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❋竜王国編❋
43 竜心
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「先ず…50年前の黒龍の番─フィリベールの母親の死が予想外だったんです。黒龍は女神の遣いであり、竜族一の竜力を持っている為、黒龍と番った者も、病気で死ぬ事なんて有り得ない事なんです。ただ───私が……私のせいで、隙ができてしまったんです。もともと、1000年に一度私の力が弱まる時期に……私が竜人と恋に落ちてしまったから……」
「………………」
“1000年に一度、力が弱まる”
“竜人と恋に落ちた”
とても……ヤバいワードが出てきた──と思うのは、私だけ…だろうか?
「あの……“女神”って…女性の神様でしたよね?」
「女神の定義で言うとそうですが、そもそも、神に女も男もありません」
「なるほど。見目も麗しい─とくれば、中性タイプと…言う事ですね…見た目は……」
大神官アルピーヌ様は、名前からすれば男性だけど、腰の辺り迄あるストレートサラサラな金髪に、透き通るような水色の瞳はキラキラと輝き、スラッとしたスレンダーな美人だ。「女です」と言われれば女性に見えるし、「男です」と言われれば男性にも見える。
「私は……この世界の創世神アルクシェリアでしたが、竜人に恋をして……私は後継者を創り竜人となったのです。それでも、神力が無くなる事はありませんから、“アルクシェリア女神の使徒”と言う役目を担う大神官と言う身分を作りました。今の女神もまだ神力が不安定で、それを、黒龍が補ってくれる予定だったんですが………。」
まさかの大神官が元女神。そんなとんでもない事実を、サラッと言わないで欲しい。聞かなかった事にしたい。
更に、まさかの黒龍の番の死と黒龍の死。
その二つの情報を得ていたのが、トルトニア王国とトワイアル王国だ。
この二つの国は、竜王国─黒龍を護る為に存在する国でもあるからだ。勿論、その情報は、現国王両陛下のみが知る事のできるものだ。
「その為、トルトニアの国王は、より慎重に黒龍の巫女となったジュリエンヌ王女を扱っていましたが、トワイアル王国では…そうではなかった。弱った女神と竜王に、優位に立とうと思ったようでした。まさか、私を支える者達に裏切られるとは………」
トワイアルが、どうやってイーリャの実の事を知ったのかは分からないそうだ。
「そうして、黒龍も私も女神も本来の力が無かったせいで、間違った路に進んでしまったんです。ただ一つ運が良かったのは、フィリベールに竜心ができず、竜心がジュリエンヌ王女の手に渡らなかった事です。エヴェリーナ嬢には……とても…辛く苦しい思いを何度もさせてしまいましたが、正しい路へと戻す迄…何とか時を戻す事ができたんです。」
何とか時を戻した後は、本来の力が無いと言う事とは別に、それ以上、元ではあっても神が人に干渉し過ぎると、世界にどんな影響が出るのか分からない─と言う事で、見守る事しかできなかったそうだ。
「その“正しい路”と言うのは……フィリベールさんと私が、ジュリエンヌ様より先に出会う事─だったんですか?」
「それが…第一条件でした。本物の番と出逢えば、もう、偽者が何をしようと、番以外は目に入りませんからね。不安定だった竜力も落着き、もう二度と、惑わされる事はない。そして、未だ不安定な女神の補佐ができ、この世界の安定へと繋がるんです」
「トワイアルが竜王国を護って来た国であるなら、偽の番となったところで、世界の存続そのものが危なくなるかも─と、分からなかった筈ないですよね?それなのにどうして…それに……その………私が…番って言うのも……間違いなんて事は──」
「それだけは無い!絶対に無い!エヴェリーナは本当に俺の番なんだ!!」
「はっはい!分かりました!ごめんなさい!!」
最強の黒龍のフィリベールさんが、やっぱり犬のようにしか見えないのは……私だけだろうか?
「確かに、人間には分からない感情ですからね。でも、黒龍の番であると言う確たる証拠を、もう既にエヴェリーナ嬢は持っているんですよ。」
「確たる証拠?─あ、ひょっとして……」
ワンピースのポケットに、ハンカチで包んで入れてあった竜さんの鱗を取り出す。
黒色なのに、琥珀色にも輝く少し小さい鱗だ。
「この、光加減で琥珀色に輝く小さい鱗を“竜心”と言うんです。これは、番と出会った竜にしかできない鱗なんです。もしくは、番でなくても、その竜本人が伴侶とすると認めた相手が居れば出来る事もあります。本当の番の場合は、番がその鱗に軽く触れるだけでその鱗は痛みもなく簡単に取れてしまうけど、伴侶として認め、共に番う事を誓った相手の場合は、その竜本人が鱗を千切ります。勿論、その場合は痛みを伴います。ただ、その竜心をその伴侶に煎じて飲ませる事で、その相手を番に変化させるんです。そうする事で、本当の番と出会ったとしても、もうその本当の番に反応する事が無くなるんです。」
「え?私も…この鱗─竜心を飲むんですか!?」
「エヴェリーナ嬢は本当の番なので、飲む必要はありません。それを身に着けているだけで大丈夫です。エヴェリーナ嬢が心から竜人のフィリベールを受け入れた時、その竜心がエヴェリーナ嬢の心と共鳴して、人間でありながらも、竜人並の身体能力と寿命を得る事ができます。」
「そうなんですか!?」
ーこんな小さな鱗1枚で……凄過ぎないですか!?ー
❋“置き場”に、大神官アルピーヌ視点の話を投稿しました。よければ、時間のある時にでも覗いて見ていただければ幸いです❋
(* ´▿`*)*_ _)⁾⁾ペコッ
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
₀: *゚✲ฺ٩(ˊᗜˋ*)و ✲゚ฺ*:₀
「………………」
“1000年に一度、力が弱まる”
“竜人と恋に落ちた”
とても……ヤバいワードが出てきた──と思うのは、私だけ…だろうか?
「あの……“女神”って…女性の神様でしたよね?」
「女神の定義で言うとそうですが、そもそも、神に女も男もありません」
「なるほど。見目も麗しい─とくれば、中性タイプと…言う事ですね…見た目は……」
大神官アルピーヌ様は、名前からすれば男性だけど、腰の辺り迄あるストレートサラサラな金髪に、透き通るような水色の瞳はキラキラと輝き、スラッとしたスレンダーな美人だ。「女です」と言われれば女性に見えるし、「男です」と言われれば男性にも見える。
「私は……この世界の創世神アルクシェリアでしたが、竜人に恋をして……私は後継者を創り竜人となったのです。それでも、神力が無くなる事はありませんから、“アルクシェリア女神の使徒”と言う役目を担う大神官と言う身分を作りました。今の女神もまだ神力が不安定で、それを、黒龍が補ってくれる予定だったんですが………。」
まさかの大神官が元女神。そんなとんでもない事実を、サラッと言わないで欲しい。聞かなかった事にしたい。
更に、まさかの黒龍の番の死と黒龍の死。
その二つの情報を得ていたのが、トルトニア王国とトワイアル王国だ。
この二つの国は、竜王国─黒龍を護る為に存在する国でもあるからだ。勿論、その情報は、現国王両陛下のみが知る事のできるものだ。
「その為、トルトニアの国王は、より慎重に黒龍の巫女となったジュリエンヌ王女を扱っていましたが、トワイアル王国では…そうではなかった。弱った女神と竜王に、優位に立とうと思ったようでした。まさか、私を支える者達に裏切られるとは………」
トワイアルが、どうやってイーリャの実の事を知ったのかは分からないそうだ。
「そうして、黒龍も私も女神も本来の力が無かったせいで、間違った路に進んでしまったんです。ただ一つ運が良かったのは、フィリベールに竜心ができず、竜心がジュリエンヌ王女の手に渡らなかった事です。エヴェリーナ嬢には……とても…辛く苦しい思いを何度もさせてしまいましたが、正しい路へと戻す迄…何とか時を戻す事ができたんです。」
何とか時を戻した後は、本来の力が無いと言う事とは別に、それ以上、元ではあっても神が人に干渉し過ぎると、世界にどんな影響が出るのか分からない─と言う事で、見守る事しかできなかったそうだ。
「その“正しい路”と言うのは……フィリベールさんと私が、ジュリエンヌ様より先に出会う事─だったんですか?」
「それが…第一条件でした。本物の番と出逢えば、もう、偽者が何をしようと、番以外は目に入りませんからね。不安定だった竜力も落着き、もう二度と、惑わされる事はない。そして、未だ不安定な女神の補佐ができ、この世界の安定へと繋がるんです」
「トワイアルが竜王国を護って来た国であるなら、偽の番となったところで、世界の存続そのものが危なくなるかも─と、分からなかった筈ないですよね?それなのにどうして…それに……その………私が…番って言うのも……間違いなんて事は──」
「それだけは無い!絶対に無い!エヴェリーナは本当に俺の番なんだ!!」
「はっはい!分かりました!ごめんなさい!!」
最強の黒龍のフィリベールさんが、やっぱり犬のようにしか見えないのは……私だけだろうか?
「確かに、人間には分からない感情ですからね。でも、黒龍の番であると言う確たる証拠を、もう既にエヴェリーナ嬢は持っているんですよ。」
「確たる証拠?─あ、ひょっとして……」
ワンピースのポケットに、ハンカチで包んで入れてあった竜さんの鱗を取り出す。
黒色なのに、琥珀色にも輝く少し小さい鱗だ。
「この、光加減で琥珀色に輝く小さい鱗を“竜心”と言うんです。これは、番と出会った竜にしかできない鱗なんです。もしくは、番でなくても、その竜本人が伴侶とすると認めた相手が居れば出来る事もあります。本当の番の場合は、番がその鱗に軽く触れるだけでその鱗は痛みもなく簡単に取れてしまうけど、伴侶として認め、共に番う事を誓った相手の場合は、その竜本人が鱗を千切ります。勿論、その場合は痛みを伴います。ただ、その竜心をその伴侶に煎じて飲ませる事で、その相手を番に変化させるんです。そうする事で、本当の番と出会ったとしても、もうその本当の番に反応する事が無くなるんです。」
「え?私も…この鱗─竜心を飲むんですか!?」
「エヴェリーナ嬢は本当の番なので、飲む必要はありません。それを身に着けているだけで大丈夫です。エヴェリーナ嬢が心から竜人のフィリベールを受け入れた時、その竜心がエヴェリーナ嬢の心と共鳴して、人間でありながらも、竜人並の身体能力と寿命を得る事ができます。」
「そうなんですか!?」
ーこんな小さな鱗1枚で……凄過ぎないですか!?ー
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