陛下の様子がかなり変だったけど……。
それでも、竜王陛下を目の前にしても、恐怖心はなかった。久し振りに会えて、元気そうにしていて……安心した。
取り敢えず、今の私の気持ちを素直に話した。「仕返ししてやろう」とも伝えたけど、何故か嬉しそうに笑われただけだった。竜人からすれば、人間からの仕返しなんて、痛くも痒くもないのかもしれない。
「それで…竜王へい──」
「もう、“フィリベール”と…呼んでくれないのか?」
「え?」
ーやっぱり、竜王陛下が犬に見えるー
「あの…竜王陛下を、名前で呼んでも……良いんですか?」
「勿論!エヴェリーナが俺の名前を呼べないと言うなら、他の誰も俺の名前を呼べなくなる。今迄通り“フィリベール”と呼んで欲しい。否─“フィル”と呼んで欲しい。それと、敬語も要らない」
「敬語…は…少しずつ頑張りま──頑張ってみるね。名前は……ハードルが高い…かな?」
「そうか……無理強いはしない。ただ、父が亡くなってからは、“フィル”と呼んでくれる人が居なくなってしまって……」
「───分かり……分かった!フィル!私の事も、リーナとか愛称で呼んでくれると嬉しい……かも!?」
あまりにも寂しそうな顔をするから、思わず愛称呼びをしたし、思わず愛称呼びをお願いしてしまったけど……
「ありがとう……イヴ」
ーくうっー
そんな笑顔で、“イヴ”なんて呼ばれたら……心臓が持ちません!と言うか……私、上手く転がされてない?
でも──胸が苦しいのに、全く嫌なモノではなくて、嬉しい感じがする。人は、嬉しい事でも、胸が苦しくなったりするのか─これが…恋なんだろうか?
五度目の人生で初めて、本当の恋を知る事ができそうだ。
その日からは、フィルの時間がある時は、一緒にお茶をしたり散歩をしたりするようになった。私の中に流れる竜力も私にすっかり馴染んだようで、以前よりも体が軽く感じたりもする。
「ひょっとして、私も竜化できるとか?」
「残念だが…それはできない」
「ですよね………」
「でも…俺が、イヴを空へ連れて行く事はできる」
「空へ?」
「もし、怖くなったら教えて」と呟いた後、フィルの体が黒い光に包まれて───
「竜さんだ」
目の前に、キラキラと黒色に光る鱗の黒龍が現れた。
『怖くは…ないか?』
竜さんの体に触れると、その鱗はやっぱり温かかった。
四度も私を噛み殺した黒龍。それでも─
「フィルだと分かってるからかな?怖く…ない」
『そうか…良かった』
それから、黒龍となったフィルの手に包まれて、そのまま空へと飛び立った。
「大丈夫か?」
「大丈夫……じゃないかも?」
はい。空の旅は………私にはまだ早かったようだ。
途中迄は良かった。ただ、フィルが上昇し過ぎて途中から怖くなって……少し気を失ってしまったようで、気が付けば、どこかの庭園のベンチで、フィルに横抱きにして抱え込まれていた。
「すまない。イヴと一緒に空を飛んでると思うと、嬉し過ぎて…少し羽目を外してしまっていた」
シュン─としている姿は、やっぱり犬だ。私には、どうしたって…フィルが可愛く見えてしまうのは…きっと、フィルの事が好きだからだ。
「私も…楽しかったですよ?ありがとう」
ニッコリ微笑んで、フィルの頬にキスをする。
「────え?」
フィルはそのままビシッ─と固まった。
それからゆっくりと瞬きをした後、私のおでこにキスをして、それから───
唇に軽く触れるだけのキスをした
******
私が番となってから3ヶ月後
黒龍の番と言う事は極秘のまま、学園に復帰する事になった。極秘と言っても、そのまま外へ出れば、私に最強の竜力があるとバレる可能性がある為、ソレがバレないように、竜力を抑える魔法が掛けられたピアスを着ける事になった。勿論、そのピアスの色は黒に近い濃藍だ。
久し振りの学園では、お見舞いのお礼にと、クッキーを作って渡した。
3ヶ月の遅れを取り戻すのは大変だったけど、イロハやクラスメイトの助けのお陰でテスト前には何とか追い付き、テストも無事に受ける事ができ、進級する事もできた。
そして、いよいよ、トワイアル第一王女ジュリエンヌ様が、トルトニアへと留学する年となった。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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