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❋竜王国編❋
28 五度目の誕生会②
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女性を褒めるのに慣れていないと言うフィリベールさん。そのくせ、行動だけはサラッとスマートにこなす。女性に慣れているのかいないのか………。
フィリベールさんは、私の手にキスをした後、自身の腕に私の手を絡ませて、そのまま私をエスコートするように歩き出した。
誕生会の会場に着くと、案内係に招待状を提示し、その確認が終わると、会場の扉が開かれた。
ーう……ものすごく……視線を集めてない?ー
きっと、気のせいではない。
ハロルド様の誕生会には、勿論子息達も居る。ただ、この誕生会はハロルド様の婚約者を決める為に開かれたもので、この誕生会に出席する令嬢達は、皆家族と一緒に入場していて、私のように男性にエスコートされながら入場している令嬢は誰一人いない。それだけでも注目を集めるとは思っていたけど……その上、何と言ってもフィリベールさんが………イケメンなのだ。令嬢の視線を奪ってしまうのも仕方無い。
チラッとフィリベールさんを見上げる。
ハロルド様は、典型的な“王子様”だ。
それに対し、フィリベールさんは騎士様然り─なキリッとした顔をしている。黙っていると、少し冷たい印象すらある。
ーやっぱり、フィリベールさんも、光の加減で黒にも濃藍にも…見えるよねー
「ん?どうかした?大丈夫?」
「あ、大丈夫です。何か…注目を浴びてしまって申し訳無いな…と。」
「それは、俺の台詞だな。こんなに綺麗なエヴェリーナをエスコートできて、この場に居る者達に見せつける事ができるなんて……本当に…役得以外の何物でもないな。」
ーぐうっー
またまた変な声は呑み込んだ。
女慣れしてないなんて…嘘じゃないかな?普通、そんな……恥ずかしい言葉、サラッと出る?あぁ──
「…………天然だ…」
「ん?何か言った?」
「いえ、何も……。」
「?」
不思議そうな顔で私をみつめるフィリベールさん。
その顔が何とも可愛らしく見えて、ふふっ─と笑うとまたまた眉間に皺を寄せた顔になったけど、「うん。ようやく笑えて良かった。」と、険しい顔とは真反対な言葉を掛けられて、そのギャップが可笑しくて更にクスクスと笑ってしまい、少し気持ちが楽になった。
暫くすると、父と母が入場して来た為、フィリベールさんと一緒に挨拶をしてそのまま4人でお喋りを楽しんだ。誕生会の準備で、父や母と連絡を取り合っていたらしく、フィリベールさんと仲良く話をしている。そんな3人の少し後ろには、五度目の今回も、今迄と同じ所にオーウェンが立っているのが見えた。
ー私の事、覚えて…ないかな?ー
今世では、たった一度会っただけ。そう思っていると、私に気付いたオーウェンと視線が合い、ニコッと笑って軽く頭を下げられた。どうやら、覚えてくれていたようだ。私もニコッと微笑んだ後会釈した。
オーウェンさんは、どんな時でも変わらない人だった。
「王妃陛下、並びにハロルド殿下が入場されます。」
エレオノール様の父である宰相の掛け声の後、王妃陛下と、今日の主役のハロルド様が入場した。
五度目の今世で、初めて目にしたハロルド様。ハロルド様を目にしても………全く心が動かされる事はなかった。
それから、高位爵位の順に挨拶が始まった。一番は公爵家のエレオノール様だ。見た感じでは、五度目の今回もハロルド様に興味はなさそうだった。
私も侯爵令嬢な為、順番が早い。挨拶をしに行こうと父と母を見ると「行ってらっしゃい」と言うような眼差しを向けられた。
ーえ?ー
父と母は、挨拶をしないのか?─と少し困惑していると「エヴェリーナ、行こうか。」と、フィリベールさんが私の腰に手を回して、王妃陛下とハロルド様の方へと歩みを促した。
ーえ?フィリベールさんと…挨拶をするの!?ー
そんな驚きを顔には出さず、促されるまま挨拶の列に並び、遂には、本当に2人で挨拶をする事になった。
「私は、ハウンゼント侯爵が娘、エヴェリーナでございます。第二王子殿下、お誕生日おめでとうございます。」
「ありがとう…ハウンゼント嬢。ところで……そちらは?」
「私は、竜王国スコルッシュ伯爵が次男、フィリベールと申します。竜王国ではエヴェリーナの護衛を務めています。今回は、その護衛も兼ねて、エヴェリーナと一緒に出席させていただいています。」
「“兼ねて”?」
「はい。」
「─っ!?」
“兼ねて”と言う言葉に疑問を持ったハロルド様に対し、フィリベールさんはニッコリ微笑んだ後、私を更に自分の方へと引き寄せた。
「態々、留学中のエヴェリーナに、王家経由で招待状が届いたので、私もちゃんと挨拶をしなければ─と思い、エヴェリーナと一緒に出席させてもらいました。」
「「…………」」
ニッコリ微笑んでいるのに、圧を感じるのは気のせいではない。それに、王妃陛下も、顔には出ていないが少し焦っている様な雰囲気がある。そんな雰囲気に、全く気付いていないのがハロルド様だ。
「そう…ですか。態々来ていただいて、ありがとう。ハウンゼント嬢。また後で…時間があれば……留学の話を聞かせてもらえるかな?」
「……はい。時間があれば…フィリベールさんと一緒に……。」
ーこれで合ってる…はずー
チラッと見上げたフィリベールさんは、私を見て優しく微笑んでいた。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
♡٩(*ˊᗜˋ)۶٩(ˊᗜˋ*)۶♡
フィリベールさんは、私の手にキスをした後、自身の腕に私の手を絡ませて、そのまま私をエスコートするように歩き出した。
誕生会の会場に着くと、案内係に招待状を提示し、その確認が終わると、会場の扉が開かれた。
ーう……ものすごく……視線を集めてない?ー
きっと、気のせいではない。
ハロルド様の誕生会には、勿論子息達も居る。ただ、この誕生会はハロルド様の婚約者を決める為に開かれたもので、この誕生会に出席する令嬢達は、皆家族と一緒に入場していて、私のように男性にエスコートされながら入場している令嬢は誰一人いない。それだけでも注目を集めるとは思っていたけど……その上、何と言ってもフィリベールさんが………イケメンなのだ。令嬢の視線を奪ってしまうのも仕方無い。
チラッとフィリベールさんを見上げる。
ハロルド様は、典型的な“王子様”だ。
それに対し、フィリベールさんは騎士様然り─なキリッとした顔をしている。黙っていると、少し冷たい印象すらある。
ーやっぱり、フィリベールさんも、光の加減で黒にも濃藍にも…見えるよねー
「ん?どうかした?大丈夫?」
「あ、大丈夫です。何か…注目を浴びてしまって申し訳無いな…と。」
「それは、俺の台詞だな。こんなに綺麗なエヴェリーナをエスコートできて、この場に居る者達に見せつける事ができるなんて……本当に…役得以外の何物でもないな。」
ーぐうっー
またまた変な声は呑み込んだ。
女慣れしてないなんて…嘘じゃないかな?普通、そんな……恥ずかしい言葉、サラッと出る?あぁ──
「…………天然だ…」
「ん?何か言った?」
「いえ、何も……。」
「?」
不思議そうな顔で私をみつめるフィリベールさん。
その顔が何とも可愛らしく見えて、ふふっ─と笑うとまたまた眉間に皺を寄せた顔になったけど、「うん。ようやく笑えて良かった。」と、険しい顔とは真反対な言葉を掛けられて、そのギャップが可笑しくて更にクスクスと笑ってしまい、少し気持ちが楽になった。
暫くすると、父と母が入場して来た為、フィリベールさんと一緒に挨拶をしてそのまま4人でお喋りを楽しんだ。誕生会の準備で、父や母と連絡を取り合っていたらしく、フィリベールさんと仲良く話をしている。そんな3人の少し後ろには、五度目の今回も、今迄と同じ所にオーウェンが立っているのが見えた。
ー私の事、覚えて…ないかな?ー
今世では、たった一度会っただけ。そう思っていると、私に気付いたオーウェンと視線が合い、ニコッと笑って軽く頭を下げられた。どうやら、覚えてくれていたようだ。私もニコッと微笑んだ後会釈した。
オーウェンさんは、どんな時でも変わらない人だった。
「王妃陛下、並びにハロルド殿下が入場されます。」
エレオノール様の父である宰相の掛け声の後、王妃陛下と、今日の主役のハロルド様が入場した。
五度目の今世で、初めて目にしたハロルド様。ハロルド様を目にしても………全く心が動かされる事はなかった。
それから、高位爵位の順に挨拶が始まった。一番は公爵家のエレオノール様だ。見た感じでは、五度目の今回もハロルド様に興味はなさそうだった。
私も侯爵令嬢な為、順番が早い。挨拶をしに行こうと父と母を見ると「行ってらっしゃい」と言うような眼差しを向けられた。
ーえ?ー
父と母は、挨拶をしないのか?─と少し困惑していると「エヴェリーナ、行こうか。」と、フィリベールさんが私の腰に手を回して、王妃陛下とハロルド様の方へと歩みを促した。
ーえ?フィリベールさんと…挨拶をするの!?ー
そんな驚きを顔には出さず、促されるまま挨拶の列に並び、遂には、本当に2人で挨拶をする事になった。
「私は、ハウンゼント侯爵が娘、エヴェリーナでございます。第二王子殿下、お誕生日おめでとうございます。」
「ありがとう…ハウンゼント嬢。ところで……そちらは?」
「私は、竜王国スコルッシュ伯爵が次男、フィリベールと申します。竜王国ではエヴェリーナの護衛を務めています。今回は、その護衛も兼ねて、エヴェリーナと一緒に出席させていただいています。」
「“兼ねて”?」
「はい。」
「─っ!?」
“兼ねて”と言う言葉に疑問を持ったハロルド様に対し、フィリベールさんはニッコリ微笑んだ後、私を更に自分の方へと引き寄せた。
「態々、留学中のエヴェリーナに、王家経由で招待状が届いたので、私もちゃんと挨拶をしなければ─と思い、エヴェリーナと一緒に出席させてもらいました。」
「「…………」」
ニッコリ微笑んでいるのに、圧を感じるのは気のせいではない。それに、王妃陛下も、顔には出ていないが少し焦っている様な雰囲気がある。そんな雰囲気に、全く気付いていないのがハロルド様だ。
「そう…ですか。態々来ていただいて、ありがとう。ハウンゼント嬢。また後で…時間があれば……留学の話を聞かせてもらえるかな?」
「……はい。時間があれば…フィリベールさんと一緒に……。」
ーこれで合ってる…はずー
チラッと見上げたフィリベールさんは、私を見て優しく微笑んでいた。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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