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第七章ー隣国ー

束の間の

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こんばんは。ハルです。


はい、来てしまいました─隣国に。


どうやら、エディオル様は王都の外れにある小綺麗な宿に泊まっているようだ。その小綺麗な宿の…中庭らしき所に転移して来た─のだけど。
この宿にエディオル様が居るのは分かったけど…どの部屋かまでは分からないし、分かったところで…一体どうしろと!?

あまりにもネージュが嬉しそうにするし、私も…あ─会いたさに負けて来てしまったけど!“ストーカーヨロシク!”状態じゃない?しかも─夜だし!夜のテンションを侮ってはいけませんね!

何か、もう既に泣きそうです─。

「はぁ─ホントに…馬鹿だよね?うん。やっぱり…帰ろう─」

魔法陣を展開しようとしてようやく気付く

「あれ?ネージュが居ない?」

ーえ?一緒に来たよね?え?ー

と、ちょっと焦っていると

「えっ!?」

後ろから、左手をグイッと引っ張られた。

誰も居ないと思っていた。急に引っ張られて、バランスを崩して倒れそうになった─けど

フワリと懐かしいシトラス系の匂いがしたかと思えば─キュッと優しい力で抱き留められた。

ハッとして顔を上げると

「エディオル…様?」

何故か、少し息を切らしたエディオル様が居た。

「─え?何で??」

「レフ…ネージュ殿が…主が来ていると─。それで…ここに来てみたら、本当にハル殿が居て。我慢できなかった─触れて…しまった。」

そう言いながら、ほんの少し力を入れて、更に抱き寄せられた。

ーちょっと待って!無事に会えて嬉しいのは嬉しいんだけど…ちょっと…いや、なかり近過ぎませんか!?ー

「ははっ─近過ぎるかもな?でも─やっぱりまだまだ俺には足りないみたいだな─」

「─なっ……」

ボンッと、また顔が赤くなったのが分かった。

「む…無理です!もう少し手加減して下さい!」

エディオル様の胸に手を当てて、距離をとろうとグッと力を入れると

「俺も無理だから。」

「え?“俺も無理”って…何が??」

恥ずかしいのを我慢しながら、エディオル様の顔を窺い見ると

「手加減する事が無理─って事。」

と、エディオル様が私の頬をスルリと撫でた。









「夜も遅いし、人目もあるから─」

と、エディオル様が泊まっている部屋へと…誘導されてしまった─けど…これ、大丈夫なんですか?と言うか、ネージュは何処に行ったの!?え?また裏切られたの!?

「ハル殿、落ち着いて?手加減しないと言っても、何も取って食うって訳じゃないから─」

エディオル様は笑いながら、椅子に座っている私にお茶を淹れて、手渡してくれて─そのまま私の横に腰をおろした。

ーえ?向かい側にも椅子がありますよ?何故、隣に?ー

「手加減は無理って言っただろう?ハル殿は、相変わらず…顔に出て…可愛いな?」

「─かわっ!?」

ーえ!?ちょっと待って?コレ…誰ですか!?ー

ハクハクと、言葉が言葉にならなくて、口が金魚状態だ。

「─それで…どうしてここに?」

とエディオル様に訊かれて、慌てていた思考もハッと我に返った。

「あ、あの─“待ってます”なんて言っておいて、来てしまってごめんなさい。」

まずは、来てしまった事を素直に謝る。

「その─、エディオル様は大丈夫かな?元気かな?って思ったら…あの…来ちゃってました─」

ー“会いたくて”って…恥ずかしくて言えない!ー

恥ずかしくなって、目をギュッと瞑って自分の頬を軽くペチペチと叩く。

「─っとに…可愛いしかないだろ─?」

エディオル様が、何やらボソッと囁いた。

「?何か言いましたか?」

両頬を手で押さえながら、エディオル様を見上げる。

「くっ─。何でも…無い。」

「??」

エディオル様は、目を瞑って何度か深呼吸?した後、私の方を見て

「──謝らなくていい。俺は、ハル殿に会いたかったから、会えて嬉しい。」

そこに、優しい笑顔のエディオル様が居た。









「ポーション?」

「はい。私、これでもそこそこ優秀な薬師なんですよ?この国でどうなるか分からないので、せめて─ポーションだけでもと思って、いくつか持って来ました。」

会いに来た口実の一つとして、回復のポーションを何本か持って来たのだ。

「何事も無ければ良いんですけど。良かったら貰ってください。」

「ありがたく、頂戴するよ。」

よし。それと、もう一つ─

「それと、私、更にですね?結構優秀な魔法使いなんです。コレも…貰ってくれますか?」

と、ピアスを見せる。青い─エディオル様の瞳の色の魔石が付いているピアスだ。

「この魔石を見た時、“エディオル様の瞳の色と同じだなぁ”って思ったんです。それで、今までのお礼を兼ねてピアスにしてみました。えっと─防御の魔法を掛けています。」

エディオル様は、そのピアスを手に取り暫く見た後

「今、ハル殿が着けているピアスにも同じ魔法が?」

「はい。これにも掛けてます。」

私が着けているピアスには、私の瞳と同じ色の魔石を填めてある。すると、エディオル様が、私が着けているピアスにソッと触れながら

「俺は…このピアス─この色の魔石のピアスが欲しいな。」

「─え?」

「それで、こっちの青い魔石のピアスは…ハル殿に着けてもらいたい。」

「───え??」

「駄目…だろうか?」

と、私の耳に手をあてたまま、結構な至近距離でコテンと首を傾げて、私を窺い見て来るエディオル様の破壊力が─半端無い──。

「だ────駄目!じゃ─ないです!!」

ハッ─駄目だよね!?お互いの瞳の色を─って

「ありがとう─」

「う゛っ──」

そのまま目の前で微笑まれたら…“やっぱり駄目です!”とは言えなかった。


勿論、私の着けていたピアスは、(私が着けていたから)しっかりとクリーン魔法を掛けてから渡しました。

ー私…チョロくない?ー





それから、少しだけ話をした。






「えっと─そろそろ帰りますね。遅い時間に…すみませんでした。」

「あぁ─。」

「あの─今度こそ、ウォーランド王国で待ってます。それで…私の話を…聞いて下さいね?いっぱい、聞いて欲しい事があるんです。」

「分かった。俺も、聞いて欲しい話がある。絶対に、ハル殿の所に帰るから。それと─できたら、は外さないでくれ。」

と、私の耳に着けているピアス撫でる。

「─っ!!あの、いちいち触らなくても─大丈夫です!分かりましたから!!」

恥ずかしくて、自分の手を耳に当てて隠そうとした手をとられて─

エディオル様は、そのまま私の掌にキスをした─

「ハル殿。俺がウォーランド王国に帰ったら─覚悟しておいて。もう、手加減しないから─。」






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