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第七章ー隣国ー
暫しのお別れ
しおりを挟む「あんたも─チートだったんだな…。」
その一言に全てが詰まってました。
確かに、穢れは酷かった。酷かったけど、ミヤさんがさらに凄かった!さっきの浄化は肩慣らしだったの?と言わんばかりの浄化の威力だった。
金色の光が一段と、眩しい程の輝きだった。一振する毎に穢れが祓われ、チョロチョロいた弱い魔獣はその穢れと共にどんどん霧散していった。ミヤさんの聖女の力は圧倒的だった─。
ー聖女の浄化で魔獣退治…最強では?ー
“ちょっとひく”と言う気持ちが…少し分かったハルです。
ミヤさんの、ミヤさんだけによる浄化(魔獣退治)が終わり、ホッとした時─
「ワームか…」
一際大きな魔物?魔獣?が現れた──のに、何故か…やっぱりティモスさんは何となく嬉しそうだ。
「俺だって、ここまで来たからには─いや、鈍った体を動かしたい!ハル、俺が頼む迄は手出し不要だからな!」
と言って、ティモスさんはワームとやらに向かって行った。
「ティモス殿も…脳筋だったのか?」
と、呆れた顔をしたエディオル様とジンさんがその後を追って行った。
『ふむ。我は、ここで様子をみるか─。』
と、ネージュは私の横でちょこんとお座りをしている。
「いざとなったら援護すれば良いけど…何だろう…色々規格外過ぎて嗤えるな─。」
と、私の後ろ─ミヤさんと並んで立っているリュウが苦笑する。
「規格外なのは認めるけど…あなたは、ゲームに囚われ過ぎたのよ。」
「……」
「この世界が強制力とかで、ゲーム通りにしかならないのなら、私達3人の聖女が皆ハイスペになんてならなかっただろうし、ハルも巻き込まれてなんかいなかったと思うわよ?そもそも、個人の意思何てモノも必要じゃなくなるわよね?でも、この世界の人達は、1人1人意思を持って生きてる。ゲームなんかじゃない。一番の間違いは─あのクズ聖女だった子だろうけどね。あなたには、きちんと責任をとってもらうわよ?」
「分かってるよ。でも─ありがとう。穢れを浄化してくれて…本当にありがとう─。」
「…あなたの為にした訳じゃないからね?何の関係も無いこの国に生きている一般の人達や、隣国のウォーランド王国を守る為だからね。それと、今の私が手を出すのはここまで。後は─この国の王次第だから。」
「あぁ…それは勿論分かっている。それに、宮下香は、俺が責任をもって日本に返すから。アレは…ここでは毒にしか…ならないから─。」
ー“毒”正しくそうだなー
努力すれば、ここで幸せになれたかもしれないのに。それでも、こうなったのは、彼女が自分自身で選択した結果だ。
「彼女─宮下香は…こっちの世界で、彼女の時間は進んでいたの?」
「あぁ、進んでいる。だから、日本に返した時はその分時間も進んでいる筈だ。半年…位か?」
半年か─私と違って、義理の親姉妹が居るんだよね?騒動になってないのかなぁ?
「ふふっ─きっと…彼女には…大変な事が待ってるわよ?」
「大変な事?」
「ミヤさん…ひょっとして─」
私が日本で愚痴った後、宮下香を探ったの?
「ふふっ─。」
探ったんだ─。そして、何かあったんだ。ミヤさんの笑顔が眩し過ぎる─。宮下香は、一体日本で何をしたの!?
「え?何?俺にも分かるように─いえ、何でも無いです。」
リュウも、ミヤさんの笑顔を見て理解したようです。
ーこれ以上聞いてはいけないー
と─。
結果、最終的には
「ハル、あまり時間もないから、あの魔物を拘束してくれる?」
とミヤさんに言われて、薔薇の蔦で拘束。そこをエディオル様がキッチリ仕留めた。
ティモスさんには、ジトリとした目で見られたけど。
「聖女様、ありがとうございました。」
ジンさんはミヤさんに頭を下げながらお礼を言った。
「後一ヶ所残ってるけど、私達はウォーランド王国に戻るわ。この国の王次第で私も動くつもりだけど、今の王に私が手を差し伸べる事は─無いから。この意味…分かってもらえるわよね?」
「─分かっています。私も、もう知らないフリや見ないフリも出来ませんから。彼らには─必ず償ってもらいますよ。」
どうやら、ジンさんは決心したようだ。
「なら良かった。その為なら─私の存在を使ってもらっても良いわよ?」
と、フワリとミヤさんが微笑むと「それは─助かります。」と、ジンさんもフワリと微笑んだ。
「俺は、このままここに残ろうと思う。」
私達は、今のこの国の状況を説明する為に、一度ウォーランド王国に帰る事にしたのだけど、エディオル様は、このままこの国に留まる事にしたようだ。おそらく、これから起こる事等を、ウォーランド王国に報告する為だろう。
エディオル様は、律儀にも私には近寄る事無く、距離を保ったままで私に視線だけを向けている。
ーまた暫くは…離れ離れかー
そう思うと、胸がキュッと痛くなって─「ミヤさん、ごめんなさい!」と、心の中でミヤさんに謝りながら、私からエディオル様に近付いた。
お互い、手が届きそうで届かない距離だ。
「あの─私…待っていても良いですか?あの─エディオル様と色々話したい事があって─だから、待っていて良いですか?」
何とか頑張って尋ねると、「─っ…参ったな…」と呟きながら左手で口元を覆った。
「?」
と、首を傾げてエディオル様の反応を待つ。
「ハル殿ありがとう。俺も…聞いて欲しい話がある。それに─ハル殿が俺を待っていてくれるのは…とても嬉しい─。必ず、ハル殿の元に帰るから…待っていて欲しい。」
久し振りに見た、エディオル様の優しい笑顔に泣きそうになった。でも、ここでは泣かない─と、グッと体に力を入れて耐えた。
そして、そのまま踵を返し、ミヤさん達の居る所に戻ると、ウォーランド王国に帰る為に魔法陣を展開させた。
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