贄の令嬢はループする

みん

文字の大きさ
上 下
32 / 84
❋竜王国編❋

32 動き出した????

しおりを挟む
「黒龍の巫女の………選定式?」
「はい。黒龍の巫女の選定式とは、簡単に言うと、光属性の魔力持ちである一般的な聖女の力が、竜族にも効くかどうか調べる式になります。年に1回か2回行われるんですけど、それが、今週末に行われる事になったんです。」

そんな式があるとは知らなかったけど、確か…ジュリエンヌ様が黒龍の巫女と認められたのが、トルトニアへの留学が決まってからだった筈だから……まだ1年ぐらい先の話だと思っていたけど……。もう、この週末には、ジュリエンヌ様が黒龍の巫女として……認められるのかもしれない。

「そうなんですね。その式には、イロハも選定する側で参加するの?」
「選定するのは、竜王陛下の側近と神官で、私は大聖女の身分は隠しているから、神官のお手伝い役として見学する…みたいな感じかな?」

ーなるほどー

それじゃあ、今週末はイロハもニノンさんも忙しい─と言う事かな?

「それで…ですね…ハウンゼントさん。その選定式、見てみたくないですか?」
「────はい?」

その質問に驚き、ニノンさんに視線を向ければ、ニノンさんとイロハは愉しそうに笑っていた。














******
(????)


竜王とは、竜王国の王であり、この大陸の創世神アルクシェリア女神の遣い龍で、唯一無二の黒龍。

その黒龍を目にした者は殆どいない。ただ、その漆黒の闇のような鱗はキラキラと輝き、見る者全てを魅了する─と言われている。
ただ、現竜王が初代からの竜王なのか、代替わりを繰り返しているのか、竜人化するのか──その存在は謎に包まれている。

ただ一つ言えるとすれば、喩え唯一無二の存在であったとしても竜は竜。竜王に見初められれば、竜王妃の座を得る事ができる。それに、つがいともなれば、この大陸一の存在にもなれる。

手に持っている琥珀色の液体の入った小瓶を見つめる。

ー後は、選定式の時に……ー

その小瓶をキュッと握りしめた時、馬車の動きが止まり、外が少し慌ただしくなった後「姫様、到着しました」と、御者から声が掛かり、一拍置いてから扉が開かれた。

「ようこそ、いらっしゃいました。」
「お出迎え、ありがとうございます。」

馬車の扉を開けて私に手を差し出してくれたのは、黒色の短髪で、瞳は空の様な青色の竜人の騎士だった。

「私は“オーウェン=グリフォード”と申します。王女殿下がこちらに滞在中は、私が王女殿下の護衛に付きます。宜しくお願い致します。」
「分かりました。オーウェン、宜しくお願いしますね。」

ニッコリ微笑んで挨拶をする。
自国での私は、美姫と言われて可愛がられている。言われている事は素直に嬉しいし、否定はしない。私が微笑めば、どんな相手だって嬉しそうな顔をする。子息に至っては、簡単に顔を赤らめるのだ。
目の前のオーウェンもそうだ。私を見て微笑んでいる。

ー本当に、種族が違っても、男と言うのは単純で馬鹿ばっかりねー

このオーウェンも、それなりの男前だけど、所詮は一介の騎士にしか過ぎない。私には不釣り合いだ。王女である私の護衛に付けただけでも、ラッキーだったと思う事ね。

「では、まず、本日より滞在されるお部屋の方へ、案内させていただきます。」

そう言われ、私はオーウェンの後を付いて行った。





その後、“ニノン”と言う女性がやって来て、今回の選定式についての説明をした後、夕食迄は自由です─と言って、部屋から出て行った。

今回の選定式には、私を含め5人の光の魔力持ちが居るとの事だった。黒龍の巫女としての能力を持つ者は滅多に現れない。現在、黒龍の巫女は2人しかいない。

ーきっと、私が3人目になるー

理由は分からないが、何故か“黒龍の巫女になれる”と言う自信がある。巫女にさえなれれば──後は、だけ。

「ふふっ──竜王に会えるのが…楽しみだわ。」





******
(オーウェン視点)


「今のところ、充てがわれた部屋でおとなしくしています。」
「そうか。引き続き、を頼む。」
「了解です。ところで………あの……ハウンゼント嬢は、元気にされてますか?」
「あぁ。元気で毎日可愛い。」
「そうですか……なら…良かったです……くくっ…では、失礼します。」

退室する為に扉を開けると、そこにニノンが居た。

「あ、オーウェン、丁度良かったわ。話があるから、もう少しここに居てくれる?」
「分かった、大丈夫だ。」
「フィリベール、選定式の話だけど……ハウンゼントさんも参加するそうよ。」
「ハウンゼント嬢が!?え?大丈夫なのか!?」

ー選定式には、が居るのに!?ー

「大丈夫よ。今回は、大聖女イロハ様が居るし、何よりも……我らが主の力がほぼ元に戻っているから。」
「あ…あぁ……そうだったな……。」

ニノンの笑顔が恐ろしい。

「これで、我が主も間違いを起こす事はないでしょう?」
「───当たり前だ。もう、六度目などない。アレも……終わりにしてやる。」

ブワッ─と部屋に殺気が充満する。

ー恐ろしいー

あの女は、誰に手を出したのか…本当の意味では理解していない。あの女にとっては一度目だろうけど、四度も繰り返された、あの最期──

一度でも、反省する時があれば良かったが、全てにおいて実行し、彼女の居場所を奪い、同じ最期を迎えさせたのだ。あの女の性格は変わらないと言う事だ。

「死ねた方がマシだ──と……思うんだろうな…」
「でしょうね。」

それから、俺とニノンは、選定式の警備の配置などを、入念にチェックをしていった。








❋エールを頂き、ありがとうございます❋
\(*´▽`*)人(*´▽`*)人(*´▽`*)ノ


しおりを挟む
感想 76

あなたにおすすめの小説

ときめき♥沼落ち確定★婚約破棄!

待鳥園子
恋愛
とある異世界転生したのは良いんだけど、前世の記憶が蘇ったのは、よりにもよって、王道王子様に婚約破棄された、その瞬間だった! 貴族令嬢時代の記憶もないし、とりあえず断罪された場から立ち去ろうとして、見事に転んだ私を助けてくれたのは、素敵な辺境伯。 彼からすぐに告白をされて、共に辺境へ旅立つことにしたけど、私に婚約破棄したはずのあの王子様が何故か追い掛けて来て?!

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

傷物令嬢は騎士に夢をみるのを諦めました

みん
恋愛
伯爵家の長女シルフィーは、5歳の時に魔力暴走を起こし、その時の記憶を失ってしまっていた。そして、そのせいで魔力も殆ど無くなってしまい、その時についてしまった傷痕が体に残ってしまった。その為、領地に済む祖父母と叔母と一緒に療養を兼ねてそのまま領地で過ごす事にしたのだが…。 ゆるっと設定なので、温かい気持ちで読んでもらえると幸いです。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

あなたの運命になりたかった

夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。  コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。 ※一話あたりの文字数がとても少ないです。 ※小説家になろう様にも投稿しています

旦那さまに恋をしてしまいました。

しらす
恋愛
こんなことになるならば、わたしはあなたに出会いたくなかった。でもわたしは、あなたを愛している。あなたがたとえ愛してなくても、疎んでいても、わたしはずっと愛している。 これはわたしが選択を間違えた話。 小説家になろう様にて先行更新しています。 これを読んだ方、言っておきます。あんまり上の内容信じない方がいいです。(自分で書いておいて何を言って((() 2021/4.11完結しました。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...