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第七章ー隣国ー
挿話ー王妃と王太子ー
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ー実はハル殿だけが元の世界に還れず、ずっとパルヴァンに居たー
そう聞いた時、私は
ー羨ましいー
ーエディオルだけ…狡いなぁー
と思ってしまった。
私が想いを寄せていたミヤ様には、元の世界にミヤ様が想いを寄せる相手が居て、何の躊躇いもなく元の世界に還ってしまったのだ。私とミヤ様の間には、何も無かったし、スタート地点にさえ立てなかったけど。
1年以上経っても王太子である私に、婚約者がなかなか決まらないのも、私がミヤ様を忘れられずにいるからで─
「本当に、女々しいよなぁ─。」
「そう自覚があるなら、さっさと婚約者を決めて下さい。ベラと私の為にも─」
思わず言葉に出てしまい、それを聞き逃す事無く、イリスにキッチリと釘を刺された。
「いっその事、そのハル殿をお前の婚約者にするか?」
「父上、それだけは止めて下さい!」
冗談でも駄目だ!ハル殿は、パルヴァン三強のお気に入り。その相手として気に入られているのもエディオルだ。それで、ハル殿が私の婚約者なんて事になったら─想像するだけでも恐ろしい!!
「陛下─」
同じ部屋に居た宰相が、軽く父上を窘める。
「─分かっている。ほんの冗談だ。」
「陛下、今のは─それだけは冗談になりません。」
宰相が物分かりの良い、察しの良い、切れ者で良かった─。
“恋に落ちた氷の騎士”
正しくその通りだと思った。エディオルはハル殿を手に入れる為に、外堀を埋めまくっている。本当に、今迄のエディオルからは考えられない程だ。想う相手が側に居ると言う事は、本当に羨ましい限りだ。
そんな事を思っていた─
『それで、ハルは、俺が聖女を召喚した事を知っていたから。召喚できるなら、還れると気付いて…。それで…ハルは─自分で自分の世界に…還ったんだ。』
そう聞いた瞬間、血の気が一気に引いたのが分かった。チラリとエディオルの顔を窺う。そこには、何の感情も表す事の無いエディオルが居た。悲しんでいる事も無く、私達を恨んでいる事も無いような─ただ、そこに居るだけのエディオル。
それは、私の心を抉るのには充分過ぎるものだった。
今回の案が貴族院─老害タヌキから出た時、確かに、2人を犠牲にする事には反対した。
でも─
例え2人の仲が拗れたとしても、どうせ同じ世界、同じ国に居るのだ。後からでもまた元に戻れるのだから、大丈夫だろう。会うのが駄目なら、手紙で想いを伝えれば問題無いだろうし。
今思えば、エディオルに対して妬みがあったのだと思う。
兎に角、それからのエディオルは無感情に淡々としていて、そのままリュウと共に隣国へと旅立った。
「自暴自棄にならないと良いですが─」
と、宰相が難しい顔をしながら囁いた。
結局のところ、ハル殿はまたこの世界に戻って来た。それも─ミヤ様を連れて。ハル殿が戻って来てくれた事は、本当に嬉しかった。これでまた、エディオルの幸せそうに笑う顔が見れるのだと─。
それに、ミヤ様にまた会えた。ミヤ様も、これからこの世界で生きていくと言う。本当に、ハル殿には感謝しか無い──が。
ミヤ様には…更に嫌われてしまったようだ。そりゃそうだ。私はまた、やらかしてしまったのだから。
それでも─
ミヤ様がこの世界に居るのなら、後少しだけ頑張ってみようと思う。今度こそ後悔の無いように、ミヤ様に想いをぶつけてみようと。それで駄目なら、思いっ切りふってもらって、前に進もう。
ーふられる前提ではいかないが!ー
そんな事を思いながら、エディオルの無事なる帰国を祈った。
*****
「──色々と情けない子ね?」
「う゛──っ」
おばあ様無双な会議があった日の夜、母上に呼び出しを喰らった。そして、今回の件について説教を喰らい、私の後悔だらけの気持ちと今の気持ちを素直に口にした。
「自分が何も出来なかった、しなかった事を棚に上げて、エディオルを妬んで─女の子を犠牲にしただなんてねぇ─。情けない以外に何があるのかしら?無いわよね?前に、ベラにも言われなかったかしら?お前は馬鹿なの?学習できない馬鹿なの?馬鹿なのね!?女の子1人守る事もできないお馬鹿は、どうしたら良いのかしらね?」
「母上……」
ー母上からの猛口撃が半端無いー
おそらく、父上も今、おばあ様から猛口撃を喰らっているんだろう。
「それと…。母親としては、ランバルトも好きな女性と結婚して欲しい─と思っているけれど…。後1年。これからの1年で、ミヤ様が駄目なら諦めなさい。そして、候補に残っていた2人の令嬢のどちらかに婚約者を決めてもらいます。これが最後です。良いですね?」
母上は、スッと表情を変え─王妃然りな顔で私に告げた。
「はい。分かりました─。」
「はい、じゃあ、今日のところはこれで終わりね。あぁ、ベラが…部屋で待っています─と言っていたから、今から行ってくれるかしら?」
「……」
と、母上はニッコリと微笑む。
忘れていた…ベラも…かなり怒っていた事を…。そうか、まだ続くのか…。母上も“今日のところは”と言ったと言う事は─そう言う事なんだろう…。
「分かり…ました。行って参ります…。」
そう言うしかなく、私はベラの部屋へと向かった。
*少し余裕があったので、ランバルトの話を入れました。国王の方は、もっと大変だったと思います(笑)*
そう聞いた時、私は
ー羨ましいー
ーエディオルだけ…狡いなぁー
と思ってしまった。
私が想いを寄せていたミヤ様には、元の世界にミヤ様が想いを寄せる相手が居て、何の躊躇いもなく元の世界に還ってしまったのだ。私とミヤ様の間には、何も無かったし、スタート地点にさえ立てなかったけど。
1年以上経っても王太子である私に、婚約者がなかなか決まらないのも、私がミヤ様を忘れられずにいるからで─
「本当に、女々しいよなぁ─。」
「そう自覚があるなら、さっさと婚約者を決めて下さい。ベラと私の為にも─」
思わず言葉に出てしまい、それを聞き逃す事無く、イリスにキッチリと釘を刺された。
「いっその事、そのハル殿をお前の婚約者にするか?」
「父上、それだけは止めて下さい!」
冗談でも駄目だ!ハル殿は、パルヴァン三強のお気に入り。その相手として気に入られているのもエディオルだ。それで、ハル殿が私の婚約者なんて事になったら─想像するだけでも恐ろしい!!
「陛下─」
同じ部屋に居た宰相が、軽く父上を窘める。
「─分かっている。ほんの冗談だ。」
「陛下、今のは─それだけは冗談になりません。」
宰相が物分かりの良い、察しの良い、切れ者で良かった─。
“恋に落ちた氷の騎士”
正しくその通りだと思った。エディオルはハル殿を手に入れる為に、外堀を埋めまくっている。本当に、今迄のエディオルからは考えられない程だ。想う相手が側に居ると言う事は、本当に羨ましい限りだ。
そんな事を思っていた─
『それで、ハルは、俺が聖女を召喚した事を知っていたから。召喚できるなら、還れると気付いて…。それで…ハルは─自分で自分の世界に…還ったんだ。』
そう聞いた瞬間、血の気が一気に引いたのが分かった。チラリとエディオルの顔を窺う。そこには、何の感情も表す事の無いエディオルが居た。悲しんでいる事も無く、私達を恨んでいる事も無いような─ただ、そこに居るだけのエディオル。
それは、私の心を抉るのには充分過ぎるものだった。
今回の案が貴族院─老害タヌキから出た時、確かに、2人を犠牲にする事には反対した。
でも─
例え2人の仲が拗れたとしても、どうせ同じ世界、同じ国に居るのだ。後からでもまた元に戻れるのだから、大丈夫だろう。会うのが駄目なら、手紙で想いを伝えれば問題無いだろうし。
今思えば、エディオルに対して妬みがあったのだと思う。
兎に角、それからのエディオルは無感情に淡々としていて、そのままリュウと共に隣国へと旅立った。
「自暴自棄にならないと良いですが─」
と、宰相が難しい顔をしながら囁いた。
結局のところ、ハル殿はまたこの世界に戻って来た。それも─ミヤ様を連れて。ハル殿が戻って来てくれた事は、本当に嬉しかった。これでまた、エディオルの幸せそうに笑う顔が見れるのだと─。
それに、ミヤ様にまた会えた。ミヤ様も、これからこの世界で生きていくと言う。本当に、ハル殿には感謝しか無い──が。
ミヤ様には…更に嫌われてしまったようだ。そりゃそうだ。私はまた、やらかしてしまったのだから。
それでも─
ミヤ様がこの世界に居るのなら、後少しだけ頑張ってみようと思う。今度こそ後悔の無いように、ミヤ様に想いをぶつけてみようと。それで駄目なら、思いっ切りふってもらって、前に進もう。
ーふられる前提ではいかないが!ー
そんな事を思いながら、エディオルの無事なる帰国を祈った。
*****
「──色々と情けない子ね?」
「う゛──っ」
おばあ様無双な会議があった日の夜、母上に呼び出しを喰らった。そして、今回の件について説教を喰らい、私の後悔だらけの気持ちと今の気持ちを素直に口にした。
「自分が何も出来なかった、しなかった事を棚に上げて、エディオルを妬んで─女の子を犠牲にしただなんてねぇ─。情けない以外に何があるのかしら?無いわよね?前に、ベラにも言われなかったかしら?お前は馬鹿なの?学習できない馬鹿なの?馬鹿なのね!?女の子1人守る事もできないお馬鹿は、どうしたら良いのかしらね?」
「母上……」
ー母上からの猛口撃が半端無いー
おそらく、父上も今、おばあ様から猛口撃を喰らっているんだろう。
「それと…。母親としては、ランバルトも好きな女性と結婚して欲しい─と思っているけれど…。後1年。これからの1年で、ミヤ様が駄目なら諦めなさい。そして、候補に残っていた2人の令嬢のどちらかに婚約者を決めてもらいます。これが最後です。良いですね?」
母上は、スッと表情を変え─王妃然りな顔で私に告げた。
「はい。分かりました─。」
「はい、じゃあ、今日のところはこれで終わりね。あぁ、ベラが…部屋で待っています─と言っていたから、今から行ってくれるかしら?」
「……」
と、母上はニッコリと微笑む。
忘れていた…ベラも…かなり怒っていた事を…。そうか、まだ続くのか…。母上も“今日のところは”と言ったと言う事は─そう言う事なんだろう…。
「分かり…ました。行って参ります…。」
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