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捌
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お母様は、やっぱりチートでした。
マーレン様の無意識に作動する魔力の流れが止められたようで、ずっと感じていた違和感がなくなり、体全体も軽くなったそうだ。
「無意識にでも魔力を使っている状態が続いているから、体にも負荷が掛かっているだろうし、本来の力も十分に発揮できていないのかもしれませんね。その無意識の魔力の流れを、何とかコントロールできると良いんですけどね…。」
チートなお母様でも分からない─のは、お母様の使う魔法は全て…“想像で発動するから”らしい。普通の魔導士や魔術士と呼ばれる魔力持ちの人は、魔力を使うのにはある程度の組み立てが必要となる。
『ハルはチートだから』
母に至っては、ソレに尽きる。
兎に角、マーレン様に掛けた魔法は良いようで、マーレン様本人はとても喜んでいる。後は、自身で魔力の無意識の流れをコントロールできるよう考えてみます─と言う事になり、お母様は邸の方へと帰って行き、私はネロの所に行く事にした。
「ネロ…とは犬か何かか?」
「えっと……」
本当の事を言って良いのか分からず、リュウさんの方に視線を向けると
「これも他言無用で契約内に含まれるからな。ネロは、ヴィーと名を交している魔獣─フェンリルだ。そのネロの母親のフェンリルは、ハルと名を交している。」
「……リュウ殿。ここまで来ると、もう驚かなくなるんですね………。」
「そうだろう?驚くのが馬鹿らしくなるだろう?」
ははっ─と、リュウさんは乾いた笑い声をあげた。
ー凄いのはお母様だけですけどね!ー
「ところで、リュウ殿とハル殿とヴィオラ嬢は仲が良いんですね。」
「そうだな。詳しくは言えないが、ハルとはもう10年以上の付き合いだし、一応、俺はヴィーの師匠だからな。」
そう良いながら、リュウさんが私の頭をワシャワシャと撫でる。
「ちょっ…リュウさん!髪がグチャグチャになっちゃいます!!」
「ははっ─気にするな、ヴィー」
と、更に撫でられそうになった時、マーレン様がそのリュウさんの手を掴み上げた。
「リュウ殿、例え弟子だとしても、女性の頭をそんな風にするのは良くありませんよ。」
「シリウスは強面のクセに真面目だなぁ。」
「強面と真面目は関係ありませんからね。」
「ふふ──っ」
確かに、見た目真面目そうなリュウさんの方が軽くて、見た目強面のマーレン様の方が真面目だよね─と、思わず笑ってしまったら、「ほら、ヴィーもそう思うだろう?」と、リュウさんも笑って、マーレン様は少し拗ねたような顔をした。
それから、マーレン様がネロを見てみたい─と言う事で、リュウさんと3人でネロの居る所までやって来ると、お母様とお父様が居た。
「あ、おとう───」
“お父様”と呼ぼうとしたところで、リュウさんにグイッと手を引かれて、「何!?」と思っていると、お父様がひょいっとお母様を抱き上げて、スタスタと邸の方へと歩いて行くのが見えた。
「………リュウさん。私を止めてくれて、ありがとうございます。」
「どういたしまして……。」
ー危うく、2人のラブラブタイムの邪魔をするところだったー
邪魔をしても怒られる事はない。お父様も優しい笑顔で私を受け止めてくれる。ただ──
お母様に少しだけ……負担が増すだけで──
私とリュウさんの横で、「?」な顔をした可愛いマーレン様に声を掛けてから、改めてネロの方へと歩みを進めた。
『ヴィー、お疲れ様なの!』
「ネロ、ありがとう。」
「あ、今日はノアも居るんだな。」
「?」
私とリュウさんがいつも通りネロと話をしていると、マーレン様は不思議そうな顔をして私達を見ていた。
「マーレン様、どうかされましたか?」
と訊くと、どうやら、マーレン様にはネロの話している言葉が聞こえていないようだった。
ーそう言えば、お父様もノアと名を交わす迄は話せなかったと言ってたっけ?ー
名を交していなくても、ネロと話ができる人も居るから、話ができるできないは魔獣─ネロ側次第なのかもしれない。
『おやおや、これは本当に変わった魔力をお持ちですね?』
「ノア!」
やって来たのは、イケオジ化したノアだった。
『ヴィオラ様、お久し振りです。お元気そうで何よりです。』
ニッコリ微笑むイケオジは、それだけで絵になる。
「あー…シリウス、これも他言無用で、ノアはネロの父親の天馬なんだが、こうやって擬人化できるんだ…。」
「──────なる……ほど……」
マーレン様は、そう言うだけで精一杯のようでした。
お父様が急遽、今日のお昼から明日に掛けて休みになったらしく、王城から蒼の邸に帰って来て、そのままノアと一緒にパルヴァン迄転移して来たそうだ。
そうして、お母様からマーレン様の話を聞き、話ができるようにと疑似化してくれているとの事だった。
『確かに、変わった魔力な上に強いので、無意識のうちに動いてしまうのは仕方無い感じですね。その魔力を拘束している魔法を掛けているのは…ハル様ですね?流石─としか言えませんね。』
と、ノアはまたニッコリ微笑んだ。
❋今作品は、時間を決めての更新をしていないので、バラバラの時間に更新しています❋
(。>﹏<。)💦
マーレン様の無意識に作動する魔力の流れが止められたようで、ずっと感じていた違和感がなくなり、体全体も軽くなったそうだ。
「無意識にでも魔力を使っている状態が続いているから、体にも負荷が掛かっているだろうし、本来の力も十分に発揮できていないのかもしれませんね。その無意識の魔力の流れを、何とかコントロールできると良いんですけどね…。」
チートなお母様でも分からない─のは、お母様の使う魔法は全て…“想像で発動するから”らしい。普通の魔導士や魔術士と呼ばれる魔力持ちの人は、魔力を使うのにはある程度の組み立てが必要となる。
『ハルはチートだから』
母に至っては、ソレに尽きる。
兎に角、マーレン様に掛けた魔法は良いようで、マーレン様本人はとても喜んでいる。後は、自身で魔力の無意識の流れをコントロールできるよう考えてみます─と言う事になり、お母様は邸の方へと帰って行き、私はネロの所に行く事にした。
「ネロ…とは犬か何かか?」
「えっと……」
本当の事を言って良いのか分からず、リュウさんの方に視線を向けると
「これも他言無用で契約内に含まれるからな。ネロは、ヴィーと名を交している魔獣─フェンリルだ。そのネロの母親のフェンリルは、ハルと名を交している。」
「……リュウ殿。ここまで来ると、もう驚かなくなるんですね………。」
「そうだろう?驚くのが馬鹿らしくなるだろう?」
ははっ─と、リュウさんは乾いた笑い声をあげた。
ー凄いのはお母様だけですけどね!ー
「ところで、リュウ殿とハル殿とヴィオラ嬢は仲が良いんですね。」
「そうだな。詳しくは言えないが、ハルとはもう10年以上の付き合いだし、一応、俺はヴィーの師匠だからな。」
そう良いながら、リュウさんが私の頭をワシャワシャと撫でる。
「ちょっ…リュウさん!髪がグチャグチャになっちゃいます!!」
「ははっ─気にするな、ヴィー」
と、更に撫でられそうになった時、マーレン様がそのリュウさんの手を掴み上げた。
「リュウ殿、例え弟子だとしても、女性の頭をそんな風にするのは良くありませんよ。」
「シリウスは強面のクセに真面目だなぁ。」
「強面と真面目は関係ありませんからね。」
「ふふ──っ」
確かに、見た目真面目そうなリュウさんの方が軽くて、見た目強面のマーレン様の方が真面目だよね─と、思わず笑ってしまったら、「ほら、ヴィーもそう思うだろう?」と、リュウさんも笑って、マーレン様は少し拗ねたような顔をした。
それから、マーレン様がネロを見てみたい─と言う事で、リュウさんと3人でネロの居る所までやって来ると、お母様とお父様が居た。
「あ、おとう───」
“お父様”と呼ぼうとしたところで、リュウさんにグイッと手を引かれて、「何!?」と思っていると、お父様がひょいっとお母様を抱き上げて、スタスタと邸の方へと歩いて行くのが見えた。
「………リュウさん。私を止めてくれて、ありがとうございます。」
「どういたしまして……。」
ー危うく、2人のラブラブタイムの邪魔をするところだったー
邪魔をしても怒られる事はない。お父様も優しい笑顔で私を受け止めてくれる。ただ──
お母様に少しだけ……負担が増すだけで──
私とリュウさんの横で、「?」な顔をした可愛いマーレン様に声を掛けてから、改めてネロの方へと歩みを進めた。
『ヴィー、お疲れ様なの!』
「ネロ、ありがとう。」
「あ、今日はノアも居るんだな。」
「?」
私とリュウさんがいつも通りネロと話をしていると、マーレン様は不思議そうな顔をして私達を見ていた。
「マーレン様、どうかされましたか?」
と訊くと、どうやら、マーレン様にはネロの話している言葉が聞こえていないようだった。
ーそう言えば、お父様もノアと名を交わす迄は話せなかったと言ってたっけ?ー
名を交していなくても、ネロと話ができる人も居るから、話ができるできないは魔獣─ネロ側次第なのかもしれない。
『おやおや、これは本当に変わった魔力をお持ちですね?』
「ノア!」
やって来たのは、イケオジ化したノアだった。
『ヴィオラ様、お久し振りです。お元気そうで何よりです。』
ニッコリ微笑むイケオジは、それだけで絵になる。
「あー…シリウス、これも他言無用で、ノアはネロの父親の天馬なんだが、こうやって擬人化できるんだ…。」
「──────なる……ほど……」
マーレン様は、そう言うだけで精一杯のようでした。
お父様が急遽、今日のお昼から明日に掛けて休みになったらしく、王城から蒼の邸に帰って来て、そのままノアと一緒にパルヴァン迄転移して来たそうだ。
そうして、お母様からマーレン様の話を聞き、話ができるようにと疑似化してくれているとの事だった。
『確かに、変わった魔力な上に強いので、無意識のうちに動いてしまうのは仕方無い感じですね。その魔力を拘束している魔法を掛けているのは…ハル様ですね?流石─としか言えませんね。』
と、ノアはまたニッコリ微笑んだ。
❋今作品は、時間を決めての更新をしていないので、バラバラの時間に更新しています❋
(。>﹏<。)💦
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